2024年2月20日、コアは、ACSL、楽天グループ(以下、楽天)と共同でアンチGNSSスプーフィングの実証実験を実施し、成功したことを発表した。同実証は、準天頂衛星システムみちびきの信号認証サービスに対応した国産ドローンの開発に向けて実施したもので、内閣府「2023年度みちびきを利用した実証事業」に採択されている。

秩父市大滝総合支社での実証実験の様子

 現在、効率化や安全性向上等への対策として、自動運転やドローンの自律飛行技術が普及している。この技術には、機体が自己位置を取得するためにGNSSが広く利用されているが、GNSS受信機の位置を狂わせ、本来とは違うルートに誘導するGNSSスプーフィング(なりすまし)技術が大きな脅威となっている。

 その対策として、みちびきでは2024年度に信号認証サービスの導入を予定している。みちびきから配信する電子署名情報と受信機があらかじめ保有する公開鍵を利用し、衛星からの正常な信号かどうかを判別することにより、妨害信号を遮断することができる。

 コアが開発した信号認証サービス対応の受信機「Cohac∞ Ten++」を、ACSLの国産ドローン「PF2-AE Delivery」に搭載し、世界初(コア調べ、2024年2月20日時点)となる衛星からの信号認証サービスに対応したドローン「ChronoSky PF2-AE」を開発。楽天が埼玉県秩父市大滝地域において今回開発したドローンを活用し、GNSSスプーフィングの影響下で救援物資の配送を行うという想定で実証実験を実施した。その結果、みちびきの信号認証に対応し、正しくGNSSスプーフィングを検知・遮断・通知したことを確認した。

実証実験の概要

 実証実験では、災害によって道路が寸断された場合におけるドローンによる救援物資の配送を想定し、2つの実証および確認を行った。

想定状況

1. 自動航行が「可能」なレベルのGNSSスプーフィング環境下において、スプーフィング信号を遮断するとともに、ドローン操縦者にスプーフィングを受けていることを即時に通知したうえで「ドローンの自動航行を継続し、荷物を無事に運ぶ」。

 道の駅大滝温泉で食料や衛生用品といった救援物資をドローンへ積み込み、秩父市大滝総合支所へ自動航行で荷物を配送している途中、GNSSスプーフィング攻撃を受けるも、スプーフィング信号を遮断し、スプーフィングを受けていること、およびスプーフィング対象衛星数が少なく自動測位が可能であることをGCS(ドローンを地上からコントロールするためのシステム)へ即座に通知。自動航行を継続し、荷物を大滝総合支所で切り離して、道の駅大滝温泉へ無事に戻れるかを検証した。

荷物を受け取る様子

2. 自動航行が「不可能」なレベルのGNSSスプーフィング環境下において、スプーフィング信号を遮断するとともに、ドローン操縦者にスプーフィングを受けていることを即時に通知したうえで「手動運転に切り替えて安全に着陸する」。

 道の駅大滝温泉で食料や衛生用品といった救援物資をドローンへ積み込み、秩父市大滝総合支所へ自動航行で荷物を配送している途中、GNSSスプーフィング攻撃を受けるも、スプーフィング信号を遮断し、スプーフィングを受けていること、スプーフィング対象衛星数が多く測位が不可能であることをGCSへ即座に通知。操縦者が手動運転に切り替えて安全に着陸できるかを検証した。

ドローン操縦者へ通知を行う様子

 なお、屋外でGNSSの妨害信号を放射することは電波法に抵触するため、当日の実証実験では妨害信号は放射せず、疑似的にスプーフィングを受けた環境を構築してドローンを航行させた。実際の妨害信号による動作については、実証実験の当日デモにて有線により受信機にスプーフィング信号を送信したうえで、正しくスプーフィングの検知・遮断を行い、正常な衛星信号のみを用いて測位ができることを確認している。

GNSSスプーフィング有線実証実験の様子。ディスプレイ左図は「Cohac∞ Ten++」を使用した場合の測位結果図。スプーフィング信号の検知・遮断を行い、正しい位置を示す。ディスプレイ右図は、スプーフィング検知・遮断機能の無いGNSS受信機を使用した場合の測位結果図。スプーフィング信号によって、誤った位置を示す。