ドローンレースのプロチーム「RAIDEN RACING」の運営をはじめ、点検用ドローンの開発・販売を手掛けるDRONE SPORTSは、3月31日、非GNSS環境下に対応したインフラ点検用ドローン「Rangle Pro(ラングル・プロ)」を発表した。狭隘空間における安定飛行と誰もが扱える操縦の簡易性を両立する設計により、下水道管や地下インフラなど従来点検が困難であった領域での実用性を高めた機体となっている。

非GNSS環境での安定飛行を実現するFPV×自律制御技術

写真:ライトを点灯させた「Rangle Pro」
非GNSS環境下の点検用に開発された「Rangle Pro」。直径300mmまでの管渠に対応。ラインアップには「Rangle micro」「Rangle nano」など、200㎜対応のより小型なモデルもあるが、扱いやすさを向上させたのが最大の特徴だ。

 Rangle Proは、レース用ドローンと同様に5.7GHz帯のデジタル映像伝送を採用したFPV(First Person View)機であり、飛行中であってもリアルタイムかつ高精細な映像を操縦者へ提供する。これにより粉じんや暗所など視界が制限される環境でも状況把握が容易となり、従来のアナログ映像と比較して操作精度や劣化診断の向上が期待される。

 加えて、同機の最大の特徴は独自開発の高度自律制御システムにある。屋外用のドローンはGNSSを受信し、位置情報をもとにその場に留まってホバリングすることが可能だが、同機は非GNSS環境下においても姿勢安定と高度維持を自動で行うため、操縦者がスロットル操作を行わなくてもホバリングでその場を維持できる。これにより個人差はあるものの、従来は屋内用ドローンの操縦訓練には約3~6カ月を要していたが、約3日間のトレーニングで狭所飛行のスキル習得が可能になり、点検業者等がドローン運用を内製化するにあたって、現場導入のハードルを大きく引き下げている。

 また、直径300mm程度の管渠内飛行にも対応しており、都市インフラの老朽化対策において重要となる下水道・配管内部の点検ニーズに適合する設計となっている。

サブスク事業|プランに含まれるバッテリー機材
サブスク事業|付帯サービス
「Rangle Pro」の提供は定額料金によるサービスとなっており、同社が提供する計7種の機種ごとの契約となる。プランにはトレーニング研修も含まれ、パイロットの育成サポートを受けることが可能。また、機体の損傷が発生した場合は、交換・修理サービスが付帯しているので安心だ。

Rangleシリーズの中核モデルとして位置付け

サブスク事業|Rangle Pro 機体
5m/sの耐風性能を備えており、屋内の狭小空間だけでなく、非GNSS環境下となる部分的な橋梁点検の実証にも成功している。

 機体寸法は233(W)×225(L)×88mm(H)、重量は680gと、計7機種あるRangleシリーズの中では中型クラスに位置付けられる。非GNSS環境下における飛行時間は約10分、通信可能距離は実績値で約370mとされ、エクステンダー(中継器)の導入によりさらなる延伸も想定されている。例えば、下水道におけるマンホール間の距離は一般的に75m以下とされており、長くても100m以下となる。そのため、飛行距離・通信距離ともに十分なスペックといえる。

 搭載カメラは1080p/60fpsの映像取得に対応し、上下90度のチルト機構を備えるほか、最大2400ルーメンのLED照明を搭載。暗所環境での視認性確保にも配慮されている。プロペラガードを備え、安全に被写体に近づくことができるため、ズーム機能などは軽量化の観点から搭載していない。

 通信は2.4GHz帯(操縦信号)と5.7GHz帯(映像伝送)を併用する構成であり、運用には第三級陸上特殊無線技士以上の資格および無線局の開局申請が必要となる。ただし同社では、導入時の研修プログラム内で法令対応や運用手続きのサポートが行われるので安心だ。

 DRONE SPORTSは2018年に設立され、日本初のプロドローンレースチーム「RAIDEN RACING」の運営を通じて培った高速飛行制御技術を産業用途へ展開してきた。 2020年以降はインフラ点検事業に参入し、プラント・橋梁・配管など多様な現場での実績を蓄積。機体開発から点検請負、さらには導入コンサルティングまでを一体で提供する体制を構築している。

サブスク事業|Rangleシリーズ提供機体

 同社の「Rangle」シリーズは、95gの超小型機から1.6kgの中型機まで複数ラインアップを揃え、対象構造物や作業環境に応じた最適機体の選定が可能な点が特徴である。今回のRangle Proはシリーズ7機種目にあたり、狭所対応と操作性のバランスを重視した“中核モデル”として位置付けられる。

 さらに同社は2026年2月、管渠内で最長1.6kmの連続撮影を実現した「Rangle X」も開発しており、短距離から長距離までのインフラ点検ニーズに対して包括的なソリューションを提供する体制を整えている。

 2025年以降、国内では道路陥没事故などを契機にインフラ老朽化対策の重要性が一層高まっている。従来の人手による点検では安全性・効率性の両面で課題が残る中、非GNSS環境に対応したドローンの実用化は、点検手法の高度化と省人化を同時に進める鍵となる。

 DRONE SPORTSは、機体開発・点検サービス・内製化コンサルティングを一体で提供することで、単なる機体販売にとどまらない“運用まで含めたソリューション”としてRangleシリーズの普及を進める方針だ。Rangle Proの投入は、その中でも特に需要が高い狭隘インフラ領域に対する戦略的な強化といえる。