2024年1月26日、KDDIとKDDIスマートドローンは、5G SA(スタンドアローン)の上空向け商用サービスの提供に向け、ネットワークスライシング(※1)によるドローン専用ネットワークスライスを用いたドローンの飛行実証を実施したことを発表した。

 実証では、ドローンの空撮映像を運航管理システムに伝送し、混雑した通信環境においても安定伝送できることを確認した。商用の5G無線局免許に基づき、5G SAを使用してドローンを飛行させるのは国内初(2024年1月26日時点、KDDI、KDDIスマートドローン調べ)となる。

 両社はドローンにおける点検、巡視、警備など、5G SAネットワークスライシングの活用が期待されるユースケースでの技術検証を進めるとしている。

※1 論理的にネットワークを分割することで、高速・大容量や低遅延など利用者の用途やニーズに合わせたネットワークを提供する技術。

5G SAのネットワークスライシングでの映像伝送
5G SAのネットワークスライシングの活用が期待されるユースケース

 ドローンなど上空でのモバイル通信の利活用が進む中、5Gについても必要な機能を備えることで、簡素化した手続きで上空利用が可能となる法整備が2023年4月に行われた。

 ドローンによる点検や巡視、警備などのユースケースでは、ドローン機体からのテレメトリー通信だけでなく、ドローンで撮影した高品質な映像を安定して伝送することが求められる。今後モバイル通信の需要が拡大すると、ネットワーク混雑時などにおいて映像伝送に十分な帯域を提供できなくなることが想定される。

 4G LTEの通信技術では、5G特有のネットワークスライシング機能を使用したサービス提供が困難であった。同実証ではコア装置や基地局を含め、すべて5Gの技術を利用した5G SAのネットワークスライシングを活用することで、周囲の通信状況に影響されない安定した通信環境で高品質な映像伝送が可能となる。

 両社は5G SAの上空利用に向けた準備を共同で進めており、今回、KDDIは制度整備を踏まえた無線局免許を取得するとともに、5Gの上空利用に必要なネットワーク環境を構築した。

5G SAでは映像が乱れることなく高品質な映像伝送を維持

 実証では、ドローン専用の5G SAのネットワークスライシングを活用することで、地上におけるスマートフォン利用などの通信の混雑した状況下でも、ドローンの空撮映像伝送に必要な通信品質を提供した。

 同一評価条件下で高い負荷をかけ、混雑したネットワーク環境を再現し、KDDIスマートドローンが提供する5G SA対応のスマートドローンと運航管理システムを用いて、ドローンから運航管理システムへ映像伝送を行った。

 4G LTEとドローン専用のネットワークスライスを用いた5G SAとで映像品質を比較した結果、4G LTEでは映像の途切れやブロックノイズの発生が見られた一方で、5G SAでは映像が乱れることなく高品質な映像伝送を維持できることを確認した。

 混雑時でも安定した空撮映像伝送が可能なため、災害発生後の被災現場の状況把握の高度化や、高精細な映像とAIを用いたリアルタイム分析などによる点検、巡視、警備などのドローンソリューションの価値向上に5G SAの技術が寄与することが期待される。

実証時の5G SA対応ドローン
実証時のKDDIスマートドローン運航管理画面
構成イメージ