リベラウェアは、屋内設備点検用小型ドローン「IBIS」の展示、デモフライトを行った。

屋内の「狭い・暗い・汚い」過酷な現場環境のために技術を自社開発

 IBISは屋内・狭小空間の点検を目的に開発され、非GPS環境下での活用に特化したドローンだ。これまでに煙突内や配管内、ボイラー内、天井裏、地下ピット、橋梁箱桁内などの点検業務に活用されている。業種としては、製鉄会社、電力会社、石油化学コンビナート、建設業といった企業からのニーズが多く、現在200件以上の点検実績を重ねてきたという。

 昨年には、セントラル警備保障と設備点検・監視巡回サービスで協業したほか、JR東日本スタートアップおよびJR東日本コンサルタンツと点群データ等の取得と鉄道・インフラ業界のデジタル化に関する合弁会社「CalTa株式会社」を設立するなど、今後もさまざまな業種・用途での活用が期待されている。

IBISは191×179×54mm(プロペラガード込み)、185g(バッテリー込み)。飛行時間は最大8分。最小侵入口径はφ500mm。-5度~60度まで飛行可能。LED照明には広配光LEDを搭載。フレーム形状からフライトコントローラー、モーター、プロペラ、バッテリーまで自社で開発。
展示ブースではデモフライトも行われた。
月1回以上操縦講習会を実施しており、新規パイロットの育成が必要な場合でも安心だ。
デモフライトの様子。壁にぶつかっても姿勢を崩さない。フライトコントローラーとプロペラも自社で開発した。

 IBISは191×179×54mm(プロペラガード込み)、185gと軽量小型で飛行時間は約8分程度。産業用ドローンのなかでも最小クラスとなっている。特徴的なのは、フレーム形状からフライトコントローラー、モーター、プロペラ、バッテリーまで自社で開発していること。これは実際の現場でトライ&エラーを重ねた結果だという。たとえば、製鉄会社の現場で飛ばすと、モーターの中に鉄粉が入ってしまいコイルが焼けてしまう。それを改善するために日本電産と共同で防塵モーターを開発したという。それに加え、暗所に対応したカメラ、狭小空間を安定して飛行するためのフライトコントローラーやプロペラを開発した。これについて担当者は「実際の現場でトライ&エラーを重ねていき、ちょうどいいサイズ感で、いかに最大値を出せるかということにこだわったのがIBIS。約8分のフライト時間だがそれだけあれば、ほとんどの現場ですべての撮影が可能。たとえば150mぐらいの煙突内部の撮影も8分で終えることができる」と話し、デモフライトでも狭小空間を安定して飛行しており、ちょっとした衝突なら姿勢を崩すことなく飛行する姿を見せた。

動画データから3D化、点群化、オルソ化 不具合の検知と共有を容易に

IBISのカメラ(自社開発)で撮影した映像を、左側の大型モニターにリアルタイムで映し出していたが、ノイズの少ない鮮明な映像だった。カメラは、Full HD(1920×1080pix)・60fpsの動画を撮影できる。レンズの画角は広角タイプ(水平130°・垂直80°・対角144°)。

 煙突やボイラー内、天井裏などの狭小空間は暗所が多く、可視光カメラによる撮影が難しい。そこで、IBISには広配光のLED照明が採用された。搭載する自社製カメラは高感度なCMOSイメージセンサー「STARVIS」を採用し、暗所であってもノイズの少ない鮮明な映像を撮影することができる。また、操縦者用モニターには相対方位を表示する機能があり、映像を3D化するために必要なオーバーラップ率を維持する撮影を補助している。

IBISの動画データを3D化した映像。

 たとえば、煙突内部の点検のために撮影した場合、1基につき10本程度の動画データを納品するという。点検従事者による現場点検に比べれば、動画による点検確認だけでも作業効率は十分に改善されるが、異常箇所の位置特定などに時間がかかってしまう。そこで、IBISで撮影した動画データを解析・編集し、3D化、点群化、オルソ画像化するサービスの提供に注力している。
 映像解析・編集により、データにスケール情報を加えることができるので、空間計測も可能になる。これら映像の保管や、映像解析・編集したデータの受け渡しについては、独自に開発したクラウドサービス「LAPIS for Drones」を使い、大容量のデータも円滑にやり取りすることが可能だ。担当者は「点検内部をデータ処理・編集することは、異常箇所を明確化し、より詳細なデータ取得につながる。また、データを蓄積することで経年変化を数値的に比較でき、点検業務の生産性向上に貢献できると考えている」という。
 映像の解析・編集に加え、AIを活用して異常箇所を自動検出するシステムの構築も行う。たとえば、クラックや曲がり、サビなどの映像をコンピューターに学習させることで、AIが異常と判断した箇所を自動的にアラート(アノテーション)することが可能となる。

 同社ではIBISの導入について、用途にあわせて2つのプランを用意。1つ目は「IBIS点検サービスプラン」で、同社公認のドローンパイロットが現場へ赴き、IBISを飛行・撮影を行うプラン。動画の納品が基本となるが、要望に応じて3Dモデルの生成や報告書作成まで実施する。2つ目が「IBIS年間レンタルプラン」で、2機のIBISと必要備品一式を年間でレンタルするサービスだ。これは、無制限でIBISの修理・交換に対応するうえ、講習会受け放題、画像処理し放題の3つの無制限サービスが受けられる。さらには、新モデルリリース時に旧モデルから新モデルへ無償で交換される。

ガス検知機能を備えたIBIS(プロトタイプ)を開発中だ。上部にガス検知センサーを搭載し、有毒ガスが発生・滞留する可能性のある場所に人が近づくことなく、短時間で手軽に安全な環境であるかどうかを確かめることができる。

 同社は独自開発の技術を有しており、企業ごとの課題に応じたカスタマイズにも柔軟に対応できることが強み。現在、設備点検の用途以外にも、そもそも人が安全に進入できる環境かどうかを確かめたいというニーズに向けて、一酸化炭素(CO)や硫化水素(H2S)等といったガス検知機能を有したIBISを開発中だ。今年の7月以降に実証実験を行うという。また、気になるIBISの新モデルだが、世界的な半導体不足により開発が遅れているとのことなので、登場は少し先になりそうだ。