愛知県「空と道がつながる愛知モデル2030」 、2025年度の事業概要と物流ドローン長期事業化調査を決定

　2025年7月1日、愛知県は、あいちモビリティイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」 について、2025年度の事業概要と新城市・西尾市で実施するドローンを活用した物流サービスの長期事業化調査を決定したことを発表した。西尾市では、国土交通省「スマートアイランド推進実証調査業務」を活用し、ドローンと自動運転車によるラストワンマイル配送を行い、離島地域の課題解決を図る。

　同県は2023年度から「あいちモビリティイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」」に取り組んでいる。同プロジェクトでは、ドローンや空飛ぶクルマ等の次世代「空」モビリティの社会実装の早期化を図るとともに、自動運転車等の「陸」モビリティとの同時制御により創出される新しいモビリティ社会「愛知モデル」の構築や、次世代「空」モビリティの基幹産業化を目指している。

　2024年2月に策定した「推進プラン」に基づき、物流、人流、災害対応の各分野で2026年度頃をめどに、早期の社会実装を目指す「ローンチモデル」の実現や、次世代「空」モビリティのサプライチェーン構築に向けた取り組みを実施する。

プロジェクトの目指す姿とローンチモデル

2025年度の事業概要

柱1：需要の創出に向けた取り組み

　各分野におけるローンチモデルの実現に向けた取り組みを実施する。

柱2：「供給力の強化」に向けた取り組み

　愛知県の自動車産業・航空宇宙産業を生かしながら、「令和の殖産興業」の実現のため、産業拠点としての機能強化に向けた取り組みを実施する。

※1 MRO：Maintenance Repair and Operations。定期的な保守、故障時の迅速な修理、そして生産プロセスの効率的な運用に関連する活動全般。

柱1・2 共通の取り組み

ドローンを活用した物流サービスの長期事業化調査

　2024年度の調査結果で抽出された課題（ドローンの機体性能による配送重量の制限、着陸後の荷受への配送方法、料金徴収）の解決を行い、ローンチモデルの実現に向けた調査を実施する。

　新城市ではトラックで荷物の集約拠点まで配送し、ドローンにより無人化・小口化したラストワンマイル配送を行う。

　西尾市ではスマートアイランド推進実証調査業務（国土交通省予算事業）を活用して、ドローンと自動運転車によるラストワンマイル配送を実施する。

（1）山間地における複数目的地への配送（新城市 鳳来または作手地区）※ 現時点での予定

　配送効率の良い地域はトラック配送、配送非効率地域はドローン配送を実施（新スマート物流（※2）を展開）することで、物流全体の効率化・運用効率の向上を図る。また、ドローンに置き配機能を搭載することで、荷受の負担軽減を検証する。

※2 新スマート物流：トラックによる陸送とドローン配送をベストミックスさせた効率的なラストワンマイル配送を実施することで、物流全体の最適化を目指す考え方。配送効率の良い地域ではトラック、配送非効率な地域ではドローンによって配送する。現在は山梨県小菅村を始め、全国9地域で展開されている。

実施予定時期	2025年10月頃
検証項目	・陸送と空輸の組み合わせによる運用効率を検証 ・地元事業者との連携による地域配送の持続可能性を検証 ・遠隔からのドローン自動運航による省人化を検証 ・ドローンに搭載した置き配機能による省人化を検証

検証イメージ

【使用予定機体】

Prodrone「PD4B-M-AN」

• 機体サイズ：1,300mm×1,300mmm
• 推奨積載重量：3kg
• 置き配可能な機構を搭載予定。無人での着陸オペレーションの運用を目指す。

Prodrone「PD6B-CAT3」

• 機体サイズ：約2.2m×2.4m×0.7m
• 最大積載重量：約18kg
• 第一種型式認証申請機体

【実施事業者と各社役割】

NEXT DELIVERY	プロジェクトの統括、機体運航等
Prodrone	機体提供等
セイノーホールディングス	関係者調整
新城市	地元調整

（2）本土離島間の多頻度配送（西尾市 一色漁港～佐久島）※ 現時点での予定

　企業向けの定期配送に加え、オンデマンドによる個人向けの配送を組み合わせることで、飛行回数の安定化と島民への新たなサービス確立を目指す。また、自動運転車（スマートアイランド推進実証調査業務（※3））と連携することで無人化されたラストワンマイル配送を検証する。

