ドローンに対する社会的ニーズが今、顕在化しつつある。その中にあって、ドローンの高度活用を先進的にけん引する存在が、ハードとソフトの最適な統合を強みとするブルーイノベーションだ。ドローン利用が社会実装段階に進みつつある中、同社はドローン市場をどのように開拓しようと考えているのか。代表取締役社長 最高執行役員の熊田貴之氏に話を聞いた。
作業の困難さを克服する最適な組み合わせを模索
――生産年齢人口の減少や各種インフラの老朽化といった社会課題への対応策としてドローン活用が注目を集めています。この中で商機をものにするために、御社の競合他社に対する優位性はどこにあるのでしょう?
熊田 :我々は単なるドローン活用企業ではなく、“社会インフラの維持・運営を自動化するプラットフォーム企業”を目指しています。特に「インフラ点検」と「防災」の領域では、人手不足や高齢化を背景に、ドローンとAIを活用した次世代運用への転換が求められています。
例えば、ドローンでの送電線点検。一見、単純な作業に見えますが、実は気温の影響による送電線の“たわみ”や、風による送電線の揺れなど、状況が変化し続ける中で瞬時検知が必要な難しい作業です。その実現に向け、我々はソフトウェアとドローン運用の知見を基に、作業ごとの最適なセンサーの取捨選択からドローンへの実装、各種の制御用ソフト開発、ソフト間の連携のための稼働基盤の設計までを一貫して手掛け、ソリューションとして提供しています。一般的なドローンでは飛行準備に数十分を要しますが、防災用途で我々が提供するドローンポートを組み合わせたソリューションであれば、1分以内で飛行し、一刻を争う際の速やかな情報収集も可能です。
目的に応じた世界中のセンサーやドローンなどのハードと、自社開発を含めたソフトウェアを最適に組み合わせる能力の高さで、他社に一線を画していると自負しています。
社会実装にシフトするなかドローンの特性を生かすには
――今のドローン市場をどう捉えていますか。
熊田 :提供中のソリューションの使われ方から1つ確実に言えるのが、ドローン活用はもはや実証実験の段階ではありません。当社ソリューションはすでに、電力、防災、下水道など社会インフラの現場で日常運用されており、“社会実装”の段階へ本格的に移行しています。送電線点検ソリューションで言えば、すでに東京電力全支社をはじめ複数の電力会社で日常運用されており、点検業務の効率化と安全性向上に貢献しています。電力会社に限らず、多くの企業で近い将来での人手不足が危惧されていますが、その対応のみならず、長距離の送電線を従来の目視よりもはるかに効率的かつ、目が届きにくい部分まで空中から確認できる。
2026年5月には、従来は大型機でしか対応できなかった送電線点検を、従来比約73%に軽量化し、小型機での運用を可能とした小型モジュール「BEPラインmini」を発表しました。山間部や狭隘地など、これまで点検負荷の高かった現場への展開が進みます。
Flyability製の屋内点検用ドローン「ELIOS 3」を組み合わせた下水道点検ソリューションの引き合いが増えています。点検業務高度化に向けたソリューション強化を進めているところです(囲み参照)。
当社は、総務省消防庁の検討会で事務局を担い、実証実験にも参画してきました。こうした災害情報伝達ドローンの実証成果は、2026年3月に総務省消防庁の手引きへ反映されています。国家基準への反映を受け、今後は全国自治体への導入拡大が期待されています。この領域ですでに提供しているソリューションが、ドローンポートとJアラート(全国瞬時警報システム)を連動させ、避難広報と状況把握の完全自動化を支援する「BEPポート」です。
宮城県仙台市では22年10月から、千葉県一宮町では25年4月から運用が始まり、双方とも沿岸域の避難広報・状況把握に活用されています。
仙台市、千葉県一宮町での運用を通じ、災害時における“自動避難広報+状況把握”モデルとして、全国自治体への横展開も視野に入っています。
BEPポートに関しても現在、東京都立産業技術研究センターの支援と技術的協力を得ながら機能強化を進めています。「避難広報」から「被災状況の撮影」「要救助者の捜索」など、複数の災害対応を連続実行させるための「マルチミッション・連続飛行」と、複数のドローンポートを連携させ、広域エリアを分担してカバーする「複数機体による同時運用・広域連携」の2つの開発が活動の柱です。26年6月の開発完了の暁には、初動対応の自動化・同時並行化が実現し、意思決定までの時間短縮が期待されます。
パッケージの高付加価値化と高度な知見を武器に躍進
――事業拡大に向けた御社の戦略を教えてください。
熊田 :高いインテグレーション力を生かした、利用者視点での最適な技術を組み合わせたソリューション開発との基本方針に変わりはありません。特に国内ではドローン単体での提供では採用に至りにくく、容易に使いこなせるツールとしてのパッケージ化が必須です。多様なニーズへの対応という点で、関係各社と長らく築き上げてきた良好なパートナーシップは我々にとって大きな財産です。
直近の目標として掲げているのが、ドローン活用ニーズのさらなる掘り起こしと並行しての、ソリューションの高付加価値化です。保険商品やトレーニング、追加機材やソフト、マニュアルなど、必要とされるあらゆる要素とのパッケージ化を加速させます。
我々に寄せられる問い合わせはさまざまで、活用推進の戦略の策定に携わることもあれば、具体的な設定方法などの助言を行うこともあります。豊富な知見と経験を活かして、広範な要望に柔軟に応えられることも我々の強みと言えます。
23年12月の株式上場を機に、国内ドローン政策に関わる政府のヒアリングに呼ばれる機会が増え、ドローンの社会実装の進展を肌で感じています。当社ソリューションの導入現場数は数百に達し、海外からの問い合わせも増えています。ドローンは今後、“飛ばす技術”ではなく、“社会インフラを支える運用技術”へ進化していくと考えています。当社は、点検・防災・設備管理の現場で培った知見を基に、国内外で社会実装を加速させ、次世代インフラ運用の標準化を目指していきます。
技術課題への対応と作業自動化に向けた「リピートフライト」機能
ドローン点検への期待が高まる一方で課題も多い。まずは、下水道や屋内施設の中はGPSの電波が届かないことだ。必然的に手動によるドローン操縦が必要となるが、狭暗所での操縦は難度が高く、熟練パイロットの確保も困難だ。
また、点検での正確な経年比較には同一位置・角度での撮影が不可欠だが、手動ではそれらの再現性に限界があり、微細な変化を捉えにくくなり、見逃しリスクも高まる。
こうした課題解消に向け、Flyability製の屋内点検ドローン「ELIOS 3」では5月に新機能が追加された。ブルーイノベーションでは同機体を活用し、インフラ点検業務の高度化を推進している。
もっとも注目したいのが「リピートフライト機能」だ。飛行ルートや画角などをデータ化し、同様の飛行を再現する。これにより操縦者のスキルを問わず、安定した映像取得が可能になる。
熊田氏は今回の機能追加について、「人に依存していた点検業務の自動化に向けた進化」と評価する。同社ではELIOS 3をはじめとする各種機体・ソフトウェアを組み合わせながら、インフラ管理DXを推進する。
お問い合わせ先
ブルーイノベーション株式会社
https://www.blue-i.co.jp/
