福島相双復興推進機構(以下、相双機構)とソフトバンクは、2025年3月18日、海岸線におけるドローン航路の整備を想定した飛行実証を実施した。

写真:海岸付近を飛行するドローン
実証の様子

 相双機構は、福島相双地域(※1)における労働人口減少などの課題解決に向けて、ドローンを活用した物流配送網の構築や、沿岸に位置する港湾施設における設備点検の省人化・効率化を目的に、福島相双地域で海岸線におけるドローン航路の整備を目指している。

 今回、相双機構とドローンの運航に関する知見を持つソフトバンク、日立製作所は、1か所の離着陸場を拠点としてドローンをさまざまな用途に活用する“マルチユースケース”を見据えた飛行実証を、海岸線のルート上で行った。

 飛行実証は目視外の自動飛行による巡視(風力発電所、太陽光パネル、海岸、河川)や海洋監視、物資配送の6つのユースケースを想定して実施した。また、海岸線での運航に求められる機体要件や環境要件、拠点運用における飛行前準備に必要な要件の把握、ユースケースを想定した拠点における機体運用(離着陸にかかる時間、メンテナンスの効率化、運用スケジュールの最適化)にかかわる安定性の確認、課題項目の洗い出し、撮影に適した飛行方法(高度・速度)に関する実証も行った。

 この実証により、1か所の離着陸場を拠点にさまざまな用途に対応したスムーズな飛行を実現したほか、拠点運用の有用性を確認した。また、社会実装に向けた運用面の課題として、ドローンの稼働時間の把握やステークホルダーとの各種調整の必要性を確認した。

 政府は人口減少が進むなかでもデジタルによる恩恵を全国に行き渡らせるため、約10か年にわたる「デジタルライフライン全国総合整備計画」を2024年6月に策定し、「アーリーハーベストプロジェクト」の一環として「ドローン航路」の全国整備を進めている。また、政府が実施する産官学が連携してドローンの商用利用拡大を目指すドローン航路普及戦略ワーキンググループでは、ドローン航路を政府が推進する全国線航路と、地方自治体・民間事業者などが協調的に環境整備を実施する地方線航路という2つの考え方を示しており、相双機構は福島県における地方線航路の実現に向けて取り組んでいる。さらに、海岸線においてドローンのマルチユースケースでの活用が可能になることで、さまざまなドローンの利用ニーズに対応できるようになる。加えて、これまで1事業者だけでは負担が大きかった機体の費用や保守・点検の労力、飛行スキルを維持するための訓練などを、拠点を運営する事業者が一元化して対応することで、平時や災害時に関係なく迅速にドローンを活用できる環境づくりに貢献するとしている。

 相双機構およびソフトバンクは、福島県での実証を皮切りに、防災やインフラ点検、物流などさまざまな領域で利活用が期待されるドローンの早期社会実装に向けて、ドローンを安全で効率的に運航するための航路の整備やシステムの構築、商用利用を見据え、社会受容性の向上、実装を進める。

【各社の役割】

相双機構ドローン航路の整備を想定した海岸線における運航の有用性検証に関する諸支援、地域におけるドローン利活用ニーズの探索
ソフトバンク実証の取りまとめ、ドローンの運航
日立製作所ドローン運航のオペレーション支援

※1 東日本大震災により被災し、福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所事故に伴う避難指示などの対象地域となった福島県内12市町村(田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村)。