2024年2月22日、大林組は、未来技研、菊池製作所、松浦電弘社と共同で、ドローンおよび自律4足歩行ロボット「Spot」を用いた放射線計測システムを構築し、局所的に放射線量の高い箇所が発生していないかなどの検査を省人化させる技術を開発したことを発表した。

 原子力施設や中間貯蔵施設では土壌などの放射線量の調査が必要だが、モニタリングポストによる定点観測や歩行調査などが採用されており、広大な敷地に対して面的に計測を行う技術が確立されていなかった。また人手不足も深刻で、省人化も大きな課題となっている。

 大林組は福島県に整備された中間貯蔵施設の大熊3工区土壌貯蔵施設において、ドローンおよびSpotを使った放射線計測技術の実証試験を行い、迅速な計測を行いながら省人化を可能にする技術を開発した。

検出器を搭載したドローン
検出器を搭載した自律4足歩行ロボット「Spot」

実証試験の内容

 実証試験を行った中間貯蔵施設は、除染作業で発生した土壌(以下、除去土壌)を貯蔵し、覆土している。地表面に局所的に放射線量が高い箇所が発生していないかの調査を、鉛の遮へい体を装着した検出器を搭載したドローンおよびSpotで行った。ドローンは広大な面積を迅速に計測でき、Spotはより詳細に異常箇所を特定できる。またSpotを用いることで、ドローンが飛行できない建屋内での計測が可能になる。

 今回は、地表面に露出した除去土壌を想定した放射線源(以下、線源)を設置し、その周辺をドローンおよびSpotを停止させずに走行させたまま線源の検出が可能かどうかの確認を行った。ドローンの飛行高度は3m、飛行速度は秒速1m、Spotは走行時の検出器高さを70cm、走行速度を秒速約0.8mに設定した。

 1MBq(メガベクレル)の線源を地表面に設置し、ドローンおよびSpotにその直上を3往復走行させたところ、ピークが6カ所現れ、線源を特定することができた。1MBqという線源は、地表面から1mの高さで約0.08μSv/hの空間線量率に相当し、これは一般に安全とされる0.23μSv/hの約3分の1に当たることから、小さな放射線量でも十分に検出できるという結果を得た。

【ドローン】計測時間と計数率の関係
【Spot】計測時間と計数率の関係

 また、実証試験ではドローンにGPSを搭載し、位置データと放射線計測データを組み合わせることで、検出結果をカラーマップとして可視化した。

ドローンによる測定結果をカラーマップで表示した図

 同技術は、除去土壌の中間貯蔵施設や減容・再生利用事業施設だけでなく、原子力発電所の廃止措置開始後の建屋周辺および内部のモニタリングや、放射性廃棄物を地下に埋設した後の点検作業においても有用となる。また実証試験では、狭い範囲を詳細に検査し、1時間当たり約4,500m²の速度で計測できることを確認。通常の人による歩行調査(1人1時間当たり約1,100m²)に比べて約4倍の生産性向上を実現した。ドローンを使用する場合は1時間当たり約4万m²の計測が可能となる。