水素発電機でドローンの長時間飛行を実現!
トヨタ自動車のグループ企業で車両部品などを製造するアイシンと、ドローンやソリューションの開発を行うAutonomyは、2025年7月23日から25日にかけて東京ビッグサイトで開催された「メンテナンス・レジリエンス TOKYO 2025(国際ドローン展)」に共同出展した。
展示されたのは、Autonomy製の有線給電型ドローン「Surveyor-Ⅲ」と、アイシンが開発した可搬型燃料電池(FC)発電機を組み合わせることで実現可能な長時間滞空ドローンシステムだ。
このシステムでは、水素を燃料とするFC発電機からドローンに有線で電力を供給し、長時間の連続飛行を可能にする。ドローンはバッテリー駆動がほとんどであり、その飛行時間は数十分程度となっている。そこで、FC発電機とドローンを常時有線接続することで飛行時間を大幅に延ばすことができるようになる。災害時の被災地上空からの長時間監視やドローンに携帯電話基地局の機器を搭載し、一時的にネットワークを構築するなど、長時間にわたって定点でドローンを活用することが可能だ。
水素活用の実績と協業の経緯
アイシンはこれまで、トヨタの燃料電池車(FCEV)「MIRAI」や家庭用燃料電池「エネファーム」などを開発してきた実績を持つ。この技術を応用し、2023年から水素発電が可能な可搬型FC発電機の開発に着手し、2025年2月に製品化を発表した。
発電機は水素タンクから供給される水素を燃料に発電を行い、発電過程で二酸化炭素や排気ガスを排出しない。また、ガソリン式エンジン発電機のような騒音もほとんど発生しないため、環境負荷や周辺への影響が少ないのが特長だ。実際に室内で使用した事例もあり、屋外でしか使用できなかったガソリン式に対して利便性が非常に高い。
当初、可搬型FC発電機は土木・建設現場や屋内イベント、レジャーなどでの利用を想定していた。しかし、2024年の国際ドローン展でアイシンの開発担当者がAutonomyの有線給電型ドローンSurveyor-Ⅲを目にし、ドローンの長時間飛行にも活用できると着想。そこからAutonomyへの協業提案が行われ、今回の共同展示につながった。
展示された発電機の寸法は幅497mm、長さ657mm、高さ512mm、重量37kg。550gの水素タンク1本でSurveyor-Ⅲを約9時間連続稼働させることが可能で、すでに実証実験で性能も確認されている。
主に災害時での活用を視野に入れており、自治体などに導入していくことを目指している。水素は水素ステーションの整備が行き届いておらず、ガソリンに比べて入手が困難だ。そのため、自治体には常時複数の水素タンクを保管してもらい、災害時に役立ててもらいたいという。
アイシンの担当者は、「災害時では、避難所の近くで騒音や臭いを発する発電機は被災者のストレス要因になることがあります。FC発電機であればその心配がなく、ドローンの活動範囲も広がるはずです」と語った。
今回の展示は、水素エネルギーとドローン技術の融合によって、防災や社会インフラ分野における新たな活用可能性を示すものとなった。
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