※3 2025年度スマートアイランド推進実証調査業務：ICTなどの新技術を活用し、離島が抱える課題の解決を図る国土交通省の公募事業。Prodroneを始めとした6者で申請を行い、2025年5月に採択を受けた。

実施予定時期	2025年11月頃
検証項目	・個人向けの配送の実施による飛行回数増加・運用効率を検証 ・自動運転車との連携による運用効率を検証 ・遠隔からのドローン自動運航による省人化を検証 ・第一種型式認証（取得予定）機体を活用し、レベル4飛行（※4）とレベル3.5飛行（※5）の運航費用を比較検証

※4 レベル4飛行：有人地帯における補助者なし目視外飛行。一等の操縦ライセンスを保有する者が、第一種の認証を受けた機体を使用し、飛行の許可・承認を受けることで、飛行が可能となる。

※5 レベル3.5飛行：無人地帯における目視外飛行（レベル3飛行）で必要となる立入管理措置（監視員の配置や看板の配置等）について、操縦ライセンスの保有、保険への加入、機上カメラによる歩行者等の有無の確認を条件として、立入監視措置を不要とする飛行形態。省人化オペレーションにより道路等の横断が可能になり、ドローンの産業活用の促進が期待される。

検証イメージ

【使用予定機体】

Prodrone「PD6B-CAT3」

Prodrone「PD6B-Type3」

• 本格配送用機体
• 機体サイズ：2,169mm×2,387mm
• 推奨積載重量：20kg
• 長野県伊那市の配送事業で活用されている機体

【実施事業者と各社役割】

Prodrone	プロジェクトの統括、機体提供等
名古屋鉄道	関係者調整、運航等
日本航空	安全管理、運航等
西尾市	地元調整

あいちモビリティイノベーションプロジェクト「空と道がつながる愛知モデル2030」

　愛知県は、社会課題の解決と地域の活性化を図る官民連携プロジェクトの創出を目指す「革新事業創造戦略」（2022年12月策定）を推進。同戦略の枠組みによる第1号の革新プロジェクトとして、「空と道がつながる愛知モデル2030」（提案者：Prodrone）を採択し、2023年5月に「あいちモビリティイノベーションプロジェクト」を立ち上げた。2024年2月には、プロジェクトが目指す姿や取り組みの柱、ロードマップを示した「推進プラン」を策定。このプランに基づいて、2030年度頃を目標に、次世代モビリティの「需要の創出」「供給力の強化」という2つの柱に沿って、需要と供給が相互に好循環することを目指す。革新的ビジネスモデルを生み出し、そのモデルを国内外へ横展開することで、次世代モビリティの需要を拡大させる。その需要を愛知県に取り込み、産業拠点としての機能を強化させる好循環を創出することで、「空と道がつながる」新しいモビリティ社会「愛知モデル」、次世代モビリティ産業の基幹産業化（「令和の殖産興業」）を実現する。

【参加企業】

• Prodrone（提案者）
• ジェイテクト
• 名古屋鉄道
• SkyDrive
• テラ・ラボ
• VFR

「第4回ドローンサミット」開催概要

　ドローンや空飛ぶクルマに関する、自治体の取り組みの情報発信や自治体間の連携強化を通じて、早期の社会実装につなげることを目的として、国と自治体が連携して2022年から開催しているイベント。2022年は兵庫県、2023年は長崎県、2024年は北海道で開催され、今年で4回目となる。

　第4回ドローンサミットでは、自動車や航空宇宙といった産業の集積地である愛知県の特徴を生かし、次世代「空」モビリティの普及促進を図るだけでなく、県産業との共創による産業化に向けた新たな取り組みを発信していく。