DJIのドローン市場において、コンシューマー向けフラッグシップモデル「Mavic」シリーズは常に注目を集めてきた。前モデル「Mavic 3 Pro」の発売から2年、ついに真の進化を遂げた「Mavic 4 Pro」が登場した。
一部スペックでは下位機種がMavic 3 Proを上回る“ジャイアントキリング”現象も見られた中、今回のMavic 4 Proは飛行性能・カメラ・操作性のすべてを刷新。妥協のない高機能ドローンに仕上がっている。本記事ではMavic 4 Proの実機レビューを交え、その実力を3つのポイントから徹底解説する。
DJI Mavic 4 Proスペック概要 3つのポイント
① 大幅画質強化された3眼カメラ
Mavic 4 Proの最大の進化は、なんといってもHasselblad製メインカメラだ。センサーは1億画素(4/3インチセンサー、有効画素数:100MP)に進化し、6K/60fpsの動画、12288×8192pxの高解像度撮影が可能となった。実際は4Kで撮影することが多いかと思うが、クロップ(切り抜き)しても4K画質を維持できる6K撮影は、実用性と自由度の両立を可能にする。100MPの静止画は、大判印刷にも余裕で対応できる圧倒的な解像度である。
また、望遠カメラ(168mm、1/1.5インチ、f2.8)も進化。Mavic 3 Proでは望遠・中望遠カメラはD-Log M収録に対応したものの、D-Log収録には未対応だった。しかし、Mavic 4 Proでは全カメラがD-Log収録に対応することで、色調整の一貫性が大きく向上している。これまでは筆者もMavic 3 Proの中望遠や望遠カメラはちょっとしたアクセント程度に使っていたが、Mavic 4 Proの登場で使用機会が増えるだろう。
次に、筆者がカメラ性能で最も注目しているのは、ダイナミックレンジの拡大だ。Mavic 4 Pro のHasselblad製メインカメラは最大15.5ストップ、中望遠・望遠カメラでもそれぞれ14.5ストップ、13.5ストップとなっている。
一方、Mavic 3 ProのHasselblad製カメラは12.8ストップのため、最大6倍の明暗差を表現できることになる(ダイナミックレンジ1ストップの差=2倍の明暗差)。4/3インチ大型イメージセンサーも備えているので、特に低照度の環境での表現力に差が出る。ちなみに、15.5ストップというのは映画撮影などで使われる業務用カメラと同等の性能だ。
加えて、ジンバルがロール方向に360°回転する「インフィニティジンバル」を新搭載。これは、FPVドローンで撮影したような水平が傾いた臨場感ある映像や、ダッチアングルと言われる違和感や不安感を与える映像を撮影することができ、映像クリエイターの表現力を飛躍的に高めてくれる。
② 安定した飛行性能と全方位障害物検知
最大水平速度は25m/s(90km/h)へと向上し、従来モデルよりも力強く、滑らかな加速と安定性を実現。
また、安全性の面では、6つの低照度対応魚眼ビジュアルセンサーと、前方に新たに搭載されたLiDARセンサーにより、360°全方向の障害物検知が可能となった。特にLiDARは0.1ルクス(月明かり程度)でも障害物を認識でき、安全性が各段に向上している。
さらに、新型バッテリーの採用によって飛行時間が約51分に延長され、より長時間の撮影が可能になった。約51分もの飛行となると、パイロットの集中力が持たない程に長く、十分と言える。それに加え、クリエイターコンボのパッケージに同梱される240W充電器を使用すれば、3本のバッテリーを同時に約110分でフル充電できるのも魅力的だ。
③ 利便性の高い高性能新型送信機RC Pro 2も同時デビュー
Mavic 4 Proのクリエイターコンボに付属する新型送信機「RC Pro 2」は、O4+映像伝送により最大15kmのHD映像伝送を実現。高輝度7インチモニターを搭載し、視認性・操作性ともに旧RC Proを大きく上回る。旧RC Proと比較すると外観は一回り大きく、重量も50gほど重くなっている。電波状態はとても良好で、操縦者が目視で確認できる範囲で電波の乱れはなかった。
