2025年11月6日、愛媛県今治市は、斎藤クリニックとイームズロボティクスが南海トラフ地震を想定したドローンによる医療品輸送の実証実験を実施したと発表した。

 同市が国家戦略特区の一環で設置している「近未来技術実証ワンストップセンター」による支援のもと、来島海峡上空の片道約4kmを約10分で結び、災害時における島しょ部への医療支援の即応性を検証した。

写真:海の見える場所に設置されたドローン

 実証実験は、南海トラフ地震の発生により、しまなみ海道沿線の島しょ部と今治市内を結ぶ来島海峡大橋が通行できなくなる事態を想定し、医療物資を迅速かつ安全に輸送する手段を確立する目的で実施した。災害時の孤立を最小化し、医療を空のルートでつなぐ実践的な検証となる。

 10月28日、今治市の砂場スポーツ公園から、大島の海宿千年松キャンプ場まで、来島海峡上空を片道約4kmで結ぶルートを高度100m、速度10m/sで飛行。輸送重量は約1kg、輸送時間は約10分となった。主催は今治市の斎藤クリニック、技術実施はイームズロボティクスが担った。

写真:飛行するドローン、ドローンを見守る様子
来島海峡を越え、大島の着陸地点上空に到達したドローン

【実験概要】

日時2025年10月28日(火)14:30飛行開始
区間砂場スポーツ公園(今治市)→ 海宿千年松キャンプ場(大島)
飛行来島海峡上空 片道約4km/高度100m/速度10m/s/所要約10分
輸送物資注射器、輸血セット(ダミー)など合計約1kg
機体イームズロボティクス「UAV-E6106FLMP2」(最大離陸重量14kg)
飛行ルート
今回の実証実験の飛行ルートイメージ(国土地理院地図をもとに今治市が作成)

 実証実験では、飛行中の機体の安定性、気象・風況に応じた運用判断、通信品質、離着陸の安全管理、医療品パッケージの固定と受け渡し手順などを総合的に検証した。

 当日は、(1)発進地点、(2)海上(船上)、(3)着陸地点にオペレーターを1人ずつ配置し、目視での安全監視のもと自動飛行で来島海峡上空を縦断した。操縦ライセンスを持つ斎藤クリニックの齋藤早智子院長が着陸地点のオペレーターを務め、船上のオペレーターからドローンの操縦権を譲り受けると、着陸地点にドローンを誘導し、着地させた。配送用パッケージから注射器や輸血セットなどの医療品を取り出し、輸送を完了した。

 飛行時間は約10分と、陸上輸送よりも短時間で島しょ部へ物資を輸送できたことから、多くの有人島がある今治市において空の輸送が有効であることを確認した。

輸送物資と齋藤院長

 今治市は2015年に指定を受けた国家戦略特区の枠組みを活用し、2021年に近未来技術実証ワンストップセンターを設置。自動運転・ドローン・AI/IoT分野の実証実験に際して、実験フィールドの手配、関係機関との調整、地域への周知、事務手続きなどをワンストップで支援している。さらに、実証実験に係る費用の補助制度(上限50万円、補助率1/2以内)を用意し、実証実験を積極的に誘致しており、ドローンの飛行実験やIoTを活用した実証実験などを支援している。

 今治市は、今後もさまざまな分野でのドローンの活用やその他の近未来技術の実証実験を推進し、全国展開が可能なモデルの構築を目指すとしている。

「近未来技術実証ワンストップセンター」の支援概要