Terra Drone(以下、テラドローン)は、インドネシアのジャカルタ郊外で、運航管理システム(UTM)を活用した複数ドローン飛行の実証実験を、2025年1月22・23日の2日間にわたり実施した。

 この実証実験は、経済産業省に採択された「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」(事業名:インドネシア共和国/インドネシア市場に係る無人航空機の運航管理システム(UTM)の実用性実証事業)の一環として実施したものとなる。

都市を飛行するドローンのイメージ

 テラドローンは、インドネシアに子会社Terra Drone Indonesia(以下、テラドローン・インドネシア)を構え、ドローンサービス事業を展開している。また、子会社のUnifly(以下、ユニフライ)や、持分法適用会社Aloft Technologies(以下、アロフト)は、それぞれ欧州および米州でのUTM導入実績を持つ。

 実証実験では、インドネシア市場に最適化したUTM導入の可能性を検証し、将来的な商業化への第一歩とする。ユニフライが提供するUTMプラットフォームをベースに、テラドローン・インドネシアやアロフトの知見と技術を用いて、UTMを活用することを想定したシナリオに沿って複数のドローンを飛行させ、安全な運航管理や自律飛行、緊急対応の運用検証を行った。

実施概要

 当日は、UTMの概要説明に加え、実際にUTMとドローンに搭載したADS-B(※1)やリモートID(※2)を使用したデモンストレーションを実施した。使用したドローンは、米国製、日本製、インドネシア製、中国製の機体で、農業、物流、監視・点検といったユースケースを想定し、複数機体で飛行を行った。また、実証実験後には参加者によるセッションを行い、今後のインドネシアおよび周辺諸国でのUTM導入に向けたステップや課題を議論した。

※1 ADS-B:Automatic Dependent Surveillance-Broadcast(自動依存監視放送)。航空機の位置情報をリアルタイムで送信し、地上の受信機や他の航空機がその情報を受信することを可能にする航空監視技術。
※2 リモートID:無人航空機の識別情報を電波で遠隔発信する機能。

日時2025年1月22日(水)~23日(木)
場所インドネシア共和国 ジャカルタ南部 セントゥール市
内容3つのシナリオを想定した、複数ドローン飛行によるUTMの実証実験
・農業:ドローンによる農薬散布
・物流:ドローンによる配送
・セキュリティ:監視・点検ドローンの運用
参加国インドネシア、ASEAN諸国、中東諸国(マレーシア、シンガポール、インド、パキスタン、アラブ首長国連邦、カタール等)
参加者各国航空局、ANSP(航空管制サービスプロバイダー)、政府関係者、ドローン関連企業の代表者など、合計118人
写真:2機のドローンが飛行する様子
複数のドローンが飛行している様子
写真:スクリーンに映し出されたUTM画面、説明するスタッフ
ドローンの運航状況を示すUTM画面

 インドネシアは、世界有数のオイル・ガス国家であり、ドローン点検市場が有望視されている。また、パーム農園などの大規模農業での活用や離島間物流など、ASEAN諸国の中でもドローン市場の拡大が見込まれる。インドネシアのドローン産業の潜在的な市場規模はASEAN諸国で第2位という調査や(※3)、インドネシアの2024年人口が世界4位であることなどから(※4)、今後多くのドローンの利活用が進むと推測される。

※3 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO). “2023年度調査報告書 情報収集費/ASEAN地域における次世代空モビリティの政策・市場動向や我が国技術の展開可能性等に関する調査”. 2024, p86
※4 State of World Population report 2024|国連人口基金(UNFPA)

ASEAN主要各国におけるドローン産業の市場規模推計・有望ユースケース(出典:NEDO)(※3)

 UTMの導入によって、ドローン飛行の安全性向上や効率的な運航管理が可能になり、ドローンの利活用を大きく加速させることが期待されている。同事業では、農業や測量、点検、物流、セキュリティ対応などの分野において、インドネシアのジャカルタや建設中の新都市ヌサンタラなど、複数都市におけるドローンの普及に必要なUTMの実用化を目指しており、グローバルサウス諸国との経済連携の強化や、本事業実施国であるインドネシアの経済支援にも寄与するとしている。