写真:講習を受ける様子

 ドローンの国家資格である「無人航空機操縦者技能証明」は、有効期間が3年と定められている。資格を更新する際には無人航空機更新講習(以下、更新講習)を受講し、制度や安全運航に関する知識を改めて確認する必要がある。

 では、次の質問に答えられるだろうか。

第1問:「レベル3.5飛行」について説明しなさい。
第2問:ドローン操縦者に科される可能性のある「行政処分」にはどのようなものがあるか答えなさい。

 スムーズに答えられた読者は、日頃からドローンの最新動向にアンテナを張っている方か、あるいは最近になって国家資格「無人航空機操縦者技能証明」を取得して記憶が鮮明な方だろう。逆に「レベル3.5飛行なんてあっただろうか?」「罰則は知っているが行政処分はよく分からない」と感じた方は、しばらくドローンの現場から離れていたり、技能証明制度が始まったばかりの頃に資格を取得したのではないだろうか。

 技能証明制度は2022年12月から始まり、約3年が経過した。この間、ドローン業界を取り巻く制度や環境は、技術の進歩とともに大きく変化している。資格取得時に一生懸命学んだ知識であっても、気づかないうちに現行ルールから取り残されてしまう可能性がある。

 そうした制度変更や最新情報をキャッチアップし、安全運航のための知識をフォローアップする重要な機会となるのが、資格取得から3年ごとに受講する「更新講習」だ。本記事では、2023年7月に一等無人航空機操縦士の資格を取得し更新時期を迎える筆者が、実際に更新講習を受講した様子とあわせて、更新講習の現状を紹介する。

無人航空機操縦者技能証明の更新講習の概要と受講方法

 まず技能証明の更新制度について簡単に整理しておこう。技能証明は一等、二等ともに有効期間が3年と定められている。更新する場合は、登録更新講習機関が実施する更新講習を受講する必要がある。有効期限の1か月前までに、講習を受講し終えてDIPS2.0を通じた更新申請手続きを完了させなければならない。

 また、身体適性検査の結果の提出も必要となる。一等(25kg未満の限定変更をしていない場合)および二等であれば、運転免許証の提出で代替することが可能だ。

写真:教材

 講習内容は、技能証明制度の概要や操縦者が遵守すべき事項、事故・重大インシデントの定義といった教則内容の復習に加え、最近の無人航空機関連の制度改正などのトピックスについても解説される。

 講習時間は一等で75分、二等で50分と定められており、映像教材によるオンライン受講も可能だ。ただしオンラインで受講する場合は、最後に対面で修了演習を受講し、講習内容の理解度を確認する効果測定を受ける必要がある。

事故・重大インシデント事例から学ぶ安全運航の重要性

 筆者が更新講習を受講したのは、東京・渋谷に本社を構えるスカイピーク。同社はドローン事業向けの教育事業に力を入れており、企業向け講習テキストの作成や、ドローン運航の危機管理を学ぶ「CRM(クルー・リソース・マネジメント)講座」など、独自プログラムの開発も行っている。技能証明取得に対応した登録講習機関であると同時に、登録更新講習機関として更新講習を実施している。

 スカイピークの更新講習はオンライン方式で行われ、受講者は自分のスケジュールに合わせて受講できる。事前に送付されたURLにアクセスすると、更新講習のテーマごとに用意された動画教材を視聴できるサイトへ接続される。受講者は全部で22本の動画を順番に視聴しながら学習を進めていく。

講習のスライド(無人航空機の事故発生状況)

 講習は国土交通省が更新講習用に作成した教本に沿って進められる。その中でも特に印象的だったのが、事故や重大インシデントの事例紹介である。国土交通省に報告された事故や重大インシデントを分析した結果、事故の主な直接要因は「ヒューマンエラー」、重大インシデントでは「操縦不能」の状況が多いと説明された。

 また、人が負傷した事故では「異常事態への対応不備(機体を手で止めようとしたなど)」が最も多かったという。講習では、実際の事故の再現映像や、ドローンのプロペラが人体に与える影響を検証した実験映像なども紹介された。ドローンの運航においては、適切な飛行計画の立案や非常事態への備え、そして日頃の安全意識が重要であることを改めて実感する内容だった。

