埼玉県は「埼玉県下水道管路マネジメントシステムの共同研究」を公募し、NTT東日本埼玉事業部を代表とする民間事業者で構成される共同研究体を選定した。埼玉県、埼玉県下水道公社、共同研究体を構成する6社の計8者は、2026年3月10日に共同研究協定を締結し、下水道管路維持管理の「工程一体化DXモデル」創出に向けた取り組みを開始した。

 点検・調査、解析、補修、情報管理など、下水道管路の維持管理プロセス全体を通じて各工程の先端技術を持つ各社が連携して参画することで、工程や情報をシームレスにつなぎ、一気通貫で完結する業務フローとして再設計するという、異常の早期発見と予防保全を目指す。

 下水道管路の維持管理業務は、工程ごとに専門性や実施主体が分かれており、工程や情報が構造的に分断されやすいという課題がある。さらに、下水の流況や硫化水素の発生など下水道管路内での作業は常に危険を伴うため、点検や調査に制約を受けることも多く、慢性的な人手不足の中で工程間の連携や情報共有が難しい状況にある。その結果、異常の早期発見や予防保全の妨げとなっている。

 過去に発生した下水道管路に起因する事故等を踏まえ、埼玉県と連携して課題解決に取り組み、全国の自治体に展開可能な新たな運用モデルの確立を目指す。

NTT東日本、NTT e-Drone Technology、NTTインフラネット、国際航業、染めQ テクノロジィ、日特建設のロゴ
共同研究体(民間事業者6社)
下水道管路維持管理の「工程一体化DXモデル」概要図
「工程一体化DXモデル」イメージ

 この取り組みでは、下水道管路維持管理に関する専門技術を持つ各社が技術開発・検証を行い、NTT東日本は全体統括を担う。各社が連携し、各工程で発生する下水道管路全体のマネジメントに必要な情報をデジタルで接続することで、工程を一気通貫でつなぐ工程一体化DXモデル構築に共同で取り組む。

 これにより、点検・調査の効率化や補修判断の迅速化、補修時間の短縮が進み、限られた人員で維持管理が可能となる。さらに、デジタル化や予防保全への転換、県民向けの可視化、異業種企業の横断的な課題解決などにより、社会的コストの低減や地域全体の安全・安心の向上に寄与する、自治体インフラ管理の新たな維持管理モデルとなることが期待される。

協定概要

 この取り組みは、埼玉県、埼玉県下水道公社および共同研究体による共同研究協定に基づき実施する。

名称下水道管路マネジメントシステムの共同研究に関する協定
共同研究期間2026年3月10日~2027年度末
締結者埼玉県知事 大野元裕
埼玉県下水道公社理事長 武井裕之
共同研究体(6社)
・代表企業:NTT東日本埼玉事業部長 小池哲哉
・NTT e-Drone Technology代表取締役社長 滝澤正宏
・NTTインフラネット関信越事業部長 出原克也
・国際航業代表取締役社長 藤原協
・染めQテクノロジィ代表取締役社長 菱木貞夫
・日特建設 代表取締役社長 和田康夫

【共同研究テーマ】

  • マネジメント技術開発
    下水道管路内の3D点群データ化やAIによるひび割れ・腐食等の自動検知および点検・調査、補修、情報管理をつなぐデータ連携とマネジメント手法の検討
  • 点検・調査技術開発
    ドローンを活用した安全・効率的な下水道管路内点検・調査、撮影条件の仕様化検討
  • 補修技術開発
    吹付け工法などを用いた短時間施工技術の高度化/省人化・無人化を見据えた補修方法の検討
  • 県民への見える化
    情報・3D点群・補修履歴などのデータ統合によるGIS/3D可視化手法の検討

