プラントや発電設備といった産業インフラの非破壊検査を手がけるウィズソルは、垂直面の超音波板厚測定が可能な、肉厚測定用ドローン「UTMドローン」を展示。超音波探触子を対象物に押し当てるようにして飛行するドローンだ。
高所の板厚測定や超音波探傷試験が行えるドローンを開発
ウィズソルは全国の石油・化学プラントや発電所、石油貯蔵施設、橋梁や船舶を対象に、超音波探傷試験(UT)や磁気探傷試験(MT)、放射線透過試験(RT)、浸透探傷試験(PT)など、さまざまな検査を行っている。今回の展示会のブースでは、同社が独自に開発したタンク底板連続板厚測定装置「UDT-48W」のほか、目視試験(VT)に用いるマイクロドローンと、超音波探傷試験が行えるUTMドローンを展示していた。
同社では早くからインフラ・設備の点検に、小型ドローンやマイクロドローンを採用。ドローンレースに参加しているオペレーターと提携して、工場の煙突やタンクの内部の目視点検を行っている。さらに2年程前から、ドローンに超音波探傷試験に使う探触子(プローブ)を搭載して、高所の点検ができるドローンの開発に取り組んでいる。今回のブースにはその成果である「UTMドローン」を展示していた。
UTMドローンは5インチのレーシングドローンを2機、上下逆さまに合わせたような、8ローターのドローンで、機体の上部に超音波探触子と、超音波探傷器を搭載。また、機体前方には約30cm四方の四角いフレームが取り付けられていて、その四隅に付いた“脚”を対象物に押し当てるようにして、機体を上下させながら飛行し、データを取得するとういものだ。
UTMドローンで取得したデータは無線で受信ユニットに転送され、同社製の超音波肉厚測定解析ソフトで解析される。このデータの無線伝送システムは、同ブースに出展したタンク底板連続板厚測定装置で開発した技術が生かされているという。また、UTMドローンにはFPVカメラが探触子直上に取り付けられており、検査したい場所を正確に捉えながら飛行することができる。
非破壊検査はJIS(日本産業規格)が定める非破壊試験技術者の資格・認証が必要とされており、「非破壊検査の有資格者がいる検査会社が自らドローンを使って検査し、その場で検査することができる」(説明員)のが大きなメリットだという。また、従来の超音波探傷検査では、高所で実施する場合、足場を設置する必要があったが、ドローンを使うことでこうしたコストを削減できるのもメリットとして挙げる。
ただし、プラントにおけるさまざまな検査は、消防法をはじめとしたさまざまな規制により、ドローンが適用できない場所もまだまだ多く、本機を使った検査はまだ10例に満たないという。今後は「こうしたドローンによる検査の有効性を広めていきたい」(説明員)としている。