大型の映画撮影用カメラやハイエンドのLiDARなどを搭載するプロフェッショナル向けで多くの実績を持つアメリカFreefly Systemsのドローン。現在、主に産業用途に向けては、大型のクワッドコプター「ALTA X」と、中型のクワッドコプター「ASTRO」がラインナップされている。2025年秋にはASTROシリーズに、ペイロードを大幅に拡大した「ASTRO MAX」がリリースされるとともに、ALTA Xも第二世代を意味する「ALTA X Gen2」を発表。また、こうしたドローンに加えて新たな純正ペイロードとして、LiDARの「FLUX」シリーズをリリースした。これら、Freefly Systemsの製品展開について、日本の総代理店となっているイデオモータロボティクスの井出氏に聞いた。
ASTRO MAXは最大積載量が従来の2倍に拡大、多くのサードパーティ製ペイロードに対応
Freefly Systemsは2020年に、中型産業用ドローン「ASTRO」シリーズをデビューさせた。同機は、アメリカの安全保障上の基準に適応するために、ドローン用フライトコントローラーメーカーであるAuterionとの協業で生まれたドローンだ。
ASTROはフライトコントローラーとLinuxミッションコンピューター、LTE通信モジュールを一体化した、AuterionのSkynodeを搭載。フライトコードには、オープンソースのPX4をベースにした、Auterion Enterprise PX4を採用している。
また、従来の一般的な大型の産業用ドローンは、機体とペイロードそれぞれに制御装置が必要であったが、ASTROシリーズは、機体とペイロードを一体として制御できるようになっている。そのため、ASTROの機体とともに、ソニーのフルサイズミラーレスカメラ「α7 Ⅳ」とジンバルを一体化させたカメラペイロードもリリース。また、機体とペイロードの接続には、オープンソースのPixhawkペイロードバスを採用しており、さまざまなサードパーティ製のペイロードを使うこともできる。
▼Freefly Systems-Drone Payloads
https://freeflysystems.com/payloads
2024年には新たに開発した専用コントローラー「Pilot Pro」との組み合わせも可能な「ASTRO PRIME」にマイナーチェンジが実施された。またASTRO PRIMEは、機体とコントローラー間の通信に従来のHexのHerelinkに加えて、National Defense Authorization Act(NDAA:米国国防権限法)とBlue UASに対応する米Doodle Labs「Mesh Rider Radio」の通信システムを選ぶことができる。
このマイナーチェンジに合わせて、ソニーのインテグレーション専用カメラ「ILX-LR1」を採用したジンバルカメラペイロード「LR1 Payload」をリリース。このジンバルカメラはサーマルカメラとレーザー距離計が追加可能。さらに、豪EmesentのSLAM LiDARやSenteraのマルチスペクトルカメラといった、さまざまなサードパーティ製ペイロードを、Pixhawkペイロードバスを介して搭載することが可能だ。
さらにASTROシリーズは、2025年にモーターとプロペラのブレードといったローターを刷新した「ASTRO MAX」へと進化した。モーターが従来の「Freefly F45」から「Freefly 7010」に換装され、ローターブレードも21インチから22インチのものを採用。その結果、最大積載重量が最大1.5kgから最大3kgへと2倍に拡大されている。また、同じ条件であれば、従来モデルに比べて飛行時間が約10%伸びているという。
この最大積載重量の拡大によって、ジンバルカメラやLiDARなどのより大きなペイロードを搭載することが可能となった。そのため、ASTRO MAXではこうした大型ペイロードを機体にマウントするためのバイブレーション・アイソレーター・カートリッジをリリース。あわせて標準のランディングギアより52mm長いASTRO MAX用のランディングギアも同時に発売されている。これによりEmesentのSLAM LiDAR「HOVERMAP」や、本格的な測量で利用されることの多い、YellowScanなどのLiDARを、ASTRO MAXで利用できるようになった。
3種類のLiDARを発表、シンプルな操作でドローン測量を身近に
Freefly SystemsはASTROシリーズ用のペイロードとして、新たにLiDAR「FLUX」シリーズを2025年夏に発表している。「FLUX H1」「FLUX O1」「FLUX L1」という3モデルが用意されるLiDARペイロードは、“オンサイト・マッピング”をコンセプトにしており、なるべく簡単な操作と手順で計測を行い、現場でデータを処理して利用できるというのが最大の特徴となっている。
FLUX H1とFLUX O1は、いずれもミドルクラスのLiDARという位置づけで、H1はHesaiのXT-32MXスキャナーを採用したロングレンジモデル。一方O1は米OusterのOS1を採用しており、NDAAに準拠したモデルとなっている。また、FLUX L1はスキャナーにLivoxのAviaを採用することで、リーズナブルな価格を実現している。
