KDDIは、2025年2月19日・20日、福島ロボットテストフィールドにおいて、同一空域内で異なるドローン運航管理システム(以下、UTMS)で運航する複数のドローン同士が衝突を回避し、安全な飛行を可能にするための運用基盤を構築する実証に成功した。

 従来、異なるUTMSが運航管理するドローンは、運航管理手法が異なるため、同一空域で飛行することは困難であった。実証成果を踏まえ、KDDIは複数のドローンを活用した災害時の遭難者の早期発見や被災地への物流配送などを促進していく。

 実証では、共同実施者のNTTデータ、協力企業のトラジェクトリー、TerraDroneの3社のUTM事業者と共に、実際の災害現場を想定したシナリオを策定し、同一空域内で異なるUTMSで運航するドローンが飛行する状況下での飛行計画の調整、フライトステータスの監視、空域情報の連携などの各種機能が適切に機能するか検証した。

 この実証は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「次世代空モビリティ実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」の取り組みの一環として実施したもの。また、航空局が定める「UTMサービスプロバイダ認定制度」の開始に先駆けた、UTMSの機能性および運用性の検証を目的として2022年12月から取り組んでいる。

実証の概要図
実証概要

 産業分野においてドローンは急速に普及している一方、従来の運航管理手法では、複数のドローンが同一空域で運航する場合や有人機との連携が求められる状況において、安全性や効率性の確保が困難であるという課題が顕在化している。

 UTM事業者ごとに異なるUTMSを使ってドローンの運航を管理しているため、飛行計画やフライトステータス、気象情報、空域情報などを統合的に管理するUTMSの整備が不可欠である。

 航空局は、無人航空機間での衝突を防止し、安全で効率的な運航管理をより広く実現することを目的に、適正な機能を持つUTMサービスプロバイダの認定を開始する予定。内閣府が推進する官民協議や「空の産業革命に向けたロードマップ」などの政策のもと、この認定制度により各事業者が安全で効率的な運航を行うための新たな運用枠組みが確立される見込みだ。

 この実証は、UTMSの運用基盤を構築し、その実用性を検証することで、認定制度開始に向けた機能性および運用性の確立と、ドローン運航の安全性および効率性向上に寄与することを目的としている。

実証について

 各社が開発・構築したUTMSの運用基盤を用いて、実際の運用環境下で最大5機のドローンが同じエリアで飛行するシナリオを再現し、飛行計画の調整、フライトステータスのモニタリング、気象情報や空域情報の連携機能について検証を行った。

 各社のUTMS間の連携は、国土交通省航空局が運用するドローン情報基盤システム(DIPS2.0)に相当する機能を模擬的に構築して実証した。

 実際の災害現場を想定したユースケースシナリオで、緊急時に設定される空域への迅速な対応や、各ドローン運航者間での情報共有と飛行実態把握の正確性、システム全体の安定稼働を確認した。

 また、UTMS非利用ユーザーを含む運用シナリオにおいて、システムが安定して機能することを検証した。

運航計画1と運航計画2が重複している場合、調整することで、運航計画同士の重複を事前に解消する
飛行計画調整のイメージ

 この実証により、UTMS間での飛行実態の把握や、国際標準フォーマットに準拠した空域情報の共有など、機能面の正確性を確認。運用面において、複数UTMS間での重複する飛行計画の相互調整やUTMSを利用しないドローン運航者とのデジタルツールよる情報共有の有効性を確認し、社会実装に向けた課題を抽出した。

 今後、UTM運用基盤の機能強化と、航空局によるUTMサービスプロバイダ認定制度開始に向けた運用ルール整備の支援を進めるとともに、UTMSの社会実装に向けた機能開発および実用化検証を実施していく。