KDDIとKDDIスマートドローンは9月28日、東京都港区高輪でドローン事業に関する説明会を開催した。日本郵便との提携による郵便局のドローンポート拠点化と、KDDIスマートドローンによる「UTMサービスプロバイダID」の取得を中心に、ドローンを地域の見守り、防災、点検、物流などに活用する事業構想を発表した。

 郵便局との連携は、ドローンを日常的に運航するための設置場所を全国に広げる取り組みだ。一方、UTMサービスプロバイダIDの取得は、国のドローン情報基盤システム「DIPS2.0」と接続し、飛行計画の通報や他の運航者との調整を支援するための制度上の基盤となる。KDDIグループは、ドローンが離着陸する「拠点」と、そこから飛ぶ機体を管理する「運航」の両面を整備することで、多数のドローンを継続的に運用できる環境を構築していく考えだ。

常設20拠点、遠隔運航は2万1000回超!平時の点検から災害対応へ

 冒頭、KDDIスマートドローンの博野雅文代表取締役社長は、少子高齢化に伴う人手不足や自然災害への対応を背景に、ドローンを人の仕事を補完する「AI労働力」として社会に実装していく考えを示した。技術の実証にとどまらず、実際の業務を担う段階に移っているとの認識だ。

写真:話をする博野氏
ドローンの必要性と社会実装について説明するKDDIスマートドローン株式会社 博野雅文社長。

 同社によると、説明会時点で常設のドローンポートは全国20拠点にあり、遠隔運航の累計飛行回数は2万1000回を超えている。ドローンポートは、機体の待機、離着陸、充電などを行う設備だ。現地に機体を常設し、遠隔地のオペレーターが映像や機体の状態を確認しながら運航することで、飛行のたびに機体と操縦者を現場へ派遣する方法に比べ、定期的な巡回や緊急時の出動に対応しやすい。なお、KDDIスマートドローンでは、各地に配備したドローンポートを飯田橋の本社から遠隔でオペレーションしている。

写真:「Skydio Dock for X10」と「Skydio X10」
写真:「Skydio Dock for X10」上部の格納スペースで待機する「Skydio X10」
KDDIが配備しているドローンポート「Skydio Dock for X10」。LTE通信や衛星通信によって遠隔から運用する。ドローンの充電機能も備えている。

 説明会では、北海道新十津川町でのクマの出没確認が紹介された。町役場の屋上に設置したポートからドローンを飛行させ、夜間にはサーマルカメラも活用する。住民から目撃情報が寄せられた際の確認や、取得した映像の町への共有などを通じて、関係者の対応を支援しているという。

 災害対応では、2026年8月の大雨に伴う石川県志賀町での緊急調査を紹介した。石川県と志賀町からの要請を受け、8月27日から30日までの4日間に計12回飛行。河川やため池の状況、道路の陥没、水没車両などを上空から確認し、撮影した映像やデータを県庁や町役場に共有した。平時から常設していたポートを、災害発生後の状況把握に活用した事例である。

 さらにはグループ内での活用も進む。博野社長によると、2025年度には約700の基地局でドローンによる点検を実施し、鉄塔に登って撮影する従来の作業に比べ、現地での作業時間を約80%削減したという。このほか、太陽光発電所での夜間巡回などにも利用している。

 今後はドローンポートを全国1000カ所に配備し、平時・有事を問わず、全国の必要な場所へ10分以内にドローンが駆け付けられる社会基盤の構築を目指す。「10分以内」は全国展開後を見据えた目標であり、現時点で全国をカバーしているという意味ではない。

郵便局との連携でドローンの設置場所を全国へ

スライド:ドローンの全国展開に必要な5つの要素

 博野社長は、ドローンを全国展開するために必要な要素として、「機体」「通信」「遠隔運航体制」「設置場所」「制度」の五つを挙げた。

 機体では米Skydio社と連携し、運航体制では日本航空(JAL)との協業を進めている。通信についても、モバイル通信だけでなく、圏外地域での利用を想定した衛星通信「Starlink」の活用を進めている。一方、ドローンを常設して継続的に運用するには、地域住民の生活圏に近く、電源や通信環境を確保できる設置場所が必要になる。これまでも市役所や消防署などへの設置を進め、大阪府池田市ではローソン店舗の敷地内にポートを設置している(ハッピーローソンタウン池田伏尾台店)。日本郵便との連携は、こうした拠点網に郵便局を加える取り組みとなる。

