2025年7月15日、Terra Drone(以下、テラドローン)は、アンゴラ共和国の総合エネルギー企業Azule Energy(以下、アズール・エナジー)が運用する同国沖合のFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)で、ドローンによる原油貯蔵タンクの非破壊検査を実施したことを発表した。この検査は、オランダに拠点を置くテラドローン子会社のTerra Inspectioneeringを通じて実施したもので、自社開発の「Terra UTドローン」を活用した。
FPSOでは、原油・ガスを安定的かつ継続的に生産するため、定期的な保守点検・検査を実施している。一方、船上では限られた人員体制で、生産作業と並行して検査を行う必要があり、安全かつ効率的な手段が求められている。
従来の手法は、作業員が高所や閉鎖空間に立ち入るため、安全上の課題があった。また、点検時には設備を一時的に完全停止する必要があり、生産性を低下させていた。
人手による作業をドローンに置き換え検査を実施することで、1基のタンクを点検するために必要な乗船者数を従来比でおよそ8割削減し、作業効率および生産性が向上。点検期間も約半分に短縮し、設備の稼働停止時間を最小限に抑えることができた。
実施内容
アンゴラ沖合に設置されたFPSOにおいて、Terra UTドローンを活用した船体内部の目視点検および超音波による板厚計測を実施した。
1. 目視点検
はじめに、Terra UTドローンに搭載した高解像度カメラによる目視点検を行い、表面や構造を近距離で視覚的に検査した。ドローンに搭載した拡大鏡や内視鏡を活用し、タンク内部の表面に亀裂や腐食などの欠陥がないかどうかを確認した。
2. 超音波による板厚計測
次に、目視点検で確認した欠陥箇所を中心に板厚計測を実施。UTドローンに搭載した超音波センサーから発する音波の反射波を解析し、鉄製タンクの内壁の腐食状況や浸食の状況を検出した。超音波点検では、原油貯蔵タンクの内壁の固着した不純物や油分を測定前にブラシで清掃し、測定面を平滑に整える。検査用ジェルを塗布し、センサーをタンク内壁に接触させて測定を行う。同様の作業を複数箇所で繰り返すことで、広範囲にわたる内壁の状態を把握することができる。目視点検とは異なり、正確にセンサーをタンク内壁に複数回接触させる必要があるため、ドローンによる点検は難易度が高いとされている。
今回の検査では、作業員の訓練、測定機器のいずれも国際的な安全・品質基準であるABSクラス認定を満たした体制で充当した。
近年、地政学的リスクや空路物流の制限により海上輸送の重要性が高まっており、それに伴い造船需要が拡大している。エネルギー輸送の要であるFPSOの市場規模も増加傾向にあり(※1)、設備の点検・保守の重要性が高まっている。
テラドローンは、2027年夏までアズール・エナジーとの連携を継続し、同社が運用するFPSOの原油貯蔵タンクや各種設備の点検を担う。
