2024年1月19日、会津若松市上下水道局、東日本電信電話 福島支店(以下、NTT東日本 福島支店)、エヌ・ティ・ティ・インフラネット、アイレック技建、東京久栄は、会津若松市上下水道局が保有する水道施設において、水道インフラ点検の効率化等を目的とした実証実験を実施したことを発表した。

 会津若松市では水道インフラの老朽化と、これに対応する水道技術者の将来的な減少が懸念されている。また、昨今激甚化する災害に対し、水道インフラの維持・強化の必要性が高まっている。こうした状況を踏まえ、NTT東日本グループが通信インフラの維持・管理に使用しているドローンやAI画像診断等のデジタル技術を水道設備点検に活用する、スマートメンテナンスの実現に向けた実証実験を実施した。平時における水道インフラ点検業務の効率化、および災害時の被災調査の高度化に資するDXの有用性・安全性等の効果検証を行った。

実施概要

 2023年11月9日から、会津若松市上下水道局の水道設備である北会津受水塔において、空中ドローンを用いた受水塔外壁部の撮影、水中ドローン・水上スライダー(以下、水域ロボット)を用いた受水塔内部の水槽部の撮影を行い、撮影データのAI画像診断による水道インフラ点検のデジタル化に関する効果検証を行った。

実証実験施設【北会津受水塔】
1990年築造
構造:2槽式プレストレストコンクリート造
容量:628m³
最大直径:約14m
塔の高さ:約30m

各社の役割

NTT東日本 福島支店・ドローンを活用した自社設備アセットのメンテナンスノウハウ提供
・実証実験の全体統制
エヌ・ティ・ティ・インフラネット・受水塔外壁部/受水塔内水槽部の画像診断(AI等による分析)
・画像診断結果(目視・AI分析)のとりまとめ
アイレック技建・画像診断(撮影画像等に基づく分析:受水塔外壁部)
東京久栄・水域ロボット等を用いた受水塔内水槽部の撮影
・画像診断(撮影画像等に基づく分析:受水塔内水槽部)

実証実験の内容

1. 空中ドローンによる受水塔外壁部の撮影と目視による診断
2. 水域ロボットによる受水塔内水槽部の撮影と目視による診断
3. 1、2の撮影データのAIによる画像診断点検と目視による診断、結果比較

空中ドローンを用いた受水塔外壁部の撮影(左)、AIを用いたひび割れ箇所検出例(右)
水上スライダーによる受水塔内水槽部の撮影(左)、水中ドローンによる受水塔内水槽部の撮影(右)

検証結果

空中ドローン・水域ロボットの活用

 空中ドローンの活用により、壁面を目視で点検する場合と比べて稼働削減効果があることを確認した。また、足場を用いた高所作業が不要となることで安全性が向上した。

 水域ロボットを活用すると、水槽内の水抜きをせずに点検できるため、稼働削減効果があることを確認した。脚立等の高所作業が不要となり、安全性が向上した。

 空中ドローン、水域ロボットにより不良箇所の画像確認が可能となり、複数人での同時並行作業等の稼働分散効果を確認した。

画像診断(目視およびAIの比較)

 AI技術を活用することで、コンクリートのひび割れや塗装の剥離・欠損等を一定の精度で検出できた。あわせて、これまでの目視によるコンクリート診断に比べて、劣化箇所の検出に掛かる期間・稼働を削減できることを確認した。

 AIを用いたコンクリートの劣化診断において、受水塔外周および水槽内部の検出精度をさらに高めるには、多数の現地データを収集し、AIに学習させることが必要である。

 今後、精度を向上させるとともに、水道以外の分野における点検業務効率化・災害対策の高度化等のスマートメンテナンス実現にも取り組みを拡大させる方針だ。

報告会の様子(2024年1月17日)