 KDDIと日本郵便は2026年6月、「ドローンによる地域課題解決と社会基盤化の実現」に向けた基本合意書を締結した。

 提携の柱は二つある。一つは、KDDIが進めるドローンポートの全国展開に、日本郵便の施設や地域との接点を活用すること。もう一つは、日本郵便が進めるドローン物流に、KDDIの通信や遠隔運航の技術・体制を活用することだ。

 郵便局は、郵便・物流サービスを通じて地域住民との接点を持ち、山間部を含む全国の生活圏で事業を展開している。博野社長は、KDDIが持つ通信、機体、ポート、運航人材と、日本郵便の施設、配送網、現地人材、自治体との接点を組み合わせ、互いの事業を補完していく考えを説明した。

スライド:日本郵便×KDDI 基本合意書の取り組み
KDDIは、日本郵便の郵便局ネットワークを活用したドローンポートの全国展開を目指す。日本郵便は、ドローン物流による物流配送の効率化を目標とした。

 今回の連携には、郵便・物流サービスの担い手不足に対応する狙いもある。ただし、今回発表した珠洲市での実証では、まず郵便局を地域の見守りや災害状況の確認に使うドローン拠点として活用できるかを検証する。荷物を運ぶドローン物流については、もう一つの連携テーマとして別途検討を進めるとしている。

珠洲郵便局の屋上にポートを設置し、配送ルートの安全確認にも活用

 基本合意に基づく第一弾として、両社は石川県珠洲市の珠洲郵便局の屋上に「Skydio Dock for X10」を1台設置し、9月28日から10月4日まで実証を行った。

 使用する機体は、自律飛行型ドローン「Skydio X10」。機体に搭載したAIとナビゲーションカメラによって周囲の障害物を認識し、回避しながら飛行する。平時には通学路の安全確認を行うほか、有事には災害によって道路が寸断された場合を想定し、配送ルートの状況を上空から把握する。集配社員が現地に向かう前に道路状況を確認し、安全確保に活用できるかを検証する。また、珠洲市内にすでに配備されているドローンポートと連携し、複数機を遠隔運航することで監視・点検の対象エリアを広げる。災害時には被災状況や住民の安否を迅速に把握できるかも検証する。説明会ではこのほか、野生動物の出没確認や、孤立する可能性のある集落の状況把握など、平時から有事までの活用例が示された。

 日本郵便は、ポートの設置場所の提供、郵便局業務を踏まえた用途の検討、地域や関係機関との連携を担当する。KDDIは機体、ポート、遠隔運航システムを提供するほか、通信・運航環境の構築、ルート設計、安全管理、取得した映像やデータの伝送・活用を担う。10月4日に実施された珠洲市総合防災訓練への参画も実証計画に盛り込まれた。両社は今回の実証を踏まえ、全国の郵便局を活用したドローンポートの常設化と、ドローン物流の社会実装について検討し、2027年度以降の本格的な協業を目指す。なお、現時点で全国の郵便局への設置が決まっているわけではない。まず珠洲市で、郵便局をドローンポートとして利用する有効性や運用モデルを検証する段階である。

UTMとは何か?増えるドローンの「空の交通」を調整

 ドローンポートの全国展開と並ぶもう一つのテーマが、KDDIスマートドローンによる「UTMサービスプロバイダID」の取得だ。同社は9月16日、NTTデータとともに国内で初めて国土交通省航空局からIDの付与を受けた。2026年12月から、企業や自治体向けに運航管理サービスを提供する予定だ。

