2024年6月21日、鹿島建設(以下、鹿島)は、自治体や企業などの森林所有者が行う森林づくり計画の提案から森林経営、活用支援までをトータルサポートするサービス「Forest Asset(フォレストアセット)」の提供を開始したことを発表した。
森林内自律飛行ドローンを活用して取得した森林上空と森林内のデータを解析することで、森林を構成する樹種ごとのボリュームや樹々ごとの位置・樹高などを点群データ化して評価するという、同社が開発した技術を活用する。
2024年5月には、森林業の活性化に取り組んでいる三井住友銀行が神奈川県伊勢原市日向地区での認証を目指しているOECM(※1)の事前調査にForest Assetの一部技術を採用し、その有用性を確認している。
※1 効果的な自然保全が行われている地域を示す国際的な認定制度。
森林保全のために森林内部の状況を把握する場合、人が実際に立ち入って確認することが多く、安全上の懸念があり、膨大な時間や労力、費用も必要となる。また、木材を卸して得られる森林所有者の収益は減少を続け、林業従事者も減少傾向にある。そのため、管理が行き届かず、有効活用されていない森林が国内には多く存在している。
森林の荒廃は、木材加工などの地域産業を衰退させるだけでなく、災害による被害の拡大や生物多様性の喪失が進むなど、地域社会に大きな影響を与えるおそれがある。建設業界にとっても、国産木材が安定的に供給されなくなるリスクを持つ。
「Forest Asset」の概要・特長
Forest Assetを活用することで、森林管理の生産性が向上するほか、森林資源を生かしたJ-クレジット制度や自然共生サイト認定の申請など、森林が持つ潜在的な付加価値向上に向けた取り組みが可能となる。
その核となる技術は二つ。一つ目は、名古屋大学との共同研究で開発した、上空からドローンで取得した森林の点群データ情報を解析し、材積(木材の体積)や樹種、樹高、立木位置、胸高直径を高精度で推定する技術。二つ目は、森林内の自律飛行とレーザー計測が可能なスウェーデンDeep Forestry社製の高性能ドローンを活用することで、森林内をレーザー計測して点群データを取得し、樹高、立木位置、胸高直径・曲がりや下草の有無など多様で複雑なデータを高精度にデータ化する技術だ。従来の人手による計測可能範囲が約0.1~0.3ha/日であることに対し、同技術を用いることで約10ha/日の範囲を正確にデータ化でき、30倍以上の省力化が可能となる。
この2つの技術で得た点群データを連携させることで、広範囲にわたって樹種ごとのボリュームを把握できるだけでなく、その中の樹木1本1本の位置や樹高といった詳細な情報をデジタル空間上で高精度かつ立体的に可視化することができる。
希少動物の生育環境調査など、鹿島の自然環境調査技術を組み合わせることで、生物多様性を向上させるプランや森林の水源涵養機能を高めるプランなど、森林が持つ潜在的な付加価値を最大化するプランを立案し、J-クレジット制度や自然共生サイト認定の申請につなげる。
同サービスの提供第一弾として、2024年5月、三井住友銀行が神奈川県伊勢原市日向地区での認証を目指しているOECMの事前調査にForest Assetの一部技術を採用し、その有用性を確認した。
また鹿島グループは、日本国内に東京ドーム約1,170個分に相当する約5,500haの社有林を保有しており、これら森林の計測、解析技術を通じて、生物多様性、樹木の成長解析などを行ってきた。今回同社は、森林内自律飛行ドローンを活用し、福島県および宮崎県の社有林約170haを対象にJ-クレジット制度の申請を行った。
今後鹿島はForest Assetを新たな事業の一つと位置付け、森林を保有管理する自治体や企業の持続可能な森林経営を積極的に支援するとしている。