首都高速道路、首都高技術、JDRONE、KDDIスマートドローン、NTTドコモビジネスは、狭小閉鎖空間で通信機器の使用が制限された場所でのドローンを活用した構造物点検および災害時の被害状況把握を目的として、首都高速道路八重洲線のトンネル換気ダクト内を対象に2026年2月9日、2月12日に実証実験を実施した。

写真:狭小空間に侵入するドローン

 この実証では、狭小(閉鎖)空間において飛行可能なさまざまなドローンを用いて、機体特性の把握と構造物の健全性確認、遠隔地から状況把握が可能であることを確認した。

 トンネル換気ダクトなどの狭小空間は、GPSが届かず、暗所かつ電波不感地帯であり、従来のドローンでは安定した飛行やリアルタイムな情報共有が困難であった。実証では最新の通信技術と機体に応じた飛行運用技術を組み合わせることで、構造物の健全性確認や災害時の迅速な被害状況把握にドローンが適用可能かを検証した。

実証実験当日の様子(ダイジェスト動画)(首都高速道路YouTubeチャンネル)

実証実験の概要

JDRONE対象環境に進入不可状況を想定したマンホール上からの遠隔点検
KDDIスマートドローン機能および運用面を考慮した小型ドローンでの換気ダクト内の点検比較検証
NTTドコモビジネス換気ダクト内にネットワーク環境を構築し、自律飛行ドローンを用いた遠隔地(NTTドコモビジネス社の会議室)からの点検操作およびドローン映像とガスセンサーのセンシングデータを同一プラットフォーム(intdash)で一元管理

実証実験の実施場所を示した地図、実証箇所

【各社役割】

会社名役割使用機体
首都高速道路全体総括
首都高技術安全管理
JDRONE実証実施者360°・4Kマイクロドローン
KDDIスマートドローンIBIS2・DJI AVATA 2
NTTドコモビジネスSkydio X10
使用機体の一覧

 実証の結果、狭小空間における機体選定や点検手法、遠隔地からの点検に向けて有益な検証結果を取得した。一方で、狭小空間内の粉塵による機体への影響や通信環境の構築、機体選定と機体特性に応じた操縦の熟練度が必要であることなど、今後の課題が明らかになった。今回の実証結果を踏まえ、迅速で確実な点検を行うために多様な点検手法の確立と体制構築に継続して取り組むとしている。

JDRONEによる実証実験

 災害時や特殊な環境下で点検対象箇所へ直接進入することが困難なケースを想定し、マンホール等の開口部からの安全かつ速やかな点検手法を確立することを目的に、マンホール上から延長アンテナを用いて換気ダクト内に通信環境を構築することで通信を確保し、マンホール上部から遠隔操作で飛行延長の確認や構造物の詳細点検を実施した。

【実施概要】

実施者JDRONE
日時2026年2月9日(月)13:00~17:00
場所首都高速八重洲線トンネルダクト内

【使用機体】

360°カメラマイクロドローン

写真:飛行する360°カメラマイクロドローン
寸法約140mm×約140mm×約130mm
重量約200g
最大航続時間約5分
伝送距離約100m以上(対象環境による)
防塵防水性能民間機関にて防塵防水試験を実施し、耐性について確認済み(IP62相当)


4Kカメラマイクロドローン

写真:飛行する4Kカメラマイクロドローン
寸法約120mm×120mm×H20mm
重量約97g
最大航続時間約5分
伝送距離約100m以上(対象環境による)
防塵防水性能民間機関にて防塵防水試験を実施し、耐性について確認済み


【飛行経路】

地図に示された飛行経路

【検証項目と結果】

  • ドローンの有効性
    • マンホール外からの離着陸および操縦が可能で、作業員が内部へ立ち入ることなくダクト全体の確認を実施できた。
    • ドローンによる先行確認が可能になったことで、危険が想定される空間へのアクセスにおける点検作業の安全性が向上した。
    • 360°カメラの活用により、点検時間を大幅に短縮し、効率的な点検が可能となった。
  • 飛行安定性
    • マンホールの穴(直径約60cm)も問題なく通過し、壁面接触や制御不能な状態は発生しなかった。
    • 人が操作するため飛行の安定が一定になりにくい点が課題。
  • 操作性・環境
    • 機体の組立てを必要とせず立ち上げが速い。
    • マンホール外からカメラ映像を見ながらの操縦でも問題なく操作ができた。
    • GPSが使用できない環境下でも飛行に支障はなく、地下点検の活用シーンに対応できた。
    • 操作には操縦者の技量が求められる。
  • 長距離飛行性
    • ダクト内部を一連のルートで問題なく飛行し、想定距離(片道約100m)の点検を完了できた。
    • 映像伝送も途切れにくく、マンホール外との通信が安定して維持されたため、長距離点検への実用性が確認できた。
  • 画像・映像品質
    • 全体から詳細部分までの確認が可能。
    • 4K映像により、ボルト・接続部などの詳細箇所の確認にも対応できた。
    • 操縦者の技量に影響され、映像がぶれやすい点が課題。
  • 点検の精度
    • 点検記録として映像データを保存でき、再確認・比較にも活用可能。


 これらの検証結果より、災害時や特殊な環境下で作業員が内部に進入できない場合でも、マンホール開口部などの狭所から安全かつ迅速に点検できる手法として、マイクロドローンが有効であることを確認した。短時間で運用を開始し、作業員が立ち入らずに点検できる点は、初動対応の迅速化や点検業務の省力化、安全性向上に効果的である。災害対応力の強化と安全性・効率性の向上につながる点検モデル確立に向けた重要な知見を得た一方、操縦技量への依存や映像の安定性など、運用面や技術面での課題も明らかになった。