講習のスライド(実際の事例とその教訓・マルチローター)

修了演習で理解を深める「レベル3.5飛行」と行政処分

 オンライン学習を終えた後、筆者はスカイピークで修了演習に参加した。スカイピークでは、オンライン学習で理解しにくかったポイントの追加解説を独自サービスとして提供している。その後に行われる修了演習では、学習効果を確認するためのテストも実施される。技能証明試験を経験した人であれば、問題用紙を見た瞬間に緊張が走るかもしれない。これについては、合格や不合格といった基準は無く、効果測定と復習が主な目的となっている。

写真:ペーパー問題を解く様子
効果測定を受ける筆者。

 追加解説で重点的に取り上げられたのが、冒頭のクイズでも紹介した「レベル3.5飛行」と「行政処分」である。

 レベル3.5飛行は2023年12月に新設された制度で、機体に搭載したカメラなどを活用して第三者の有無を確認することで、従来の立入管理措置を撤廃するとともに、技能証明の保有と保険加入により、移動中の車両等の上空を横断できる飛行形態を指す。

 また行政処分には、「技能証明の効力の取消」「技能証明の効力の停止」「文書警告」「口頭注意」の4種類が定められている。スカイピークの瀧 講師(一等無人航空機操縦士)は、こうした制度内容を丁寧に解説してくれた。オンライン学習だけでも理解は可能だが、ワンポイント解説もあることで、制度の背景や実務上の注意点まで理解を深めることができる。

写真:話をする瀧講師
株式会社スカイピーク 瀧 雄太講師。

 瀧 講師は、更新講習の内容について「弊社では、修了演習としてのテストのみでなく、オンライン学習の重要な項目を1時間程度かけて再度解説し、加えて最新のトピックスも取り上げています。例えば災害時に許可・承認を得ずにドローンを飛行できるようになる航空法132条92の特例では、これまで獣害は該当しませんでしたが、2025年12月から熊をはじめとする獣害でも適用されます。修了演習は、そういった最新情報を周知する機会にしています」と話す。

 更新講習では一等向けの内容として、「カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価の基本的な考え方」についても取り上げられた。講習で使用する教則は版を重ねており、この分野の記載については第3版から大幅に変更されている。第1版で学習した筆者にとって、第3版以降で追加された「リスク評価ガイドラインによるリスク評価手法の考え方」は未習の分野になる。オンライン学習で学んだつもりであったが、対面講習を通じてより理解を深めることができた。スカイピークでは実際に、カテゴリーⅢ飛行の業務に携わる一等無人航空機操縦士も更新講習を受講しており、現場で活躍するパイロットにも多く選ばれている。

更新講習をきっかけにドローンとの関わりを再スタート

 スカイピークの更新講習では、二等資格保有者の受講が多いという。また、同社のスクール修了生以外の受講者も約4割にのぼるそうだ。

 業務でドローンを運用している受講者からは、「レベル3.5飛行の内容」や「最新の活用事例」など、実務に関する質問が多く寄せられる。スカイピークでは、こうした疑問を直接講師に相談できる点も大きなメリットだ。

写真:話をする高野氏
株式会社スカイピーク 代表取締役 高野 耀氏。

 スカイピークの高野代表は、「更新講習を通じて、ドローン運用に関する疑問の解消や知識の再取得をサポートしたいと考えています。弊社では第2・第4月曜日に更新講習を実施することが多いですが、企業研修として複数名で受講される場合は個別開催の対応も可能です。更新講習をきっかけに新たな出会いが生まれ、今後の事業においても良い関係を築ければ嬉しいですね」という。

 技能証明制度が創設され、早期に資格を取得したものの、その後ドローンに触れる機会が減り、最新情報を追えていないという人も少なくないだろう。DIPS2.0からの通知で更新時期を知り、改めてドローンに関わろうと考えた人もいるはずだ。制度や技術の変化を学び直し、安全運航の意識を再確認する貴重な機会でもある。資格更新をきっかけに、改めてドローンの世界に向き合ってみてはいかがだろうか。