2023年6月26日、ブルーイノベーションは、日本発の「物流用ドローンポートシステムの設備要件に関する国際標準規格ISO5491」(以下、ISO5491)が定めるドローンポートシステムの設備要件に準拠したドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」を開発したことを発表した。物流・点検事業者、UTMサービスプロバイダー、ドローンポートおよびドローン機体メーカーなどに向けて、同システムのβ版によるPoCサービスの提供を8月1日より開始する。

 ISO5491は、2019年のISO/TC20/SC16南京総会において日本が提案して採択され、2023年6月2日に正式発行された。150kg以下のVTOL電動貨物UAS(垂直離着陸式の無人航空機システム)を扱うVertiport(ドローンポート)が自動離着陸オペレーションを実現するために必要なインフラストラクチャと機器の要件を規定している。

 2022年12月の改正航空法施行に伴いレベル4(無人航空機の有人地帯での目視外飛行)が解禁され、全自動・目視外でのドローン運航実現に向けて、さまざまなドローンポートやドローン機体、周辺機器・サービスの開発が進んでいる。

 一方、これらの開発や機能実装などが個別最適化で進んだ場合、特定のサービスやドローン機体でしかドローンポートが運用できなくなる恐れがある。ドローンの社会実装のためにはハードのメーカーや種別を問わないシステムの拡張性と、サービス内容に合わせた運用の柔軟性が必要となる。

 同システムを活用することで、国内外において個社別に進められていたドローン物流などにおけるドローンポートおよび関連システムの開発や運用実証、事業化検討などが国際標準規格下で行われるようになり、公共性の高い社会インフラとして期待されるレベル4での異機種・複数機のドローンを活用した目視外・全自動ドローン運航管理システム開発の加速が期待される。

ドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」

 ドローンポートシステムは、ISO5491においてドローンポート、気象センサーや侵入検知センサーなどの周辺機器、それらの情報を統合管理するドローンポート情報管理システム(VIS:Vertiport Information System)を包含するものと定義されている。ドローンの格納および離着陸場として、離着陸時の安全確保や雨風・気温などの周辺状況の把握、ドローンへの充電、荷物の受け渡しなどを行うとともに、それらの情報をリアルタイムに各連携システム・デバイスと共有し、運航管理者や利用者をはじめとした各種ステークホルダーに提供する。

 ブルーイノベーションは、同社独自のデバイス統合プラットフォーム「Blue Earth Platform」(以下、BEP)をベースに、ドローンポートやドローン、各種センサーなどの周辺機器のメーカー、機種を問わず接続、遠隔で統合管理・運用するドローンポート情報管理システムBEPポート|VISを開発した。

 同システムはISO5491に準拠した機能を実装しており、ドローンポートの稼働状況や各種センサーによるドローンポート周辺の安全確認などの各種情報を一元的かつリアルタイムに集約・管理し、他システムとも共有・連結することで、一連かつ複数のドローン運用オペレーションを安全に遂行させる。

ドローン運用における「BEPポート|VIS」の機能と役割

「BEPポート|VIS」の機能を活用したドローンポート社会実装・開発事例

【仙台市災害時広報ドローンポートシステム】

 2022年10月より仙台市が本格運用を開始した「津波避難広報ドローンシステム」。東日本大震災に係る復興の経験と教訓から開発・導入したもので、Jアラート(全国瞬時警報システム)と連動してドローンを自動運航し、津波避難広報を実施する。

 ブルーイノベーションは、周辺状況や複数のドローンならびにドローン格納庫の稼働状況を、一元的かつリアルタイムに集約・管理し、自動で離陸命令を発信するVISを担当した。

【次世代モビリティ連携を視野に入れたドローンポート&管理システム】

 トヨタ自動車が開発しているモビリティ連携システムに対し、ブルーイノベーションが開発をサポート。ドローンポートによる荷役作業等を自動化し、ドローンや外部システムと連携して運行を管理。ドローン運用における付帯作業の省人化に寄与する。ユースケースに応じて機能を選択することで、さまざまな用途に適応する。

ドローンポート&情報管理システム(ブルーイノベーション)

【災害用ドローンポートシステム】

 ブルーイノベーションが開発を進めている「災害用ドローンポートシステム」は、災害時情報の発信と関係各所間での共有、それに基づくドローンによる物資輸送の運航を一元運用・管理する。災害時、道路遮断などの影響を受けないドローン輸送が必要最小限の体制・人員で実施できるようになり、救援物資輸送の迅速化と作業負担の軽減を可能とする。

大分日田市 ドローンポート実験(BEP画面)(ブルーイノベーション)