2024年2月8日、薬けんと別府市薬剤師会、大分県などは、2024年1月17日に、ドローンによる調剤薬局間における医薬品配送の実証実験を実施したことを発表した。また併せて、セキュリティ対策を講じるため、特定の⼈のみ解錠可能なスマートキー付き医薬品ボックス(以下、スマートキーボックス)の活用検証も行った。

 調剤薬局への医薬品配送を担う⼈員確保に課題がある別府市薬剤師会をフィールドに、ドローンによる持続可能な医薬品配送モデルを創出することを目的として実施したもの。​災害時も見据え、医薬品配送の選択肢を複数設けておくことで、地域医療サービスの向上とドローンがインフラとして貢献できるスマートシティの第一歩となることを目指す。

 なお同実証は、大分県の「医薬品配送×ドローン物流」地域実装モデル創出事業委託業務に採択されている。

 別府市薬剤師会では、少量のみ必要な医薬品を同薬剤師会が運営する薬局(以下、会営薬局)から加盟調剤薬局へ配送する「小分け事業」を行っている。小分け事業には、午前・午後で加盟調剤薬局からあらかじめ注文のあった医薬品を同薬剤師会が雇用した専用ドライバーが配送する「定期便」と、突発的に注文のあった医薬品をタクシーで配送する「急配タクシー便」(以下、急配便)があり、配送スタッフの人員不足、急配便にはタクシー利用による費用の増大、観光地での渋滞による配送遅延が課題となっている。

現状課題の概要図

実証実験について

実施日時 :2024年1月17日(水)9:30~11:30
搭載物 :外用薬([劇薬]アンテベートローション10g、ゲーベンクリーム50g)、湿温計
実証回数 :2回
飛行レベル :レベル2(目視内における自動飛行)

飛行経路:別府市薬剤師会 会営薬局~河野調剤薬局 鉄輪店(片道1.5km、飛行時間 片道7分)
配送品(アンテベートローション10g、ゲーベンクリーム50g)

【使用機体】

DJI「Matrice 300 RTK」

サイズ(長さ×幅×高さ)810×670×430mm
重量約6.3㎏(バッテリー搭載時)
バッテリーTB60 2個
ペイロード2.7kg
飛行時間55分
最高伝送距離8km(障害物がない場合)

【スマートキーボックス】

 ネオマルスが参画する「おおいたドローンプラットフォーム・クロス」は、国のガイドラインに基づきドローンで医薬品を配送するための専用ボックス「スマートキーボックス」を制作・提供した。医薬品は特定の人に確実に届ける必要があるため、本人確認(受取人の特定)が可能なスマートロックを装着している。インターネットを介することなく、スマホアプリで本人確認を行い、鍵の発行と受け渡し、解錠ができる特徴を持つ。

スマートキーボックス

【各社役割】

代表事業者薬けん事業全体取りまとめ、各社調整
共同事業者別府市薬剤師会フィールド提供、地域住民への説明
大分県市町村、関係機関との調整
SkyLink Japan
WorldLink&Company
ドローン選定
九州電力ドローン提供、ドローン運航
ネオマルススマートキーボックス開発・提供
beads parkドローン操縦士の育成、スクールの開催

【検証内容】
・飛行時時の安全性の確保、別府市の居住地域上の飛行の確認(湯けむり・風・共同温泉露天風呂関係)
・外部者には開封不可能な構造で安心なスマートキーボックスの検証
・医薬品の受け渡し方法の確立
・その他課題の抽出

スマートキーボックスに入れた医薬品をドローンに搭載する様子
別府市薬剤師会上空を飛行するドローン
上空150mを飛行するドローン
プロポの表示画面
着陸するドローン
スマートキーボックスを解除する様子

 1月17日の実証実験公開時には、2往復のフライトでドローンによる医薬品配送を実施。また、医薬品配送用に制作されたスマートキーボックスにより、ドローン飛行に影響のない配送、温湿度などの品質管理や、セキュリティ対策が万全に行えることが検証できた。一方で、ドローンの規制緩和や悪天候時の対応など社会実装までの課題は多いという。別府市薬剤師会はドローン操縦士の育成を行い、継続的かつ安定した医薬品供給体制の構築を目指すとしている。