ドローンを空港等周辺や地表・水面から150m以上の上空など、航空法で規制された空域で飛行させる場合には、国土交通大臣の許可を取得しなければならない。また、夜間飛行や目視外飛行など、規制された飛行方法を行う場合には承認が必要となる。こうした許可・承認が必要な飛行を総称して「特定飛行」と呼び、これを実施する際には、「飛行計画の通報」と「飛行日誌の作成・携行」が義務付けられている。ドローンを飛行させるほとんどのケースで飛行申請が必要とされ、ドローン運用のひとつのハードルとなっているのが実情だ。
飛行計画の通報とは、国土交通省が提供するドローン情報基盤システム「DIPS2.0」を通じて、使用する機体や飛行目的、飛行空域などの情報を事前に登録する手続きだ。他の無人航空機との運航競合を防ぎ、安全な空域利用を図ることを目的としている。
一方、飛行日誌は「飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」の3つで構成される。飛行前には機体の点検を実施し、その結果を日常点検記録に記載する必要がある。また、飛行目的や離着陸地点、飛行時間などを飛行記録として残し、さらに整備履歴を点検整備記録として管理する。
このようにドローンの運航にはあらゆる手続きと記録が必要となり、ドローンユーザーの中には、「飛行計画の通報は都度必要なのか?」「飛行日誌の作成が面倒だ」と感じている人もいるのではないだろうか。
タップ操作で飛行日誌が完成する「FwriteDown」
こうした課題の解決策として活用できるのが、Paix Avi(ペイックスアヴィ)が提供するドローン運用管理クラウドサービス「FwriteDown」だ。Paix Aviはドローン関連事業者の支援サービスを提供しており、ドローン専門の行政書士による申請代行などを行っている。FwriteDownはPaix Aviの行政書士が設計・運営を行い、飛行申請や記録作成の一元管理を可能にしたサービスだ。
FwriteDownはDIPS2.0と連携し、機体情報や飛行計画情報、許可・承認情報を自動取得。また、DIPS2.0へ直接ログインしなくても飛行計画の通報が可能なうえ、その情報を活用して飛行記録を自動生成する機能も備えている。さらに、日常点検記録は画面上の項目を選択するだけで入力でき、飛行記録や点検結果をもとに点検整備記録も作成可能だ。飛行日誌の作成に必要な作業時間を大幅に短縮し、容易に記録を作成できる設計になっている。
個人運用から企業管理まで、クラウド化で変わる運航管理
もう少し具体的なシーンを想定してみよう。
例えば筆者は複数のドローンを所有している。これまでは機体ごとにクラウド上へフォルダを作成し、その中に飛行記録、日常点検記録、点検整備記録を保管していた。各記録は国土交通省の様式を印刷して手書きで記入し、それをPDF化して保存する形で管理している。法令遵守のためとはいえ、アナログなうえ正直なところ手間のかかる作業となっていた。
その点、FwriteDownによる管理では、国土交通省の様式に準拠した点検項目が表示され、結果をタップするだけで記録が完結する。また、クラウド上のストップウォッチ機能を利用して飛行時間を記録(手動による開始・停止)できるほか、飛行計画通報時の情報があらかじめ反映されるため、飛行終了時には飛行記録がほぼ完成した状態となる。実際に使用してみると、飛行日誌作成という煩雑な業務が、スマートフォンやタブレットで数回タップするだけで完了する利便性は非常に高いと感じた。
企業で活用するメリットはさらに大きい。複数の機体を複数拠点で使いまわす場合、「どの機体がどの拠点にあるのか?」「誰が飛行日誌を管理するのか?」「本社はどのように運用状況を把握するのか?」といった課題が生じる。
FwriteDownを活用すれば、各種記録をクラウド上で一元管理して共有できるため、担当者のPC内だけでデータが管理される属人的な運用を防ぎやすい。また、事業者独自の点検項目を追加できるカスタマイズ機能も備えているほか、「DJI Mini 4 Pro」など型式認証取得機が持つ独自の点検フォーマットにも対応している。
それに加え、飛行計画の通報機能も実用的だ。通常はDIPS2.0で行う手続きだが、FwriteDown上から手続きができる。さらに、人口集中地区(DID)や小型無人機等飛行禁止法の対象区域など、飛行規制エリアを地図上で確認できるため、「包括申請では飛行できない場所だった」といった見落としにも気付きやすく、正確な飛行申請が可能になる。
ドローン専門行政書士が監修、制度改正にも迅速対応
FwriteDownを設計・運営しているのは、Paix Aviの代表を務める行政書士の本間氏だ。
許可・承認は本来、操縦者自身が取得するものだが、高度な飛行や特殊な運用を伴う案件では、専門家と連携して計画を立てることでリスクを避けるのが望ましい。ドローン関連の許認可業務を扱う行政書士は近年増加傾向にあるが、本間氏は2020年からこの分野に取り組んできた。2019年の遵守事項追加、2022年の機体登録制度や無人航空機操縦者技能証明(国家資格)制度の開始など、ドローン制度が大きく変化した時代から業界に関わっている。
本間氏は「制度が次々と変わっていく業界に面白さを感じました」と振り返る。
ドローンの制度やルールは現在も毎年のように改正されている。本間氏は制度改正の内容を継続的に確認し、運用への影響を分析。その結果を迅速にFwriteDownへ反映している。また、他にも飛行日誌を管理するサービスは存在するが、機体管理、飛行日誌作成、飛行計画通報、法令対応までをワンストップで提供し、しかも専門行政書士が継続的に監修しているサービスはFwriteDownの他にない。
本間氏がFwriteDownを開発した背景にも、現場の法令遵守に対する強い問題意識がある。「ドローン業界では制度変更や法改正が非常に速いペースで行われています。事業者が通常業務をこなしながら、すべての制度変更を把握し続けるのは現実的ではありません」と本間氏は話す。一方、ドローン活用において法令遵守は絶対条件だ。本間氏は講演やセミナーによる啓発活動も行っているが、「システムによって自動的に法令遵守を支援できる仕組みを作りたい」と考え、FwriteDownの開発に至ったという。
「ルールを守りたいが方法が分からない方もいます。例えば、包括申請があれば夜間飛行と目視外飛行を自由に組み合わせられると誤解しているケースもあります。自分では正しく運用しているつもりでも、実際には法令違反となっている場合があり、そうした方々を支援し、適法な飛行につなげるのがFwriteDownの役割です」と本間氏は説明する。
業務利用では、法令遵守への要求はさらに高まる。企業からは「自社の運用が本当に適法なのか把握できていない」という相談も少なくないという。社内法務部門がインターネット上の誤情報を根拠として判断してしまうケースもある。法令に基づいた正確な運用を実現するためには、専門家による継続的なアップデートが重要になるという。
法令遵守を支える仕組みが社会実装の基盤に
ドローンの活用領域は空撮から点検、測量、物流、警備へと広がり、業界は実証実験の段階から本格的な社会実装のフェーズへ移行しつつある。その一方で、事業の拡大に比例して法令遵守や運航管理の重要性も高まっている。飛行計画の通報や飛行日誌の作成は、安全運航を支える基本でありながら、現場では負担になりやすい業務でもある。
FwriteDownは、こうした煩雑な手続きを効率化すると同時に、制度改正への対応や適法な運用を支援する仕組みを提供する。ドローンビジネスの成長を持続的なものにするためにも、法令遵守を無理なく実践できる環境づくりが今後ますます重要になるだろう。
