2024年2月8日、ACSLは、小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」のアップデートを2024年2月7日に実施し、送電線や鉄塔付近などの交流磁界が発生する場所における操作性などが向上したことを発表した。

 同社は、顧客からのフィードバックをもとにこれまで複数回のファームウェアのアップデートを実施し、機能や性能などの改善を行っている。

 今回のアップデートでは、送電線や鉄塔付近での操作性、映像の伝送速度が向上。また、基地局アプリ「TAKEOFF」の多言語版を開発した。

送電線や鉄塔付近での操作性が向上

 送電線や鉄塔の点検は、熟練した作業員による高所での目視点検が主流であり、点検にかかる労力や安全面の問題からドローンの活用が積極的に行われている。送電線や鉄塔付近では、電気の流れる方向が周期的に変化する交流磁界が発生することでドローンが正しい方角を認識できず、機体を制御できなくなるという課題があった。今回のアップデートによりこの課題を改善し、送電線や鉄塔付近での操作性が向上した。

映像の伝送速度を段階的に向上

 ドローンは、飛行中に撮影した映像をリアルタイムで伝送することができ、インフラ点検時にその場で点検箇所を確認したり、災害時の被災状況を迅速に把握したりすることに活用される。SOTENは、最大伝送距離4km(障害物や電波干渉がない場合)のスペックを持ち、今回のアップデートを含めて、今後映像伝送速度を段階的に向上させていく。

実際の災害現場において、伝送された映像を基地局アプリ「TAKEOFF」で確認する様子

基地局アプリ「TAKEOFF」の多言語版開発

 ACSLは、2023年11月に経済産業省よりSOTENの米国への輸出に関する輸出許可証を受領、同年12月に米国子会社であるACSL, Inc.が戦略的代理店パートナーシップに関するMOUを締結したGeneral Pacific, Inc.に50機を納品し、米国におけるSOTENの販売を開始している。

 今回のアップデートでは、米国向けに基地局アプリ「TAKEOFF」の米国版を開発した(米国版「TAKEOFF」は米国の顧客のみがダウンロード可能)。同社は海外展開を積極的に進めており、今後も多言語版の開発を進めるとしている。

米国に輸出したSOTEN

 SOTENは、高性能・高セキュリティな小型ドローンの開発を目的とした、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)公募の「安全安心なドローン基盤技術開発」事業により完成したドローン。ISO15408(コンピュータセキュリティのための国際規格)に基づくセキュリティ対策を施し、データの漏洩や抜き取りの防止、機体の乗っ取りへの耐性を実現している。国産のセキュアなドローンであることから、インフラ点検や災害、測量などの分野で活用されている。

寸法アーム展開時:637mm×560mm(プロペラ含む)
アーム収納時:162mm×363mm
機体重量1,720g(標準カメラ・バッテリー含む)
最大離陸重量2,000g
最大飛行時間標準カメラ搭載時、風速8m/s条件下:25分
標準カメラ非搭載時、風速8m/s条件下:29分
最大伝送距離4km(障害物や電波干渉がない場合)
防塵・防水性IP43(カメラ、ジンバル、バッテリー搭載時)
標準カメラ動画4K対応 静止画時2,000万画素
オプションカメラ赤外線カメラ+可視カメラ、マルチスペクトルカメラ、光学ズームカメラ
GNSSGPS+QZSS(準天頂衛星みちびき)+SLAS/SBAS