旭テクノロジー(以下、ATCL)は、2025年8月22日、兵庫県明石市内の下水道施設において、スイス・Flyability社製の球体ドローン「ELIOS 3」を活用した下水道点検の公開検証を実施した。
この実証では、従来確認が困難であった明石市内の下水道ボックスカルバート内の点検手法として、ドローン活用の実効性を検証した。
高度成長期に整備された社会インフラが老朽化し、建設後50年以上が経過する下水道設備の割り合いが加速度的に高くなると予測されている。一方、目視や接触による確認が難しい箇所の点検・劣化状況の把握が課題となっている。
特に、構造や安全上の理由から人が立ち入ることができない空間は点検が実施されていないケースも多く、異状箇所の早期発見や予防保全の観点からも技術的対応が求められている。
効率的かつ安全に閉鎖空間を点検する手法の導入が急務となっており、ドローンなど新技術への期待が高まっている。
検証内容
波高が高く、人の立ち入りが困難なボックスカルバートを対象に、ドローンを活用した下水道点検手法について検証した。
従来の人による点検では、硫化水素中毒や酸素欠乏症等が懸念される箇所、高い作業負荷が課題となっており、カメラロボット等による点検も構造上の制約や流下量等により十分な対応が難しい場合があった。
こうした課題に対し、安全性・効率性・飛行安定性・通信環境といった観点から、ドローンによる点検が有効に機能するか多角的な技術検討を行った。ドローンはFlyability社製「ELIOS 3」を活用した。
検証は、波高の影響を受けやすい海へ接続しているボックスカルバート内で実施。1スパン約30mで屈曲を含む区間を飛行した。ボックスカルバート内全体を撮影するため3回のフライトを行い、動画・静止画を撮影し、高性能LiDARと専用ソフトで3D点群データを生成した。
| 構造 | ボックスカルバート(内寸3,000×3,000mm) |
| 実施タイミング | 干潮時を狙って点検を実施 |
| 水量 | カルバート高の1/3程度(電波を地下まで届けるため、専用エクステンダーを利用) |
| 管長 | 約30m(屈曲を含む区間) |
検証の結果、人の立ち入りが困難な閉塞・狭小空間でもELIOS 3は安定して飛行し、高精細な映像・静止画を取得。安全性・効率性の観点で実運用に向けた有効性を確認した。
今回の検証により、従来点検が困難だった環境もELIOS 3が飛行性能を維持しながら点検を行い、これまで可視化できなかった領域の状況把握が現実的になったとしている。
自治体からは、従来の人による点検や潜行調査、浮流式カメラを使用した調査が困難な状況でも、ドローンを用いることで鮮明で詳細な映像を取得でき、管渠内の状況確認が可能になったとの評価を得た。人が管渠内に入らないため、硫化水素中毒や酸素欠乏症のリスクを回避できることが大きな利点だとしている。一方、そうした管渠には管渠延長が長い幹線等もあるため、飛行時間の向上が今後の課題となる。
この検証は、今後の下水道インフラ維持管理における新たな選択肢としてのドローン活用を模索する一環であり、ATCLは今後も実用化に向けた技術開発と運用面での検証を進める方針だ。
