2024年4月11日、八千代エンジニヤリングとジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)は、2024年1月29日、30日に荒川下流河川事務所管内において、樋管函体(ひかんかんたい)内部(以下、樋管函内)を対象に水上ドローンを用いた点検を実施したことを発表した。

 同事務所では、インフラ分野におけるデジタルデータと情報技術を活用したDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進しており、今回は河川管理施設の点検作業のX(トランスフォーメーション:変容・変革)に向けた取り組みとして点検に水上ドローンを活用した。

樋管函内に進入する水上ドローン
水上ドローンにより撮影した劣化箇所

 樋管は、堤防を横断する暗渠(あんきょ)形式の水路構造物。樋管壁面のクラックやコンクリートの劣化などによる漏水が原因で、堤体の安全性を損なう恐れがある。

 樋管などの河川管理施設は治水機能維持のため点検が義務付けられているが、従来はボートを使い人が目視で点検する必要があり、危険を伴っていた。また、点検の非効率に伴う点検精度の低下も課題であった。

 昨今では法令などで目視や対面、人の常駐などを義務づけた「アナログ規制」の撤廃がデジタル庁主導で進められ、社会インフラにおける検査・点検・監査の自動化・無人化への対応が急務となっている。

 水上ドローンを用いることで、従来は点検が困難とされていた樋管函内点検の安全性の確保や作業効率化の実現を図る。

実施内容

 荒川下流河川事務所が管理する新芝川排水機場樋管および小名木川排水機場樋管について、水上ドローンによる点検の安全・効率化を目指し、樋管函内の点検を試みた。

 樋管の正面または正面側方にドローン操縦者および水上ドローンを配置し、水上ドローンを函体吐口部より内部に進入させ、劣化箇所の写真・動画撮影を行った。

 プロポ(ドローンのコントローラー)の通信環境では、樋管函内でドローン本体との接続が切れる恐れがあるため、機器を回収可能な安全装置を実装のうえ、ドローンの自走機能により奥までの到達を可能とした。

 また、点検データ画像を送信するための周波数を2.4GHz帯から5GHz帯に変更することで、狭い樋管函内におけるデータ受信状況を改善させ、これまで送信できなかった距離でも点検データ画像の送信を可能とした。

点検イメージ

 新芝川排水機場樋管および小名木川排水機場樋管については、水上ドローンで樋管函内の劣化箇所を撮影し、樋管函内点検の省人化の可能性の検証を行うことができた。水面付近からの撮影のため従来よりも広角になり、劣化状況把握の精度が向上。点検作業や資料整理の作業時間も短縮化できた。点検員の安全面にも寄与する。

 荒川の下流部に位置する小名木川排水機場樋管では、潮位差が大きく一日の作業時間の制約もあった。感潮区間に位置する施設は一般的に側壁の乾湿繰り返し部分の劣化進行が早いことから、干潮時に短時間で点検することにより状況を確実に把握した。函体延長が長く、他の点検手法では実現できなかった点検の実現化に成功した。

 今後は、プロポの通信環境について、水上ドローンをさらに安全に操作できる環境を構築する。また、感潮区間に位置し、従来の点検では安全面の懸念があるなど、条件が類似している管内の他施設の点検にも、水上ドローンの導入を積極的に検討するとしている。