2024年3月27日、NEXCO東日本、NEXCO中日本、NEXCO西日本(以下、NEXCO3社)は、ドローンによる撮影動画を活用した鋼橋点検を導入することを発表した。

 法令では、橋梁等の道路構造物を5年に1度、健全性の診断の根拠となる現在の状態を、近接目視または近接目視と同等の情報が得られる方法により点検を行うことが定められている。近年、建設業界では技術者不足や働き方改革により、点検業務の高度化や生産性向上が求められている。

 これまで3社は、近接目視による鋼橋点検を行ってきたが、ドローンによる撮影動画を活用した点検について検証した結果、従来の近接目視と同等の精度で健全性の診断を行うことが可能であり、人が近接しづらく変状を確認しにくい部分の状態の把握が容易、交通規制や点検用足場が不要となることで点検のコスト縮減が可能であることを確認。動画による鋼橋(主として鈑桁橋・箱桁橋)の点検を、2024年4月より導入することを決定した。

【従来の橋梁点検】

 現地において、点検技術者が構造物を近接目視することで橋梁の状態を把握。

左:点検技術者自身が近接目視、中央:橋梁点検車の活用、右:現地で変状を確認し状態を把握

【ドローンを活用した橋梁点検】

 ドローンを活用して動画を取得し、その動画を室内で確認することで橋梁の状態を把握。

左:ドローンの飛行状況(遠景)、中央:ドローンの飛行状況(近景)、右:室内で動画を確認し状態を把握

検証結果

1. 従来の近接目視と同等の精度確保(同一部位での比較)
 ドローンを構造物に近接させて動画を取得するため、近接目視で確認できる変状は同様に状態を把握できる。記録した撮影動画で状態の把握が困難である場合は、別途点検技術者による近接目視、触診・打音等を実施。

塗膜劣化(左:近接目視、右:ドローン)
ボルト腐食(左:近接目視、右:ドローン)

2. 近接目視では確認しにくい部分の状態の把握

狭隘部の例(横桁上フランジと床版の間)
 従来の点検では、狭隘な部分の変状を近接目視で確認することは容易ではない。

狭隘部での変状確認
 従来は困難であった狭隘部への進入・近接がドローンでは容易であり、構造物の状態の把握がしやすい。

3. 従来の方法で必要となる点検用足場や交通規制
 橋梁点検車を使用する場合、高速道路本線の車線規制あるいは通行止めが必要。また、橋梁点検車が使用できない場合は近接目視のために、高額な移動式吊足場を使用する必要があった。

橋梁点検車を活用した点検の実施状況(通行止めを行い実施)
移動式吊足場を活用した点検の実施状況

従来の橋梁点検(左)と、ドローンを活用した橋梁点検(右)の流れ