空飛ぶクルマは操縦者無しで目的地に移動する「人乗りドローン」なのか?

出典:経済産業省「さあ、空を走ろう。- Let's drive in the sky. -」より(https://www.youtube.com/watch?v=7-G_C4DTWXQ

 ドローンのレベル4飛行は、第三者の上空を飛ぶことが前提であり、“落ちにくい”機体でなければならないため、耐空証明と同じ考え方に基づいた安全性の確認が義務付けられるとされています(第一種安全認証)。また、操縦者は一等操縦ライセンスが必要です。
 機体認証は航空機に比べて簡素化されるため、区分けするために安全認証という言葉を使っています。なお、欧米でも第三者上空飛行や目視外飛行の機体に関しては、安全性を個別に審査しますが、操縦資格は議論が始まったばかりです。安全性は航空機同様に耐空証明(Airworthiness)という言葉が使われています。

 ドローンの量産機では、安全証明を省略する手段として航空機同様に設計、製造などを確認する型式証明があります。第一種安全認証の有効期限は1年です。MRO相当の定期検査も義務付けられます。ただし、ドローンは航空機とは異なり、安全認証は原産国でなくても受審できます。日本のUAMは当面、国境を越える飛行が考えられないため、日本の航空管制空域内での飛行が前提となります。

 操縦方法は航空法で規定されており、地形や地上の目標物などを頼りに目視で操縦する有視界飛行・VFR(Visual Flight Rules)、もしくは管制官の指示で機上の高度計や速度計をもとに飛行する計器飛行・IFR(Instrumental Flight Rules)での飛行が考えられます。いずれも計器や地上、前方などを確認する「目視」ベースであり、これはシカゴ条約でも定められています。

 一方、操縦者が乗らずにドローンのように遠隔からの制御が認められており(航空法87条)、個別許可を得れば飛行可能となります。過去にJAXAが飛行船を開発した例では、VFRやIFRと同等またはそれ以上の安全性担保が必要とされ、世界的にも未だ標準化はされていません。

 ICAOでは遠隔操縦航空機・RPAS(Remotely Piloted Aircraft System)といわれ、2015年にマニュアルを初めて発行し、検討が進められています。しかし、自動飛行技術のほか、安全確認や管制方法といった課題が多いことも事実です。
 したがって、「人乗りドローン」というイメージのUAMは将来の姿であり、近未来のUAMはライセンスを所有した操縦者が有視界飛行で運用していくことでしょう。

【千田泰弘のエアモビリティ新市場のすべて】

Vol.1 新たなモビリティ「空飛ぶクルマ」の定義と将来像

千田 泰弘

一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)副理事長
一般社団法人 JAC新鋭の匠 理事

1964年東京大学工学部電気工学科を卒業、同年国際電信電話株式会社(KDD)に入社。国際電話交換システム、データ交換システム等の研究開発に携わった後、ロンドン事務所長、テレハウスヨーロッパ社長、取締役を歴任、1996年株式会社オーネット代表取締役に就任。その後、2000年にNASDA(現JAXA)宇宙用部品技術委員会委員、2012年一般社団法人国家ビジョン研究会理事、2013年一般社団法人JAC新鋭の匠理事、2014年一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)副理事長に就任、現在に至る。