2024年12月18日、八千代エンジニヤリングとジャパン・インフラ・ウェイマーク(以下、JIW)は、2024年7月に樋管函体(ひかんかんたい)内部における水上ドローンを使用した点検を実施したことを発表した。

 この点検は、建設現場の点検作業における高度化・省力化を目指し、関東地方整備局 荒川下流河川事務所管内において2024年1月に実施した、樋管函内水上ドローン点検の第2弾となる。

写真:樋管函内に進入する水上ドローン
樋管函内に進入する水上ドローン

 荒川下流河川事務所では、建設生産プロセスの変革による生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指すため、デジタルデータと情報技術を活用したインフラ分野のDXを推進している。今回は河川管理施設の点検作業のX(変容・変革)に向けた取り組みとして、水上ドローンを点検に活用する。

3Dテクスチャモデル。天井の損傷部分を抽出
3Dテクスチャモデル化した樋管函内

 樋管は堤防を横断する暗渠(あんきょ)形式の水路構造物で、治水機能維持のため定期点検が義務付けられている。従来の点検は人がボートで樋管函内に進入して目視する必要があり、狭く暗い樋管函内の作業には危険が伴い、点検の品質確保も課題となっていた。

 2024年1月に実施した水上ドローンを用いた樋管函内の点検では、プロポの通信環境の整備が課題となったことから、JIWは60GHz無線通信を搭載した全方向水面移動式ボート型ドローンを開発した。

 また今回の点検では、さらなる高度化や点検の省力化を図るため、2024年1月実施の撮影手法を更新し、ひび割れの長さや剥離の面積などの定量的な把握が可能な3Dテクスチャモデル化の検証を実施した。

実施内容

 水深が大きく、水上部の空間が狭い樋管函内の点検にあたり、樋管の正面または正面側方にドローン操縦者および水上ドローンを配置し、水上ドローンを函体吐口(はきぐち)部から内部に進入させる方法により点検データを取得した。

 2024年1月に実施した動画撮影のカメラとは別に、連続写真の撮影が可能なカメラを搭載。函体の側面・上面・正面・斜め上の撮影データを取得し、SfM処理による3Dテクスチャモデル化を実施した。

【実施結果】

  • 3Dテクスチャモデル化により、損傷の位置や規模などの定量的な把握が可能となった。
  • 3Dテクスチャモデルは樋管函内の損傷の位置関係を正確に認識でき、隣り合う損傷の関連性や要因の推定が期待できる。
  • 今までは点検者が損傷評価時にすべての動画を視聴し、損傷種類やその進行などを見落としが無いよう何度も見返す必要があった。3Dテクスチャモデルでは、損傷部分を容易に抽出できるため作業負荷軽減になるほか、点検者以外の関係者(管理者・施工者など)の確認も簡易になり、工数省力化につながる。
  • 点検データ取得時、動画撮影の場合は1函体につき4画角(上面、両側面、正面)の撮影が必要なため2往復しなくてはならなかった。今後、3Dテクスチャモデル化を点検に活用できれば、斜め上向き方向の連続写真(両側面/2画角)でSfM処理が可能なため1往復で済み、点検データの取得にかかる時間の短縮が期待される。

 3Dテクスチャモデル化による高度化に加え、さらなる省力化が期待できる結果となった。 今後、各建設現場に導入できるよう環境の異なる函体でも対応可能な水上ドローンの自動・自律航行の精度向上、撮影手法の確立、AIや画像解析技術を活用した損傷抽出、継続監視が考えられる。