ZERO ZERO ROBOTICSが販売する「HOVERAir X1」シリーズは、AI画像認識を活用した多彩な自動撮影モードを搭載する“飛ぶカメラ”だ。2024年5月に発売された前モデルにあたる「HOVERAir X1 Smart」(以下、Smart)は、100g未満の軽量機で航空法の規制対象外のため機体登録不要という点が話題となった。

 そして2025年5月にはSmartの後継機種として、より高性能なカメラやセンサーを備えた上位モデル「HOVERAir X1 PRO」(以下、PRO)、「HOVERAir X1 PROMAX」(以下、PROMAX)が登場した。本記事では、3機種を実際に屋外で飛行させ、その性能の違いをチェックした。その模様をお届けする。

写真:ランディングパッドの上に置かれた3機
左からPROMAX、Smart、PRO。いずれもプロペラガード一体型のボディを持つ。

従来モデルのSmartから大幅に性能進化!その違いは?

【各機種のカメラ性能と重量】

機種カメラ性能重量FOV
PROMAX最大8K30fps/4800万画素192.5g107°
PRO最大4K60fps/1200万画素191.5g104°
Smart最大2.7K30fps/1200万画素99g-
写真:飛行するPROMAX(前面)
PROMAXは内蔵ストレージを64GB備え、PROは32GBを備えている(写真はPROMAX)。
写真:飛行するPRO(後ろ部分)
PROは後方センサーにより1.5m/sで飛行中でもブレーキをかけ、衝突を未然に防ぐ。一方、PROMAXの後方センサーは3m/sで飛行中でも作動(写真はPRO)。
写真:飛行するPROMAX(正面)
PROMAXは1/1.3インチCMOSセンサーのカメラを搭載する。

 HOVERAir X1シリーズの離陸は、手のひらから飛ばすことが一般的な扱い方となっており、各機種はプロペラガードを装備することで安全性に配慮した設計になっている。PROMAXとPROは、Smartに対して機体重量が約100g増加し、飛行の安定性が増す一方で、手の平からの離陸は少々扱い難くなった印象だ。ただし、離着陸場所が確保できれば、通常のドローン同様に地面から離陸すれば良い。

写真:手のひらに載せたSmart。手のひらに収まる大きさ
写真:手のひらに載せたPROMAX。Smartより一回り大きく、手のひらから少しはみ出す大きさ
Smart(左)は手のひらにちょうど収まる程度の大きさであるが、PROMAX(右)は若干はみ出るサイズとなっている。

14種類の自動撮影モードと操作性をチェック!

 自撮りや空撮を手軽に行える自動撮影モードは、HOVERAir X1シリーズ最大の特徴である。カメラを被写体に向け、機体上部にあるボタンを押せば、あらかじめ設定してある様々な撮影モードに合わせて自動的に撮影してくれる。

 Smartには被写体を追尾する「フォローモード」や周囲を旋回する「オービットモード」、広角で背景を含めて撮影する「ズームアウトモード」など、12種類の自動撮影モードが搭載されていた。

 今回登場したPROMAX、PROはそれらに加え、自転車を正確に追尾する「サイクリングフォローモード」などを追加して14種類に進化した。これにより、林道を走る自転車のような被写体も精密に追跡撮影できるようになり、迫力のある映像が楽しめる。

 また、新たに機体上部に液晶ディスプレイが搭載され、選択中の飛行モードのほか、飛行高度、飛行距離といった詳細な設定も表示されるようになり、利便性と視認性が向上している。

写真:飛行モードなどが表示された機体上部のディスプレイ部分
PROMAXとPROには液晶ディスプレイがついており、選択した飛行モードが見られるようになっている。

 筆者は2024年にSmartを購入し使用している。なかでもよく使用している飛行モードがフォローモードだ。これは離陸時にマークした被写体を追従する。Smartでも被写体をしっかり追いかけてくれていたが、PROMAX、PROでもそれは変わらず、走ったり、急に曲がったりするような挙動にも対応する。景観のいい場所を歩いているような映像を撮りたいときに重宝するモードだ。

 ズームアウトモードはSmartでは被写体との距離が最大9mだったが、PROMAX、PROでは15mと30mを選択できるようになった。その分、高度も高く取ることができるが、よほど周囲が開けている場所でないと、機体が障害物にぶつかるといったトラブルが起きるので、事前のチェックを怠らないようにしたい。

写真:飛行するSmart
Smartが飛行する様子。軽量なドローンのため、航空法に該当しないという利点があるものの、屋外では風にやや影響される。多少の風であれば、映像はブレることなく録画できる。

ビーコン&ジョイスティックでマニュアル操縦が快適に!