【各社役割】

埼玉県・埼玉県下水道公社実証フィールドとなる流域下水道管路選定・提供/実証計画や安全管理に関する調整/実証結果に基づく技術評価・有効性の判断
NTT東日本研究全体の統括・調整/DXモデル設計/成果報告書作成
NTT e-Drone Technologyドローンによる下水道管路内情報取得/劣化箇所を検知するAI解析の開発
NTTインフラネット点検情報管理ツールの提供と情報連携による可視化
国際航業下水道管路3D化・GIS等を用いた情報設計/見える化画面の検討
染めQテクノロジィ特殊塗料による既設下水道管路の修復強靭化技術を用いた再生延命と短期施工/省人化・無人化補修プロセス検討
日特建設長距離圧送が可能な吹付技術を用いた補修技術の高度化検討

 今後、2026~2027年度の約2年間、実証フィールドにおいて点検・調査・解析・補修・情報管理(連携)の一連のプロセスを検証し、工程一体化の有効性を確認する。検証結果を踏まえ、実用化に向けた運用手順・情報の仕様改善および標準化を進める。また、現場適用の幅と精度を高めるため、必要に応じて連携企業・関係機関との協働を拡大するとともに、従来の維持管理手法の課題や改善点について、関係機関や現場関係者と課題認識を共有しながら意見交換を行い、この研究成果の現場適用性や維持管理業務への活用可能性を検証する。これらの取り組みを通じて、より強固で再現性の高いプロセスへ継続的にアップデートする。

 これにより、点検・調査結果が補修判断・施工・記録まで途切れなくつながり、リスク情報が関係者間で迅速に共有される、予防保全を前提とした統合的な維持管理運営への転換を目指す。県内全体への展開を見据えるとともに、他の自治体への横展開も視野に入れ、持続可能な下水道管路マネジメント(維持管理)モデルの構築を目指す。

主要技術一覧

 この共同研究で検証・活用を予定する主要技術。

点検・調査技術

点検・調査用ドローン:ELIOS 3
国土交通省「上下水道DX技術カタログ」掲載技術
提供事業者:NTT e-Drone Technology(製造:Flyability)

 閉鎖空間・暗所における安全かつ高精度な点検・調査を実現する専用ドローン。人が立ち入ることが難しい環境でも安定飛行が可能で、飛行と同時に設備の3Dデータ化を行う。

写真:ELIOS 3
写真:閉鎖空間を飛行するELIOS 3
飛行イメージ

AIによる解析・診断:eドローンAI
国土交通省「点検支援技術性能カタログ」掲載技術
提供事業者:NTT e-Drone Technology

 インフラ点検向けAI画像解析サービス。ドローンなどで撮影した構造物画像をAIが自動解析し、ひび割れやサビ等の劣化箇所を検出する。

eドローンAI

マネジメント技術

下水道スマートメンテナンスツール
国土交通省「上下水道DX技術カタログ」掲載技術
提供事業者:NTTインフラネット

 下水道管路施設の点検効率化スマートツールと、設備データ・点検データを地図上でデジタル管理するGIS(地理情報システム)で構成されるサービス。

下水道スマートメンテナンスツール概要図

補修技術

キロ・フケール工法 (長距離圧送吹付け)
提供事業者:日特建設

 1,000m級の長距離圧送を可能にする高強度吹付け補修技術。人しか入れないような狭い箇所でも吹付けによる補修が可能。

写真:導水路内で吹付け作業を行う様子
導水路内での吹付け
写真:鍾乳洞内で吹付け作業を行う様子
鍾乳洞内での吹付け

NKRN-66、コンクリ欠損部補強 066
提供事業者:染めQテクノロジィ

 コンクリートの細孔に浸透し、基材と鉄筋を同時に再生延命。水分・空気を残存させず、施工後の透水性もゼロで、耐久性を向上させる専用強靭化材料。橋梁やトンネルなど社会インフラでの実績を多数持つ。

写真:トンネル内部の補強・塗布面
トンネル内部の補強・塗布面
写真:補強施工した橋脚(海・河川部)
橋脚(海・河川部)の補強施工部

県民への見える化技術

管路3Dモデリング (管路三次元化)
提供事業者:国際航業

 下水道情報の属性を利用した管路の3次元化技術。これにGISデータ(維持管理情報を含む)、3D点群データや画像データを重ね、県民への見える化を可能とする。