富山県は、2025年7月29日から8月1日、同県と内閣府戦略的イノベーション創造プログラム（以下、SIP）「海洋安全保障プラットフォームの構築」プログラムによる、海中ロボットを使った能登半島地震に伴う富山湾内の海域影響調査を実施する。
2024年の能登半島地震によって富山湾では海底地すべりが発生し、シロエビやベニズワイガニといった水産資源に大きな影響が及んでいる。被害回復に資する現状把握を目的に、SIP「海洋安全保障プラットフォームの構築」が技術開発するホバリング式自律型無人探査機「ほばりん」と海底設置型観測装置「江戸っ子1号」の海洋ロボティクスを活用し、海底地すべりが発生した富山湾の海域影響調査を行う。高解像度で取得される画像データや環境DNAの採集装置を使い、地震から1年半が経過した海底の様子やシロエビ・ベニズワイガニの生息状況を把握する。
今回の調査は、SIPに参画する機関（海洋研究開発機構、海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所、次世代海洋調査）と富山県が共同で実施し、海上保安庁と富山大学が協力する。
調査方法
ホバリング式自律型無人探査機（AUV）「ほばりん」
ホバリング式自律型無人探査機（AUV）ほばりんは4Kビデオカメラを搭載しており、高解像度画像による観察が可能。同機を富山湾で運航し、海底環境やシロエビ・ベニズワイガニの生息状況を調査する。シロエビの漁場である新湊沖の海底谷の水深300m前後およびベニズワイガニの漁場である水深1,000m付近を調査し、詳細な海底地形や表層地質、塩分濃度や水温などの水塊特性を把握する。
海底設置型観測装置「江戸っ子1号」HSG型
浮力体として機能する耐圧ガラス球の中に、観測器材や制御装置が入った観測装置である江戸っ子1号は、4つの国産ガラス球で構成され、縦型に配置した構造から、素早く海底に設置できる。通信球、トランスポンダ球のほか、照明球、撮影球が海底の状況をタイムラプス撮影し、時間の経過を観測できる。今回、シロエビ調査地点とベニズワイガニ調査地点に、2機の江戸っ子1号を使い、約24時間、高画質ビデオカメラによる連続的画像取得と海底近傍の海水中にある環境DNAを採集し、シロエビやベニズワイガニなどの水産資源の現状を把握する。