 PROMAX、PROの発売に合わせて新たに登場した周辺機器「BEACON & JOYSTICK」は、機体の無線通信を安定化させるビーコンと、直感的な操縦を可能にするジョイスティックのセットである。自転車やリュックなどに搭載したビーコンの電波を頼りに、より精密な飛行が可能になる。

  • ビーコンは機体と無線接続し、ユーザーが携帯することで精密な位置情報を提供。機体がビーコンの信号を頼りに飛行する。
  • ジョイスティックは1個接続でモーションコントローラー(手首の動きで操縦)、2個接続で通常のドローン用プロポスタイルとなり、より細かなマニュアル操縦が可能。
写真:ビーコンにジョイスティック2つを接続した様子。ビーコンのディスプレイにはカメラからの映像が映っている
ビーコン&ジョイスティック。ビーコンのディスプレイは1.78インチだが、十分に映像を確認できる。

 ジョイスティックは2個準備されている。1個をビーコンに接続するとモーションコントローラーとなり、片手を使い直感的な機体の操縦が可能になる。2個を取り付けると、一般的なドローンのプロポのスタイルとなり、マニュアル操縦により空撮を楽しむことができるようになるのだ。ビーコンには液晶ディスプレイが搭載されており、リアルタイムで機体から送られてくる映像を確認しながら操縦できる。

写真:プロポスタイルのビーコン&ジョイスティックを両手で持つ様子
プロポスタイルで構えた状態。指でスティックをしっかりホールドできる。
写真:スマートフォンの表示画面
スマートフォンを接続し、プロポのモニターとして使用したときの画面。離陸地点からの距離や撮影に関する情報などが表示される。

 特筆すべきはビーコン&ジョイスティックがSmartにも対応していることだ。これまでSmartでもマニュアル操縦には対応していたものの、HOVERAir X1アプリ上で操作していた。しかもキー配列が一般的なプロポとは異なっており、マニュアル操縦については、「オマケ」のようなところがあった。ところがビーコン&ジョイスティックにより細かな空撮ができるようなったことで、Smartが活躍できる範囲が広がったといえる。

 操作方法は以下の通り。接続はPROMAX、PRO、Smartとも共通だ。

1. 機体とビーコンを接続する。
2. Type-Cケーブルでビーコンとスマートフォンを接続。
3. HOVERAir X1アプリを起動し、マニュアル操作を選択。

 これでスマートフォン上にカメラ映像が映り、マニュアル操縦が可能になる。

 筆者も実際にビーコン&ジョイスティックを用いた操縦を試した。モーションコントローラーでは、手首を前後左右に倒す・ひねることで、前進・後進・左右平行移動など直感的に機体を操作できる。手首を倒した量に応じてスピードが増す仕組みとなっており、初めは思った以上に出るスピードに驚かされた。手首を前後に倒し、左右にひねり、さらには高度変化のために右手の親指を倒し……と操縦するのは慣れが必要と感じた。とはいえ、直感的に機体を動かす飛ばし方は、ドローンの楽しみ方を広げてくれるに違いない。

写真:右手でモーションコントローラー状態のビーコン&ジョイスティックを持つ様子
モーションコントローラーの状態。右手人差し指が当たるところにあるボタンを押しながらでなければ、腕をひねる動作の指示は機体に送られない仕組み。

 プロポスタイルでの操縦では、スロットル、ラダー、エルロン、エレベーターを使用し、非常に素直な操作感で機体が反応した。スティックの長さは2種類から選べ、自分のスタイルに合ったセッティングが可能である。

 PROMAX、PROはスティックを「逆ハの字」にいれプロペラを離陸しない程度に回転させるアーミングに対応しているので、アーミングからスロットル上昇の順で離陸させる。Smartはアーミングができないので、機体のボタンを押して離陸させるといった違いがある。

 また、伝送距離についてはPROMAXとPROが最大500m、Smartが最大50mとされているが、筆者が使用したドローンスクールの練習場では他機種の干渉もあり、接続が不安定になる場面もあった。飛行前には必ず周辺のドローンの有無や電波状況を確認しておきたい。

 PROMAX、PROについては、あらかじめ設定した高度に到達したうえで離陸地点に戻るRTH(リターントゥホーム)機能が搭載されているので、飛行前に適切な設定がされているか、確認が必要だ。

 モーションコントローラーによる片手操縦や、従来型プロポスタイルでの両手操縦が可能で、ユーザーのスキルに合わせた操作が楽しめる。

PROMAX、PROの注意点!目視外飛行に該当するケースもあり、特定飛行の承認が必要

 最後に、PROMAX、PROにおける特定飛行と許可承認について解説したい。PROMAX、PROでビーコン&ジョイスティックを使用してモニターを見ながら飛行させる行為や、フォローモードなどを使用して機体を肉眼で目視しない行為は、航空法で定められた特定飛行のうちの「目視外飛行」に該当する。PROMAX、PROについては100g以上の機体となることから、これらの行為を行う場合、目視外飛行の承認を得なくてはならない。違反した場合、最大50万円以下の罰金を受けることになる。また、機体登録はもちろんのこと、リモートIDの設定、飛行日誌の準備、飛行計画の通報も必須だ。

 手軽に映える映像が撮影できるHOVERAir X1シリーズ。より高性能な機体の登場は撮影や映像のクオリティ向上につながるが、一方で適法に飛行させる義務も発生する。この点を理解して撮影や操縦を楽しもう。