2025年3月14日、Liberaware(以下、リベラウェア)、CalTa、KDDIスマートドローンは、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)、東海旅客鉄道(以下、JR東海)、西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)、九州旅客鉄道(以下、JR九州)、西武鉄道(以下、西武鉄道)とそれぞれ協定を締結したことを発表した。

 リベラウェアは、「鉄道環境に対応したドローンを用いた鉄道点検ソリューション」(以下、Project SPARROW)において、ドローン・運航管理システム・デジタルツインを活用した鉄道施設の維持管理に関する技術検証を進めてきた。

 スタートアップ3社の革新的技術と、鉄道事業者それぞれがもつ鉄道関連の知見・ノウハウ・実証フィールドを合わせることで、「鉄道環境に対応したドローンを用いた鉄道点検ソリューション」の実現に向けた開発を加速させる。

 鉄道現場における巡視や各種点検、災害時の施設確認を可能にする自律型ドローンと、収集した情報を閲覧・分析するデジタルツインプラットフォームを開発し、鉄道インフラ点検の安全性と生産性を向上し、将来にわたり鉄道の安全・安定輸送を確保する。

これまでのProject SPARROWの取り組み

 鉄道業界では、保有アセットの平均経年が50年を超え、全体的な老朽化が進行している。また、近年激甚化・頻発化する自然災害による設備への被害増加も課題となっている。一方、生産年齢人口の減少により、より効率的な現地把握が求められており、鉄道各社はドローン技術の保守への活用を検討している。

 鉄道現場は「触車」「感電」「墜落」など多くの労働災害リスクを有しており、従事者の安全確保が重要な課題である。加えて、災害発生時には、二次災害のリスクを回避しながら、迅速な被災状況の把握と早期の運転再開が求められる。
 鉄道は路線延長が長く、鉄道施設へのアクセスに時間を要する箇所が多いことから、ドローンを活用した点検調査が有効と考えられる。このプロジェクトでは、鉄道特有の環境に対応するため、列車回避機能や周辺環境を考慮した機能を備えたドローンを開発している。同時に、ドローン運航管理システムと連携したデジタルツインを開発し、これらを組み合わせた包括的な点検ソリューションの現場投入を目指している。

 プロジェクトは「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIR)」の「安全・安心な公共交通等の実現に向けた技術の開発・実証」分野のテーマ「鉄道施設の維持管理の効率化・省力化に資する技術開発・実証」(補助金交付決定額:52億円)をもとに実施しているプロジェクトで、2024年2月2日に採択された。

「Project SPARROW」コンセプトムービー

連携内容

 スタートアップ3社は、鉄道現場における巡視をはじめとするさまざまな点検や災害時の施設の確認ができる自律型ドローンと、収集した情報を閲覧・分析できるデジタルツインプラットフォームを開発し、鉄道インフラ点検の安全性と生産性の向上を目指す。

【連携内容】

  • 鉄道事業者から鉄道関連の課題、知見、ノウハウの共有
  • 鉄道事業者から実証フィールドの提供

今後の取り組み

 Project SPARROWの推進により、点検業務における高所作業や夜間作業の減少や、輸送障害対応の迅速化、データの蓄積による設備管理の高度化などが期待される。特に、人口減少が深刻な地方において、当該ソリューションは大きな効果を発揮する。さらに、災害発生時にドローンが現地でデータ収集することで、復旧時間を短縮し、対応力を強化する。これにより、強靭(レジリエンス)なインフラの構築を目指す。

 今後、スタートアップと鉄道各社との連携を通じて、Project SPARROWの実現に向けた課題を抽出し、さまざまな課題の解決に向けて関係各所との調整を進めるとしている。

<Project SPARROWのスキーム>

Project SPARROWの概要図
※スタートアップ3社と各鉄道事業者との間で、それぞれ業務提携協定を締結している