自動車用コネクタを中心に、タッチパネルなどの入力機器、航空機器などを開発・製造する日本航空電子工業(JAE)は、2021年からドローン用フライトコントローラーを開発し、「Flight Brain」シリーズとして展開している。さらに近年はドローン向け電波距離計である「JRE(JAE Radio Eye)シリーズ」として「JRE-30」を製品化。さらに近日中に「JRE-10」「JRE-150」といったバリエーションをリリースするべく開発を進めている。

航空機技術を応用した電波高度計がドローンの飛行をどう変えるか

 産業用途で利用されるドローンの多くは、機体の高度を保つために、気圧高度計やGNSSの位置情報を利用している。ただし、これらの方法にはメートル単位の誤差があり、主に地面から数メートル以上での高度計測に用いられている。また、地表から数メートル程度の低い高度での飛行や、離着陸時の高度を計測する目的で、赤外線を使ったToF(Time of Fly)センサーが用いられることも多い。また、近年はLiDARを使って機体の高度や位置を把握するものもある。

 ただし、一般的なToFセンサーは計測できる距離が数メートル程度に限られ、また、LiDARは雨や雪、霧といった天候下や、水面上では正確な計測ができない。そこで日本航空電子工業ではこうしたドローンの高度を計測する方法として、新たにドローン向けの電波距離計「JRE-30」を製品化している。

 航空機もドローンと同じように高い高度では気圧高度計を用いる一方で、離着陸時などでは電波高度計(レーダー高度計)を用いて、対地高度(絶対高度)を精密に測定している。こうした飛行機やヘリコプターの電波高度計の技術をベースに、航空機装備品の開発・製造で培ったノウハウを活用して開発したのがJRE-30である。

 JRE-30は24.15GHzのFM波を用いた電波距離計で、0.1〜95mの範囲で1cmという分解能で距離を計測できる。約8cm弱四方の本体は約110gと小型軽量で、IP66、IP67の防塵防水性能規格に準拠して、ほぼ全天候で利用可能。雨や雪、霧といった天候下や、水面上での正確な対地高度の計測ができるのが特徴となっている。

JRE-30とLiDARの水面上計測時の計測データ(比較)
雨天計測時のJRE-30とLiDARのデータ比較
JRE-30とLiDARの雨天環境での計測データ(比較)
水面上での計測時のJRE-30とLiDARのデータ比較

 本機を機体の下方に向けて搭載して対地高度を計測することにより、自動飛行による対地一定高度飛行や、自動着陸時の精密な対地高度の計測が可能。また、機体の進行方向に向けて搭載すれば、高圧送電線のような対象物を離れた場所から検知する障害物センサーとしても活用できる。さらにこのJRE-30は、マルチパスの影響が見込まれる閉鎖空間の高度計測といった用途の場合、マルチパスを考慮したフィルタリングも可能だとしている。

写真:電波距離計「JRE-30」
電波距離計「JRE-30」。8cm弱四方の筐体はIP66、IP67の防塵防水規格に準拠している。

全天候型センサーとしてLiDARの代替を目指す

 また、JAEではより小型軽量を実現しただけでなく、距離に加えて目標物の角度(X、Y)も計測できる「JRE-10」を開発し、リリースに向けて準備を進めている。本機は60GHzの電波を45度以上の幅広い範囲に送信することで、対象物までの距離と角度を計測。最大5点の対象物をX、Yの座標で把握することができるミリ波レーダーである。測定距離は0.1mから10m以上となっており、その距離精度は5cm以下となっている。

 さらに同社では、JRE-30の後継機として位置付けている「JRE-150VA」の開発にも取り組んでいる。本機は約150mまでの距離にある対象物を計測できる電波距離計で、航空法で定められた対地150mまでの高度を正確に計測できることを目標に開発しているという。また、本機を水平方向に搭載することで、従来に比べてはるかに遠くの障害物を検知することが可能。とくに高速で移動する固定翼型ドローンには、この長距離を計測できるという特長が生かせるとしている。

写真:手のひらに載せた「JRE-10」
大人の親指程度の大きさしかないコンパクトな「JRE-10」。5点の対象物の位置を把握できるミリ波レーダーだ。
ドローンに搭載した「JRE-10」が目標を捕捉するイメージ図
(出所:日本航空電子工業)

 こうしたJREシリーズのように電波を使った距離計をドローン向けとして製品化しているのは、日本国内においてJAEが唯一であり、世界でも数社しかないという。ドローン用として比較的離れた距離の障害物を検知する技術としてはLiDARがあるが、JAEでは今後、雨や雪、霧といった気象条件にも強いという電波距離計のメリットを広く訴求することで、対地高度計測や障害物検知のためのLiDARを電波距離計に置き換えていきたいとしている。

Flight Brain 電波距離計(JREシリーズ)の用途事例