2025年11月7日、国土交通省は、「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」の提言を取りまとめ、その内容を公表した。

 国内の物流は、いわゆる「2024年問題」等に伴い、トラックドライバーが不足しており今後も深刻化することが見込まれる。しかし、再配達率の高止まりによる宅配事業者の負担増加や、過疎地域等貨物量の減少や積載効率の低下により、物流サービスの持続的提供が困難となっている。

 地域の住民生活や経済活動などと密接に関連するラストマイル配送を切り口として、地域に欠かせない輸送能力の確保や物流サービスの持続可能な提供などの実現に向け、2025年6月に「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」を設置し、計5回にわたり議論を行い、検討会の提言を取りまとめた。

取りまとめ概要

ラストマイル配送を取り巻く現状・課題

  • 物流の小口・多頻度化に伴う宅配便ドライバーの負担の増大と消費者ニーズの多様化
  • 年々深刻化する地域のトラックドライバー不足と輸送効率の低下

今後取り組むべき施策の方向性

1. 多様な受取方法の更なる普及・浸透や宅配サービスの在り方の変革

  • 多様な受取方法等の普及促進に向けた消費者の行動変容・意識改革の促進
  • 消費者が多様な受取方法をより一層選択しやすくなる環境の整備
  • 対面引渡し以外の多様な受取方法の標準宅配便運送約款への位置付けの検討
  • ラストマイルにおける受け取りの利便性向上や配送の効率化に向けた様々な取組

2. 地域の物流サービスの持続可能な提供に向けた環境整備

  • 地域の物流サービスを支える配送・小売事業者等の徹底した物流効率化の推進
  • 地域の物流サービスの持続可能な提供に向けた地方公共団体の取組の推進
  • 農山漁村の多様な主体と連携した物流網の維持・確保
  • 運送サービスの維持が困難な地域等における行政手続の弾力化
  • 配送伝票等の標準化を通じた配送業務の効率化・簡素化等
  • 地域の配送・小売サービス事業者等が連携したラストマイル配送の脱炭素化の推進

3. 地域の配送等における新たな輸送手段の活用と次世代産業としての展開

  • 過疎地域等のラストマイル配送におけるドローンの活用推進
  • ドローン航路を活用した配送等サービスの事業性確保に向けた取組の推進
  • より配送能力の高い自動配送ロボットの実用化に向けた取組の推進


「今後取り組むべき施策の方向性:3. 地域の配送等における新たな輸送手段の活用と次世代産業としての展開」では、新たな輸送手段としてドローンや自動配送ロボットについて取りまとめている。

(1)過疎地域等のラストマイル配送におけるドローンの活用推進

 ドローン配送の効率化と事業採算性の向上を目指し、1人の操縦者で運航可能な機体数の増加(5機以上)や運航形態の拡大(レベル4飛行)に向けて新技術の活用も含めて検討を行い、「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン」を随時見直す。配送拠点の整備等も支援する。

 トラック輸送を補完する配送手段として、ドローン等の多様な輸送モードの活用が可能である点についても、標準運送約款や関係法令等で明確化する方向で検討する。

過疎地域等におけるドローン配送の実施イメージ(出所:国土交通省)

(2)ドローン航路を活用した配送等サービスの事業性確保に向けた取り組みの推進

 ドローン航路を利用する運航事業者がニーズに応じて物流と河川巡視・点検等を組み合わせた事業モデルを柔軟に展開することで収益性を改善することを目指し、異なるドローン航路同士の相互乗り入れの実現やガイドライン、システム、仕様・規格等のアップデートを行う。

 これらのガイドライン等に準拠したドローン航路を認定・認証する「ドローン航路登録制度」の実証を進める。

航路間の相互乗り入れイメージ、全国津々浦々での面的な整備イメージ
異なるドローン航路同士の相互乗り入れイメージ(出所:国土交通省)

(3)より配送能力の高い自動配送ロボットの実用化に向けた取組の推進

 中速・中型、中速・小型ロボット等さまざまな形態の自動配送ロボットの実用化に向けて、2025年度に新たな実証実験を行い、その結果も踏まえた安全性の検証や走行ルールの整理等の必要な検討を行う。

 私有地も含めたラストマイル配送の効率化に資するユースケースを創出する。

写真:中速・中型、中速・小型ロボット
(出所:国土交通省)

▼「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」提言の取りまとめ
https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000952.html