2025年4月30日、アイ・ロボティクスは、GPSに依存せず屋内外でドローンをセンチメートル単位で誘導・制御し、ドローンや周辺機器からリアルタイムに取得したデータを即座に3D点群およびデジタルツインに生成する新技術を開発したと発表した。

 施設管理では、機械化・遠隔化・自動化・AI活用によるDXへの対応が進んでいる。BIM/CIMをはじめ、効率的で高度な生産・運営・管理への対応が求められている。

 今回開発した新技術は、ドローンに加え、施設内に設置されたカメラやセンサー、既存設備などを活用し、施設とドローンが相互に高精度で位置を把握し合い、誘導を行う仕組みに基づいている。今後、GPSなどが届かない屋内環境や、屋外から屋内へ移行するトンネルなどの複雑な空間においても、シームレスにドローンを自動飛行させる技術へ発展させる予定だ。

 複数のドローンを同時に一括制御することも容易で、これまで困難であった大規模施設内での複数機運用を実現する。また、機体制御を一部外部化したことでドローン本体を小型・軽量化。商業施設や倉庫などの屋内空間でも実用的に運用できる。

 同技術は、高精度の位置測位と高速リアルタイム通信を両立しながら、飛行中に周辺環境の3次元点群データを取得し、その場で高解像度のデジタルツインを生成できることが大きな特長であり、施設内の空間変化を即座に把握し、飛行経路への即時反映や設備点検・施設管理・記録業務の高度化・効率化を実現する。

写真:肩越しに見えるPC画面に映った3次元点群データ

 従来の自律飛行型ドローンは、自機に搭載したGPSや障害物センサーを用いて自らの位置を推定し飛行制御を行うのが一般的であった。多様な機器を機体に搭載するためドローンが大型化し、センサー誤差による位置ずれや誤作動のリスクがあった。

 同技術では、施設側に配置したシステムが機体の位置を高頻度・高精度で検出し、高速通信を介してリアルタイムに機体を誘導・制御。外部の制御コンピューターが常にドローンの現在位置を監視し、設定された飛行ルートとの差異を即時に補正することで、常に所定の位置・姿勢を保った精密な飛行や複数機体の同時制御といった高度な運用が可能となる。

 この外部誘導は極めて高速に行われるため、機体の挙動に遅れることなく追従が可能。ドローン側の処理負荷を大幅に軽減することで、センチメートル単位の高精度で安定した飛行を実現した。大型の計測機器を積む必要がないため機体を小型・軽量化でき、狭い室内空間でも安全に運用することが可能だ。

飛行するドローン

 一般的な屋外用ドローンは、衛星からのGPS信号やそれを補正するRTK電波に頼って自動飛行する。しかしGPSは屋内での受信が難しく、トンネルや工場・倉庫など広い屋内空間では数メートル単位で誤差が生じる場合がある。そのため、複雑な構造物周辺での精密な自律飛行は困難であった。

 同技術は、GPSに依存せず施設内に設置した測位システムによってドローンの位置を常時センチメートル単位で把握・制御するため、生産ラインが稼働する工場内部や、大型倉庫の棚の間、建設現場の狭小空間、トンネル内部などでも正確に飛行。障害物が多い空間での飛行や、人が立ち入れない危険区域での自律点検飛行などにも活用が可能だ。

 今後は、屋外環境でも安定的に稼働し、屋内外の移動を連続して行えることを目標とする。具体的には、必要に応じて制御モードを自動的にGPS利用へ切り替える機能を実装し、例えば倉庫の内部から屋外を経由して隣接する別棟内部へ移動するような、連続的で複雑な任務においても、位置情報の断絶やオペレーターの介入なしにドローンが自律飛行を継続できるサービスの提供を目指すとしている。

写真:PCモニターに映る3D空間