写真:操縦者(マンホール上)、飛行状況、機体撮影映像

KDDIスマートドローンによる実証実験

 実運用に耐えうる点検品質を確保できるか把握することを目的に、機能および運用面を考慮した小型ドローンでの換気ダクト内のスクリーニング点検比較検証を行った。

【実施概要】

実施者KDDIスマートドローン
日時2026年2月9日(月)10:00~13:00
場所首都高速八重洲線トンネルダクト内

【使用機体】

IBIS2、DJI AVATA 2の外観、スペック

【飛行経路】

地図に示された飛行経路

【検証項目と結果】

  • 飛行安定性
    • IBIS2、AVATA 2ともに飛行安定性は保たれていた。
    • 照明間の暗部でも飛行中にぶれることなく安定した飛行が可能であった。
  • 操作性・環境
    • IBIS2は上下左右の細やかな微調整が行えるため一定の習熟度が求められるが、狭小空間内でも思い通りに機体を動かすことができた。防塵性能が高いため、粉塵が舞いやすいダクト内でも安定して運用が可能であった。
    • AVATA 2はIBIS2ほど細かな操作を意識せずとも安定して飛行するため、比較的容易に操縦できた。
  • 長距離飛行性
    • 通信可能距離については、IBIS2が124.3m、AVATA 2が161.9mであり、両機体ともに安定した通信距離を確保。今回のダクト内点検における必要な範囲を十分にカバーできる性能を確認した。
  • 画像・映像品質
    • 撮影した映像は目視点検の代替として適用可能。
    • リアルタイム映像も大きな乱れ等がなく、主要な変状が手元の画面上でも確認できた。
  • 点検の精度
    • トンネル内の代表的な損傷(はく落、漏水、鋼材腐食、ボルトの状況など)はドローンの映像上でも確認可能であり、目視点検の代替として十分耐えうるものであった。
    • ひび割れについても、50cmの離隔で0.25mmのひび割れまで検出できた。
IBIS2、AVATA 2それぞれの飛行状況、鋼材腐食撮影、ボルト接合部撮影
実証実験の様子
狭小空間におけるドローン点検DX化|首都高速道路八重洲線のトンネル換気ダクト内(KDDIスマートドローンチャンネル)

NTTドコモビジネスによる実証実験

 電波不感地帯、非GPS空間、暗所、狭小といった点検が困難な地下施設を対象に、自律飛行型ドローンを活用した検証を実施した。具体的には、緊急時に高技能パイロットを現地に配置できない状況を想定し、遠隔地(NTTドコモビジネス本社の会議室)からのドローン操縦の実効性検証、電波不感地帯におけるドローン操縦のためのネットワーク環境の構築、あわせて平時における構造物点検の経過観察や、発災後のドローン撮影画像との差分確認を目的としたデジタルツイン構築による検証を実施した。さらに、ドローンとIoTプラットフォームのAPI連携による情報収集に加え、四足歩行ロボット、スマートフォン、ガスセンサーなどを活用した情報収集を行い、多角的な情報収集をIoTプラットフォーム上で一元管理する総合的な点検モデルの検証を実施した。

【実施概要】

実施者NTTドコモビジネス
日時2026年2月12日(木)10:00~17:00
場所首都高速八重洲線トンネルダクト内
実証構成イメージ

① ドローン「Skydio X10」による電波不感地帯での遠隔操縦・映像配信。
② 360°カメラで撮影した映像を建設業界向けデジタルツイン生成ツール「CupixWorks」でデジタルツイン生成。
③ 小型四足歩行ロボット「Unitree Go2」のカメラ映像、搭載したガスセンサー情報配信。
④ スマートフォン搭載カメラによる俯瞰撮影映像配信。
⑤ 各種デバイス(①、③、④)配信情報を、IoTプラットフォーム「intdash」で一元管理。

【使用機体】
 電波不感地帯における遠隔操縦および映像配信に用いたドローン「Skydio X10」。

Skydio X10の外観とスペック

【飛行経路】

地図に示された飛行経路

 この実証では、電波不感地帯におけるドローン点検について、有効性や飛行安定性、操作性、映像品質および遠隔点検の有用性を検証した。

【具体的な検証結果】

  • ドローンの有効性
     遠隔操縦により熟練したパイロットが現地に行かずとも対象物の詳細を確認できた。一方、ちりやほこりが舞う環境下において、繰り返し機体が避ける挙動を確認した。
  • 飛行安定性
     夜間自律飛行オプションを活用した際に、トンネルダクト内のちりやほこりがオプション不活用時と比較して認識しやすくなるため、機体が避ける挙動をすることなどを確認した。
  • 操作性・環境
     360°全方位障害物回避により、ちりやほこりの影響が少ない場所において安全に飛行できた。
  • 画像・映像品質
     オプションを活用することで周囲が明るくなるため、変状などを確認することができた。
  • 遠隔点検の有用性
     電波不感地帯でも、ドローンポートなどを活用せずとも安全に点検飛行を実施することができた。

【実証実験の様子】

  • 換気ダクト内ドローン飛行とNTTドコモビジネス本社オフィスからダクト内の遠隔操縦
    写真:飛行するドローン、ドローンを遠隔操作する様子
  • 360°カメラでの撮影状況とデジタルツイン生成
    360°カメラで撮影する様子、デジタルツイン
  • intdash(IoTプラットフォーム)によるデータの一元管理
    intdash(IoTプラットフォーム)
Skydio X10による電波不感地帯での遠隔操縦とセンサー情報の一元管理(NTTドコモビジネス YouTubeチャンネル)