3モデルともスキャナーはそれぞれHesai、Ouster、Livoxのものを採用しているが、IMUはFreefly Systemsが独自に開発したもので、この部分を小型軽量にすることで、いずれもその重量は700g前後と、他の同等のLiDAR製品に比べて大幅に軽量であることもシリーズの特徴となっている。
また、FLUXシリーズはASTROのPixhawkペイロードバスによって機体と接続されるため、機体から電源が供給されるほか、FLUX用のGNSSアンテナで受けた位置情報は、機体を通じて取り付けることが可能。さらに、LiDARが取得したデータは、機体を通じてリアルタイムに地上のPILOT PROコントローラーに送信され、コントローラーに接続したiPadのアプリ「Freefly FLOW」で処理することができる。
ワンストップ測量の実現と、NDAA対応が示すFreeflyの戦略
イデオモータロボティクスの井出氏によると、Freefly Systems本国のアメリカにおいては、ドローンによる測量が測量専門事業者に加えて、測量データを必要とする土木・建築事業者をはじめとしたエンドユーザー自ら手がける志向が強いとされ、LiDARを使ったドローンによる測量でも、なるべくシンプルな取り扱いや作業のスピードが求められるという。
現在、ドローンによるレーザー測量で利用される機体や機器は、一部の製品を除いてそのほとんどが機体の操作とLiDAR機器の操作が分離されている。そのため、LiDARのスペックをもとにドローンの自動飛行プランを作成し、飛行開始時には機体を操作してアライメントを行うほか、離陸前後にはLiDARの計測の開始・停止といった操作が必要となる。また、飛行中はLiDARの状態を確認することができない。飛行終了後はデータを格納したメモリーをLiDARから抜き、それを解析ソフトが入ったPCにインポートして処理する。
FLUXシリーズはFreefly Systemsの純正LiDARとして、LiDAR、ASTRO、Pilot Proコントローラーとそこに接続したiPad ProとアプリFreefly FLOWを組み合わせることで、こうした作業をワンストップで取り扱えるようにしている。飛行プランの作成時には、Pilot Proと組み合わせて使うAuterion Mission Controlアプリ上で、FLUXのモデルを選び、飛行高度をはじめとしたパラメーターを入力するだけで、最適なオーバーラップやサイドラップを踏まえた飛行プランの作成が可能。飛行中にFLUXの操作もアプリ上でできる。飛行後はそのままiPad ProのFreefly FLOWアプリ上で直ちにデータを処理して、三次元モデルを生成するため、測量の現場で一連のワークフローを完結させることができるという。
Freefly Systemsは、2025年9月にAerial Precisionと提携を発表している。Aerial Precisionはオランダのレーザー測量ソリューションメーカーで、ドローン用LiDARや解析アプリケーションを手がけている。井出氏によるとFLUXシリーズはこのAerial PrecisionとFreefly Systemsの協業によって誕生したという。Freefly SystemsはFLUXを中心にしたLiDARソリューションを今後も充実させていくと見込まれ、2025年秋にリリースした3モデルはミッドレンジに位置付けられているが、「今後、よりハイエンドなソリューションを展開する可能性がある」(井出氏)という。
ASTRO MAXへのマイナーチェンジは、FLUXをはじめ今後も拡大が見込まれるペイロードのバリエーションへの対応を視野に入れたものだといえる。近年、様々な形の米中間の摩擦によって、アメリカとその同盟国では、特に公共部門において非中国製のドローンや関連製品を求める向きが強まっている。これまで、ドローンとペイロードをパッケージにして提供してきたDJI製品と同じような扱いができるドローンがほとんどなかった中で、ASTRO MAXとFLUXといった製品は、Freefly SystemsがDJIに代わるパッケージ化されたドローンをワンストップで提供しようとしているとされる。
なお、このFLUXシリーズのデビュー後に、Freefly Systemsのハイエンドドローンである「ALTA X」も「ALTA X Gen2」にマイナーチェンジが実施されている。従来のALTA Xシリーズが、フライトコントローラーにHexのCubeを採用していたのに対して、Gen2ではASTRO MAXと同じAuterionのSkynodeを採用。また、コントローラーであるPilot Proとの通信に、Doodle LabsのMesh Riderを選択することが可能となり、これによりアメリカ本国ではNDAAに完全準拠することとなった。今回ALTA XがAuterion製フライトスタックに換装されたことで、Freefly SystemsのラインナップはすべてNDAAに準拠することとなり、また、すべてのモデルでペイロードとのワンストップな運用が可能となっている。
