2025年1月15日、日本航空(以下、JAL)、奄美アイランドドローン(以下、AID)、JDRONEは、ヤマハ発動機の協力のもと、2024年12月18~19日に実施された、令和6(2024)年度熊本県総合防災訓練に共同参加し、大型ドローンを活用した災害時初動対応の救援活動を行ったことを発表した。

 同訓練は、大規模震災により天草地域への陸路が寸断されたという想定で実施され、海・空からの大規模な支援が計画される中、ドローンの偵察飛行によって被災状況をリアルタイムに対策本部へ伝えるとともに、自衛隊が揚陸する救援物資を孤立離島へドローンでリレー輸送した。

写真:港の様子、打ち合わせの様子海上を飛行するドローン

 訓練には、民間ドローンチームとして訓練計画時より県災害対策本部に参画の上、大型ドローンの性能および運航体制を生かした役割を提案し、「ドローンによる被災状況確認」「自衛隊等の初動対応策定・実施」「ドローンによるラストワンマイル輸送」をシームレスに実現するオペレーションを実証した。

訓練参加の様子

訓練でのドローンの役割

 平成28(2016)年熊本地震や令和6(2024)年能登半島地震などの震災においては、海岸からの救援アクセス確保や道路啓開に資する被災状況の全体把握、陸路が寸断された孤立地域へのラストワンマイル輸送を強化する必要性など、初動対応における課題認識があった。また、長距離飛行と重量物輸送を可能とする大型ドローンについては、平常時から遠隔操縦を含めた運航体制の確立(フェーズフリー)が必要であり、計画外の緊急出動は困難であることなど、防災対策におけるドローンの効果的な活用・役割には課題がある。

 訓練では、民間の大型ドローンが発災直後に広範な偵察飛行を実施し、対策本部はリアルタイムに被災状況を把握の上、初動対応の策定につなげることとした。天草諸島沿岸部(全周約200km)を低空より撮影し、接岸が可能な沿岸部を見極めた上で海上自衛隊の揚陸計画が策定されることなどを想定している。

 救援物資は、海上自衛隊から陸上自衛隊、民間ドローンへとリレー輸送した後、大型ドローンにより孤立離島へラストワンマイル輸送を行った。

災害初動機の救援物資オペレーションにおける大型ドローンの役割

ドローンの運航体制

 JALが総合調整の上、AIDがドローン機材・遠隔操縦者を提供、JDRONEとヤマハ発動機は運航補助を担う体制を取った。

 2023年11月、奄美瀬戸内町とJALが共同設立したドローン運航会社AIDは、現在、ヤマハ発動機製の大型ドローン「FAZER R G2」を主力機に、平時には生活物資を定期輸送し、災害時には状況偵察や救援物資輸送を担うフェーズフリーなドローン事業を展開している。

 訓練の遠隔操縦基地局は非被災地とすべく、東京(AID定期運航の基地局)に設定した。

 JDRONEは、FAZER R G2を活用した福島第一原子力発電所事故に関する放射性物質モニタリングをはじめ、危機管理・災害分野におけるソリューション事業を通じた経験や知見から、訓練では現地における運航補助を担った。

 ヤマハ発動機は、無人航空機の製造メーカーとしての技術情報、これまでの長距離飛行の運航活動などで得た経験や知見を生かし、運航計画の事前確認、現地における運航補助を行った。

ドローン運航奄美アイランドドローン
使用機材ヤマハ発動機製「FAZER R G2」
運航形態目視外遠隔操縦(レベル3.5運航)
LTE・衛星通信併用
遠隔操縦基地局:東京都品川(JAL本社内)
写真:飛行するドローン
写真:飛行経路などが表示されたモニターを見る男性

被災状況の偵察飛行(2024年12月18日:上天草市、天草市、苓北町)

  • 被災想定の天草諸島の沿岸部を低空より偵察飛行
  • 県災害対策本部はリアルタイムに空撮映像をモニター
ドローンの飛行ルート、ドローン搭載カメラからの映像、件災害対策本部の様子

孤立離島への救援物資ラストワンマイル輸送(2024年12月19日:上天草市)

  • 海上自衛隊エアクッション艇により揚陸された救援物資はドローン出発地(樋合漁港)へ陸送
  • 陸上自衛隊より物資を受け取り、ドローンへ搭載、孤立想定の樋島(ひのしま)へラストワンマイル輸送
写真:輸送ルート、エアクッション艇、トラックで陸送、荷物を手渡す様子