2024年12月16日、いであ、戸田建設、東京海洋大学、九州工業大学の4者は、自律型無人探査機(AUV:Autonomous Underwater Vehicle)を用いた浮体式洋上風力発電施設の水中点検技術を開発し、長崎県五島市沖における実証試験において、AUVによるスパー型浮体(水中部)の全自動周回点検に成功したことを発表した。

 この実証試験は、「自律型無人探査機(AUV)利用実証事業(内閣府総合海洋政策推進事務局事業)」に採択された「AUVを用いた浮体式洋上風力発電施設の点検を実現するための実証試験」において実施したもの。

実証実験の概要図、システム構成
実証試験の概要

 いであの所有するホバリング型AUV「YOUZAN」を利用して、新たな制御システムを開発し、2024年9月に長崎県五島市崎山沖浮体式洋上風力発電所「はえんかぜ」(スパー型浮体)、11月に同椛島沖のスパー型浮体施設(はえんかぜと類似形状)を対象に、実証試験を実施した。

写真:海に浮かぶ風力発電所
浮体式洋上風力発電所「はえんかぜ」

 AUV自律制御点検システムは、ホバリング型AUVに搭載したソーナーにより浮体を検知し、浮体との距離を一定に保ちながら浮体を螺旋状に周回潜航して、高感度カメラにより浮体の画像を撮影記録する。

 周回点検では、浮体の3方向に設置された係留チェーン接続部の水深5~7m付近で、係留チェーン接続部や係留チェーン等の障害物を自律で回避しながら、2周半程度周回して撮影を行った。さらに水深15m付近で、3方向に展張した係留チェーンの内側を周回し、撮影した。

写真:水中を周回しながら撮影するAUV
水深5m(係留チェーン接続部設置水深)の周回状況
写真:チェーン接続部を回避するAUV
係留チェーン接続部の回避状況
写真:水中を周回しながら撮影するAUV
水深15m(係留チェーンの内側)の周回状況
スパー型浮体の撮影箇所、点検箇所の3Dデータ
スパー型浮体の3Dデータ(水深15m)

 日本の2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、洋上風力発電は再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札とされており、沿岸だけでなくEEZ(排他的経済水域)の浮体式洋上風力発電に大きな期待が寄せられている。多くの洋上風力発電装置が設置されれば、その水中部の点検やメンテナンスは自動化や無人化が求められる。

 今後4者は、着床式構造物を含む多様な形状の洋上風力発電施設、浮体係留索、ダイナミックケーブル等の水中点検に活用できるAUV技術の開発を加速し、2030年の水中部保守点検サービスプロバイダー事業化を目指すとしている。