岩手県と岩泉町、エアロネクスト、NEXT DELIVERY、セイノーホールディングス(以下、セイノーHD)、KDDIスマートドローンは、2024年2月13日、同町において「令和5年度岩手県中山間地域におけるドローンを活用した地域課題解決に係る実証実験」を実施し、報道関係者に公開した。

 同実証実験は、NEXT DELIVERYとKDDIスマートドローンが連携し、セイノーHDとエアロネクストが推進するドローン配送と陸上輸送を融合した新スマート物流SkyHubの社会実装の検討に向けて行われたものとなる。

(左から)KDDIスマートドローン ソリューションビジネス推進2部 部長 森嶋俊弘氏、セイノーHD事業推進部ラストワンマイル推進チーム新スマート物流推進プロジェクト課長 和田悟氏、岩泉町長 中居健一氏、岩手県ふるさと振興部 科学・情報政策室長 藤原由喜江氏、NEXT DELIVERY企画グループ グループ責任者 近藤建斗氏
飛行ルートやドローン運航システムによる遠隔管理画面を説明する様子(岩泉町役場)
配送品を搭載して着陸する物流専用ドローン「AirTruck」(救沢公民館)

 岩泉町は総人口 8,013人(2024年1月末現在)、面積は99.23haと本州一の広さを持ち、狭い山間地に基幹地区(6町村合併前の旧村中心部)と小規模集落が点在している。食料品アクセス困難人口の割合(2015年時点)は県内で唯一 40%を超えており、全国的に見ても非常に高い水準(全国平均24.6%)だ。町の中心部である岩泉地区から主な基幹地区のうち、安家地区までは急勾配が続き車で40分、有芸地区までは狭い道を車で35分かかるなど、買い物等の日常サービスの利用に不便が生じていることが課題となっている。

 ドローンを活用した買い物弱者対策による日常生活の利便性の確保、岩手県産業の生産性向上等さまざまなドローンの活用方法を検討し、持続可能な活力ある地域の実現を目指すことを目的として実証実験を実施した。

実証実験 実施内容

 今回の実証実験では、買い物困難者への対応、物流停滞が懸念されている2024年問題、災害時の孤立問題や物資輸送の課題などの解決を目指し、ドローン配送の社会実装に向けた検証を実施した。

 機体はエアロネクストとACSLが開発した物流専用ドローン「AirTruck」を使用。機体制御には、モバイル通信により機体の遠隔制御・自律飛行が可能な「スマートドローンツールズ」(KDDIスマートドローン)の運航管理システムを活用した。

 2月13日の報道関係者への公開では、1本目は地元の岩泉自動車運輸と荷主の協力のもと、中山間地のラストワンマイルをドローン配送することを想定し、岩泉町役場から猿沢地区まで(片道約9.1km)ドローンにより社内間の書類を約26分で配送した。2本目は買い物の不便を想定し、岩泉町役場小川支所から救沢公民館まで(片道約2.5km)、菓子と飲料を約6分でドローン配送した。

猿沢地区の事業者へのドローン配送で岩泉自動車運輸と連携
ドローン配送された菓子と飲料を受け取った様子