写真:話をする杉田氏
「UTMサービスプロバイダ(USP)」ID取得を発表。KDDIスマートドローンが手掛けるドローンの運航管理について説明するKDDIスマートドローン株式会社 最高技術責任者(CTO) 杉田博司氏。

 UTMは「UAS Traffic Management」の略で、ドローンなど無人航空機の運航を管理する仕組みを指す。そのためのシステムが「UTMS(UAS Traffic Management System)」で、運航管理サービスを提供する事業者を「USP(UTM Service Provider)」と呼ぶ。ドローンの運航が増えれば、自社の機体だけを管理していればよいとは限らなくなる。同じ時間帯に別の事業者のドローンが近くを飛ぶ可能性があり、さらにはドクターヘリなど低空を飛行する有人航空機と空域を共有する場面も想定される。そこで、飛行する日時、経路、高度などを事前に共有し、複数の飛行計画が重なっていないかを確認しながら、必要に応じて運航者間で調整するのがUTMの役割の一つだ。

 例えば、ある事業者が河川をドローンで点検し、別の事業者がその近くの橋を調査するとする。双方の飛行時間と飛行範囲が重なっていれば、時間帯や高度などを事前に調整する必要がある。UTMは、こうした飛行計画の共有や調整を支援する。

 機体自身がカメラやAIを使って目の前の障害物を回避する機能とは役割が異なる。UTMは、一機ごとの自律飛行技術ではなく、複数の運航者や機体が空域を利用する際の交通整理に近い。国土交通省はUTMを段階的に導入する方針を示している。現在の初期段階では、主に飛行前の計画通報や運航者間の調整を支援する。将来的には、飛行中の機体の位置情報や有人航空機の情報も活用し、ドローン同士や有人機との接近・衝突リスクの低減につなげる構想だ。

認定USPを使うと何が変わるのか

 国土交通省航空局は2026年3月31日、USPへのID付与に関する審査要領を制定した。事業体制や情報管理、システムの安全性、運航管理機能などが基準に適合した事業者にIDを付与し、「認定USP」としている。

スライド:国交省が「UTMサービスプロバイダ制度」を開始
認定USPを取得したUTMサービス事業者は、国土交通省によるドローン情報基盤システムとドローンの利用者を円滑につなぐ役割を果たす。それに加え、他の利用者の飛行計画を調整し、利用者同士の安全なドローン運航を支援する。

 審査では、サービスを継続して提供するための組織・人員、設備の維持管理、通信障害や緊急時への対応、情報セキュリティーなどを確認する。書類審査に加え、国のドローン情報基盤システム「DIPS2.0」の検証環境に接続し、必要な機能を備えているかを確認する試験も行われる。IDの有効期間は3年で、継続する場合には更新が必要となる。これはドローンが飛行するたびに取得する番号ではなく、UTMサービスを提供する事業者に対して付与されるIDだ。そのため、企業や自治体が認定USPのサービスを利用するために、自らUSPとしてIDを取得する制度ではない。

 では、運航者にとって何が変わるのか。認定USPを利用しない場合、運航者はDIPS2.0から飛行計画を通報する。ほかの運航者が通報した飛行計画と重複している場合はDIPS2.0から通知を受け、運航者同士で調整したうえで飛行計画を修正する。一方、認定USPのサービスを利用する場合は、運航者がUSPのシステム上で飛行計画を作成し、そこからDIPS2.0へ通報できる。USPとDIPS2.0がシステム連携しているため、同じ飛行計画をDIPS2.0に改めて入力する必要はない。

 飛行計画同士が重複しているかどうかの判定自体は、引き続きDIPS2.0が行う。重複が見つかるとUSPが利用者に通知し、ほかの認定USPや運航者との調整を行うか、利用者自身が行う調整を支援する。異なるUSPを利用している事業者同士も調整の対象になる。

 先ほどの河川点検と橋梁調査の例でいえば、これまで双方の運航者が連絡を取り合っていた調整作業の一部を、それぞれが利用するUSPが支援するイメージだ。飛行計画の通報、重複の通知、運航者間の調整、修正後の計画の通報までを一つのサービス上でつなげることで、運航者の事務負担を軽減する。

