エアロネクストとNEXT DELIVERYは、2025年11月4日、和歌山市でDIDを含むルートでのレベル3.5飛行の運航体制の構築と、ドローンを活用した買い物支援や地域経済活性化を目的に実証実験を実施した。都市部からのドローンによる定常配送モデルの確立に向けたもので、ドローン配送の社会実装を後押しする。

写真:病院上空を飛行するドローン
DID地区にある宇都宮病院からドローンが弁当を配送する様子(宇都宮病院付近)

 レベル3.5飛行とは、無人地帯の目視外飛行において、搭載カメラで歩行者等の有無を確認することや、操縦ライセンスの保有、保険加入などの条件を満たした場合、立入管理措置が緩和される飛行方法。ドローンの運用コスト削減と業務効率化につながることから、ドローン配送の事業化が進むことが期待される。

 航空局標準マニュアルでは「人又は家屋が密集している地域の上空では飛行させない」ことを要件としていたため、同マニュアルを使用したDID地区でのレベル3.5飛行は実施できなかった。しかし、10月29日に同マニュアルが改正されたことで上述の記載がなくなり、適切な安全対策を講じることでDID地区でのレベル3.5飛行が可能となった。

なるコミの前での記念撮影
(左から)宇都宮病院 副理事長 宇都宮越子氏、宇都宮病院 理事長 院長 宇都宮宗久氏、和歌山市長 尾花正啓氏、参議院議員 ドローン議連会長代理 鶴保庸介氏、国土交通省航空局 安全部無人航空機安全課長 江口真氏、経済産業省製造産業局 次世代空モビリティ政策室長 古市茂氏、エアロネクスト代表取締役社長 グループCEO/NEXT DELIVERY 代表取締役 田路圭輔氏
写真:駐車スペースでスタンバイするドローン
離陸前の物流専用ドローン(中央)と、監視カメラや警報機能を持つ安全措置であるドローンスタンド(写真右端)
写真:上空から捉えた街の様子
DID地区上空を飛行するドローンのカメラ(FPV)からの映像(宇都宮病院付近)
DIDにおけるレベル3.5飛行のインパクト

 両社は今回の取り組みにより、都市近郊におけるドローン物流の現実的な社会実装モデルを構築し、全国自治体の共通課題(買い物弱者問題、物流停滞)の解決につながる標準モデルとしたい考えだ。また、宇都宮病院を起点としたドローン配送網を構築することで、将来的には食料支援から往診時の医薬品や検体・血液・処方薬の迅速輸送へと展開し、地域医療のラストワンマイル問題を解決するフェーズフリーな社会基盤を目指す。

 なお、この実証実験は、令和7(2025)年度 和歌山市スマートシティ実証実験サポート事業にNEXT DELIVERYが採択されたことを受け実施するものとなる。

実証実験の概要

 和歌山市郊外ではスーパーの撤退により買い物弱者が増加している。山間部にある道の駅では、宇都宮病院で作った薬膳弁当を販売しているが、人手不足により配送が滞っていた。ドローンによる定期配送で弁当を安定供給することで、買い物弱者への支援と地域経済の活性化につなげる。

 DID地区と山間地域を結ぶドローン飛行ルートを構築し、それを活用した配送の仕組みを作ることで、省人化・配送の効率化を実現し、人手不足の解消、販売機会の損失の防止、買い物弱者支援と地域経済の活性化を図る。将来的には、食品配送で確立したモデルの医療分野への応用を目指す。

実施内容

 DIDから離着陸を含むレベル3.5の運航を行い、実用段階に近い形でドローン物流の導入と検証を目指す。

 和歌山市内の宇都宮病院(DID内)から「道の駅 四季の郷公園 FOOD HUNTER PARK」へ宇都宮病院が作る地元食材を使った薬膳弁当を配送する。飛行距離は片道約4.3km、飛行時間は約10分。DIDはルート上の250mの区間となる。機体はエアロネクストが開発した物流専用ドローン「AirTruck」を使用する。宇都宮病院調理施設内よりリモートパイロットが自動遠隔運航を行い、公園の駐車場に置き配し、宇都宮病院へ帰還する。

写真:地図に示された飛行ルート
今回DIDレベル3.5で飛行したルート(Google EarthをもとにNEXT DELIVERYが作成)
写真:ドローンスタンド
カメラによる遠隔監視とドローンの離陸、着陸を知らせるアナウンス機能をもつエアロネクストのドローンスタンド(宇都宮病院駐車場内設置)