バタフライ式のモニターは開くと電源が入り、折りたたまれていたスティックが立ち上がる仕組みだ。旧RC Proではモニターが送信機本体下方に内蔵されていて少し見づらかった事に加え、小さなスティックを収納時には取り外す手間があったが、それらが解決されている。
さらに、モニターを縦に回転させれば機体のジンバルも90°回転し、画面がスマートフォンのような縦構図画面となりそのまま大きな画面で縦構図撮影も可能となる秀逸なデザインだ。
内蔵されているDJI FLYアプリにはMavic 4 Proを忠実に再現したシミュレーター機能がある。シミュレーター内では、複数の撮影環境(市街地・離島・遺跡等)が用意されている。そのほか、DJI FLYアプリそのもののインターフェイスに撮影機能(DJI FLYアプリで撮影することができる)とプレビューがついていたり、衝突・墜落した際には第三者視点で振り返り再生もできるようになっていたりするので、実際に飛ばさなくても撮影練習を重ねることができる。
また、送信機については、少し大きくなった本体とスティックが筆者にはとても操作しやすくなったように感じた。重量バランスが優れているのか、RC Pro 2は旧RC Proよりも50gほど重くなっているはずであるが、RC Pro 2のほうが旧RC Proよりも軽く感じるほどだった。個人的にはモニターの視認性・操作性ともによく、Mavic 4 Pro本体の機能性の高さにも驚いたが、RC Pro 2の完成度が高く、とても気に入って手放せない程に欠かせないものであった。
機体・送信機ハードウェアクローズアップ
次に、機体本体の注目ポイントも詳細に見ていこう。機体全体はMavic 3 Proをさらに流線型にしたような丸みを帯びたデザインとなり、サイズはひと回り大きくなっている。上方70°上向き撮影ができるカメラが機体の外側に飛び出したデザインになっている。
ロール角360°回転するカメラとジンバルは特徴的な球体デザインを採用。上部カメラがHasselblad製メインカメラ(焦点距離28mm・f2.0~11)であり、正面左側下が中望遠カメラ(焦点距離70mm・f2.8)、正面右側下が望遠カメラ(焦点距離168mm・f2.8)となっている。送信機の画面上にある選択メニューをタップするだけでレンズを変更して撮影することができるほか、デジタルズームにも対応する。
Mavic 4 Pro専用NDフィルター(ND8/ND16/ND32/ND64)も別売りで発売している。NDをソフトウェアから可変させることができる“eNDフィルター”搭載の噂もあったが、登場はまだしていない。ジンバルを見ると端子のようなものが確認できるので、eNDフィルターの登場を楽しみに待とう。
低照度対応の魚眼ビジュアルセンサーは上面3つ+下面3つの配置に変更され(Mavic 3 Proは前方2つ+後方2つ+下方2つ)障害物を360°監視するほか、新規追加されたLiDARセンサーが右アームに搭載される。Air 3SやFlipでは機体前面中央にLiDARが搭載されていたが、Mavic 4 Proでは大型のカメラが前方中央にあるため右アームに配置したものと思われる。
プロペラは大型化され丸みを帯びたデザインとなった。プロペラ先端のオレンジ色部分は軟質素材となっており、プロペラ先端が巻き起こす乱気流を軽減する。
バッテリーはこれまでのMavicシリーズと同様に機体後部から挿入するタイプ。充電ハブと240W充電器を組み合わせると3本同時充電で0→100%を110分で完了する。100W充電器を使うと1本あたり80分となることから、240W充電器がおすすめだ。
RC Pro 2 送信機の全体ビジュアル。モニターを折りたたむと自動的にスティックも折りたたまれ、かなりコンパクトに収納することができる。また、本体下部にはHDMI(フルサイズ)の出力も備えている。
