東日本計算センターは、2025年2月19日から21日まで東京ビッグサイトで開催された「第23回 SMART ENERGY WEEK(WIND EXPO ~風力発電展~)」に出展。同社は、被写体に対してドローンを自律的に高精度で到達させる自動誘導技術「S・M・A・R・T」(System for Multivisual Adaptive Ranging Tracking)を展示し、風力発電ブレードなどの点検作業の正確性・効率性向上を提案した。

AI画像解析でドローンを自動誘導!GPS不要の高精度技術

 東日本計算センターは、1965年の設立以来、ICTソリューションプロバイダーとしてシステムエンジニアリングやロボット/ドローン制御技術の研究開発を行っている。福島第一原子力発電所の廃炉向けロボット開発や月面探査車の制御技術など、多岐にわたるプロジェクトに携わってきた。

写真:展示されたドローン
Freefly Systems社の「Alta X」に搭載された「S・M・A・R・T」。

 今回展示された「S・M・A・R・T」は、三つのカメラを活用して対象物をリアルタイム認識し、距離や位置を正確に計算しながら自動誘導を行う技術。非GPS環境下においても精密な位置調整が可能で、GPSを受信しにくい場所での点検業務などで役立てたい考えだ。また、風力発電設備のブレード点検では、点検箇所が高所なため人による操縦では高度な技量が必要となる。そこでこの技術を用いれば、高所であっても自律的に点検箇所まで飛行可能で安全かつ正確に業務を遂行することができる。同社はこの技術の特許を取得している。担当者は「カメラベースの誘導技術により、GPSが使えない環境でも高精度な飛行を実現できます」と説明した。

写真:機体上部に取り付けられた「S・M・A・R・T」。上に伸びる3本の棒状のパーツにカメラを備えている
機体上部に設けられた3個のカメラから位置を推定する。

風力発電ブレード点検の効率化と安全性向上を実現

写真:タブレットとモニターの画面
タブレット上でブレードの点検箇所を指定すると、自律的に点検箇所までドローンが移動する。

「S・M・A・R・T」は風力発電ブレード点検にとどまらず、高所や狭小空間での作業にも応用が可能。従来はロープやクレーンを使って人が行っていた作業をドローンが代替することで、安全性の向上と作業コストの削減が期待される。また、操作は直観的に使い方が分かるようにGUI(Graphical User Interface)アプリケーションで構成されており、タブレットから指示を行う。高度なドローン技術を習得する必要がなく、誰でも簡単に運用できる点も大きな特徴だ。

実証試験を進め、実用化へ向けた開発を加速

「S・M・A・R・T」の開発は2020年頃からスタートし、初期試験では「DJI Matrice 600」に搭載していた。その後、米国のFreefly Systems社が耐風性の高い大型産業用ドローン「Alta X」を発表したことから同機を採用している。担当者は「強風下でも安定して飛行できる高ペイロード機体を選定しました」と語る。

 現在、同技術の実証試験を進めており、風車のブレード点検やインフラ点検などへの適用を検討中。製品化に向けてさらなる試験を重ね、実用的なシステムへと仕上げていく予定だ。現状の課題の一つは通信の安定性で、現在は有線通信を用いてデータ伝送を行っているが、無線化が実現すれば、より多様な環境での運用が可能になる。担当者は「無線通信の安定性を向上させ、幅広い用途に対応できるよう改良を進めています」と今後の展望を述べた。

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