 ここで注意したいのが、「飛行計画の通報」と「飛行の許可・承認」は別の手続きであることだ。航空法上、許可・承認が必要な飛行については、従来どおり必要な手続きを行わなければならない。認定USPは国に代わって飛行を許可する事業者ではなく、認定USPを利用すればどこでも自由に飛行できるわけでもない。必要な許可・承認を受けたうえで、飛行計画の共有や他の運航者との調整を効率化する仕組みと考えると分かりやすい。

空域情報や運航記録も一元管理 日々の遠隔運航の知見を外部へ

 KDDIスマートドローンが示したUTMサービスは、事業者をまたぐ飛行計画の重複確認・調整支援、空域制限情報の可視化、運航関連データの蓄積・報告支援などを柱とする。

 空域情報では、空港周辺、緊急用務空域、人口集中地区(DID)、小型無人機等飛行禁止法に基づく区域などを地図上で確認できるようにする。ただし、表示される区域には航空法による規制だけでなく、別の法律に基づくものも含まれる。区域によって必要な手続きが異なるため、地図上の表示だけで飛行できるかどうかを判断するものではなく、飛行計画に関係する規制情報をまとめて確認するための機能となる。また、飛行計画の通報後に新たな空域制限が設定された場合には、既存の飛行計画と照合し、競合する場合に運航者へ通知することが認定USPに求められている。

 KDDIスマートドローンは、運航関連データの蓄積や、不安全事象・定期報告などへの対応も支援する。説明会では、飛行前後の点検や飛行記録をデジタルで扱い、飛行計画の作成から飛行後の記録まで、一連の運航業務を管理していく考えも示された。

 同社は2022年から、NEDOの「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」に参画し、USPの認定要件に関する研究開発や技術検証を進めてきた。JALとの資本業務提携を通じた安全・品質管理の知見も取り入れ、サービスと運用体制を構築したという。

 KDDIスマートドローンの杉田博司執行役員CTOは、東京の遠隔運航センターから全国のドローンポートを日々運航する中で蓄積した知識やノウハウを、他社にも提供していく考えを説明した。自社のドローンポート網の管理だけでなく、点検、測量、防災、物流などでドローンを活用する企業や自治体の運航を支える事業へ広げていく方針だ。

東京から北海道のドローンを遠隔運航 異常時の警告機能も実演

 説明会では、東京の会場から北海道新十津川町のドローンポートにある機体を遠隔運航するデモンストレーションも実施した。

 会場の画面には北海道新十津川町、埼玉県秩父市、大阪府池田市、石川県志賀町の拠点が表示され、そのうち新十津川町にある機体を実際に飛行させた。離陸前にはポート周辺の映像や機体の状態を確認し、飛行中はカメラ映像に加え、機体の位置や高度などを監視する。デモでは、設定した高度や飛行範囲から機体が外れそうになった場合などに、画面上で警告する機能も示した。警告機能を説明するためのデモ用設定を使用したという。

UTMSを使用し、北海道新十津川町に設置されたドローンポートを東京から運用する実演飛行を実施した。アラート機能も搭載され、安全性の高いシステムであることを強調した。

 通常の飛行は機体の自律飛行機能に任せながら、人が複数機の運航状況を俯瞰し、異常が発生した際に該当する機体へ注意を向ける。ドローンポートの設置数が増えた場合にも、一人のオペレーターが効率的に複数機を管理できる運用を目指す。なお、今回示した飛行中の監視や警告はKDDIスマートドローンが構築する運航管理システムの機能である。認定USPのID取得そのものによって、すべてのドローンや有人機をリアルタイムで検知し、自動的に衝突を回避できるようになるわけではない。

 郵便局などとの連携によって地域にドローンポートを増やし、それらを遠隔運航体制とUTMサービスで管理する。今回の説明会からは、単にドローンを各地へ配備するだけでなく、多数の機体を日常的に運航するための拠点と管理基盤を一体で整備しようとするKDDIグループの構想が見えてきた。