2025年3月21日、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)新潟支社、第一建設工業、エアロセンスの3社は、VTOL型ドローンの自動飛行機能を活用した鉄道設備確認の実証実験を、2024年3月に磐越西線で実施したことを発表した。

 この点検手法を活用することで、災害発生時には鉄道設備の被災状況を迅速に把握することが可能になるほか、確認者の安全性向上・負担軽減が期待できる。

 災害発生から迅速に飛行できる体制の確立や、他の線区での運用に向けた飛行計画の策定について検討を進め、点検業務のDX推進を目指す。

試験概要

 災害発生時における鉄道設備の迅速な確認を目的に、VTOL型ドローン自動飛行機能を活用した実証実験を実施した。現在は徒歩や軌道用カートを使って人が直接現地を確認しているが、ドローンを活用することで迅速に広範囲の状況把握が可能となる。また、飛行画像から生成した点群データにより構造物の寸法計測などを行うことで、早期復旧計画策定と確認者の安全確保が期待できる。

現在の確認方法、実証試験での確認方法の説明図
実証実験の概要図
※ドローン位置情報の画像はGoogle Mapを利用

使用機体

VTOL型ドローンの機体外観、スペック
VTOL型ドローンの離陸から飛行、着陸までの説明図
VTOL型ドローンは、マルチコプターモードで垂直に離着陸し、固定翼モードで水平に飛行する。水平飛行中は大幅に電力を抑え、長距離飛行が可能。

試験内容と結果

 試験は、2024年3月の日中時間帯、磐越西線喜多方駅から馬下駅間の約75km区間で実施。離陸から着陸まで事前に設定した経路を、最高速度時100km/hで自動飛行した。上空から撮影した画像データなどから、迅速な被災状況の把握が可能であることを確認した。

飛行時のデータ収集・活用

 位置情報とライブ映像を現地から遠く離れた場所へウェブ配信することで、被災状況の一次調査に必要な被災有無の確認を速やかに実施可能であることを確認した。

飛行後のデータ収集・活用

 飛行後にはオルソ画像の生成や、デジタルツインソフトウェア「TRANCITY」を用いて連続画像から点群データを生成し、寸法の確認や、より詳細な被災状況把握が可能であることを確認した。このデータを活用した復旧計画の策定や、専門技術者による現地詳細調査の実施を想定している。

飛行区間:磐越西線 喜多方駅~馬下駅間、総延長約75km(6区間に分割・往復40km程度で設定)

 今後3社は、2025年度内のJR東日本へのVTOL型ドローンの実装と、より広範囲での適用の検討や飛行計画の事前策定を進めるとしている。