初の主催イベント「KSD CONNECT 2025」でビジネス活用の可能性を提示

 2025年5月29日、東京都千代田区にて、KDDIスマートドローンが初めて主催するビジネスイベント「KSD CONNECT 2025」が開催された。本イベントは、ドローン技術の発展と社会実装を加速させることを目的とし、KDDIスマートドローンと連携する官公庁、航空会社、保険会社、教育機関などが一堂に会し、最新の技術動向や活用事例、今後の展望について議論が交わされた。

写真:壇上に立つ博野代表
ドローンポート「Skydio Dock for X10」の提供開始を発表する博野代表。

 イベントの前半では、KDDIスマートドローンの博野雅文代表がキーノートセッションに登壇。同社がこの日から注文受付を開始した新製品「Skydio Dock for X10」について紹介し、全国展開によってドローンの社会実装を加速させる考えを明らかにした。その後、同社の事業方針やドローン業界の動向、今後の展開について報道陣からの質問に応じた。以下はその質疑応答の内容である。

写真:「Skydio Dock for X10」
発表された「Skydio Dock for X10」。自動充電を備えたドローンの格納システムであり、運航するエリアに常設して使用する。これにより、24時間365日のリモート運用が可能になる。

ドローンポートの展開と「Skydio Dock for X10」の優位性

写真:話をする博野氏。
KDDIスマートドローン株式会社 代表取締役社長 博野 雅文氏。

──KDDIとローソンは提携を締結していますが、今回発表されたSkydio Dock for X10の普及先はローソン中心となるのでしょうか?

博野代表:ローソンは全国に1万4000以上の店舗があり、提携関係は大きな強みです。ただ、自治体のニーズを伺うと、警察署や消防署、学校など公共施設への設置が非常に有望だと感じています。今後は自治体と連携しながら展開を進めていきたいと考えています。

──自治体に設置する場合、ドローンポートの所有権はどうなるのでしょうか?

博野代表:所有権については今後の検討課題ですが、一つの案として、KDDIグループが設置し、同グループがサービスとして運用する形も考えられます。

──設置にあたっての課題はありますか?

博野代表:確かにドローンポートは災害時など有事に活用できますが、維持費の負担を自治体単独で担うのは難しいと考えています。そのため、通常時には電力施設などのインフラや建設現場の点検などに活用し、シェアリングモデルの構築を検討しています。これはまだ実施例はありませんが、通信やドローンに関する技術的要素は整いつつあり、実現可能と考えています。

──ドローンポートに関しては、DJIをはじめとする主要メーカーも展開しているが、Skydio Dock for X10の強みやそれらとの差別化はどのように考えていますか?

博野代表:カメラ性能についてはDJIとSkydioはほぼ同等と考えていますが、Skydioはビジョンセンサーに優れています。GPU性能の向上により、飛行エリアの周囲環境を正確に認識して自律飛行が可能で、トンネルや橋梁の下など非GPS環境下でも正確に飛行できる点が大きな特徴です。また、安全保障の観点からも、クラウド経由で運航データを扱うドローンにおいて、米国製であるSkydioは信頼性の面で優位性があると考えています。

──ドローンポートはどのような場所から展開していく予定でしょうか?

博野代表:災害対応を重要な用途と捉えており、南海トラフ地震の発生が懸念される地域などに優先的に導入したいと考えています。ドローンを配置することで、自治体の迅速な状況判断を支援できると期待しています。

──ドローンのユースケースとして注目しているものはありますか?

博野代表:点検、監視、測量、災害対応、物流などが主なドローンの用途です。物流における「ラストワンマイル」は、まだ時間がかかると見ていますが、点検や監視、災害対応は、少子高齢化による人材不足の背景もあり、ニーズが高まっていると感じています。

 また、専門的な使い方として、工場内のアナログ計器の確認にドローンを活用する取り組みがあります。これまで人が現場に赴き数値を読み取っていた作業を、ドローンが巡回して撮影・デジタル化することで効率化できます。アナログ計器の更新には10年以上かかることもあるため、こうした技術を工場に提案していきたいと考えています。

──都市部でのドローン配送の実現についてどのように見ていますか?

博野代表:米国では1日400機の物流用ドローンが稼働する事例もありますが、そこまでの規模になればビジネスとして成立する可能性があります。ただ、現状のドローン技術では、安全性や精度が完全に担保されているとは言えませんので、法規制の整備とともに時間を要すると見ています。一方で、コロナ禍で「置き配」が普及したことからも分かるように、市場としてのニーズは確実にあると考えています。

──首都圏のような人口密集地でのドローンの需要はどのように捉えていますか?

博野代表:見守りや監視、警備といった用途では、人口の多さに比例して需要が高まります。ただ、まずはドローンを飛ばしやすく、人口の少ない環境から段階的にアプローチしていきたいと思っています。

──ドローンが普及していく中で、パイロットやオペレーターの不足は懸念されますか?

博野代表:技術の進化により、一人のオペレーターが複数の機体を操作する「一対多数運航」が可能になりつつあり、技術開発が行われています。これにより、コスト面だけでなく人材不足の課題も解決できると考えています。


 ドローン技術の社会実装に向けて、KDDIスマートドローンは現場視点と技術革新の両面から着実に布石を打ちつつある。今後、自治体や企業との連携がどのように深化し、ユースケースが広がっていくのか注目される。

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