2024年1月9日、リベラウェアは、土木建築事業を展開する東急建設に屋内点検ドローン「IBIS」の点検サービスを導入したことを発表した。ドローンで撮影した映像から3D化を行い、水路内に堆積した汚泥の堆積量などのデータを取得、耐震補強工事の調査で活用できることを確認した。
危険を伴う水路工事での内部調査
今回点検を行うのは、一般家庭の下水と雨水を浄化して川に流す施設。近隣の施設から圧送されてきた汚水を受け入れ、沈殿池で浮遊物を除去し、反応槽で微生物を使って有機物や窒素、リンなどを除去するなど汚水をきれいにして川に流している。
施設の地下にはこうした沈殿池や反応槽が設置されており、これらを結ぶ水路が張り巡らされている。東急建設が工事を請け負っている水路は、幅約3m、高さ約2mの鉄筋コンクリート製のボックスカルバートで、長さは50~60mほど。1984年に運転が始まった同施設では、大きな地震に耐えられるよう東急建設が耐震補強工事に取り組んでいる。
この水路工事では、最初に内部の調査を行う。締め切りによりドライ化した後の既存水路内は、土砂が堆積し有毒ガスの発生や酸欠が懸念される。この汚泥をバキュームで吸いながら長い水路を進むが、硫化水素が発生する可能性や酸素欠乏の恐れがあるなど、人が立ち入る作業環境としては危険を伴う。
また、沈殿している汚泥は、想定では5cm程度のはずが実際には50cm堆積していたことがあったり、汚泥の量や水路内の既存設備の位置といった全体像がつかめないと、作業の計画が立てられないという課題があった。
危険な箇所をIBISで撮影し、汚泥状況を把握
IBISを50mの長さがある水路の中で飛行させて動画を撮影し、その映像から3Dデータを作成することで堆積量を測定できた。また、L字型に曲がっていて汚泥がたまりやすく人の立ち入りが困難な場所など、狭くて危険なエリアでIBISが映像を撮影し、データ化することで水路内の全容をつかむことができた。
同施設の仕事を多く請け負う東急建設は、人の立ち入りが困難な現場においてIBISによる調査は有効であり、似たような設備が多く、耐震補強工事をはじめとした同様の工事はこれからも続くため、IBISが使える現場の広がりが見込めるとしている。
東急建設 東日本土木支店土木部 中林拓真氏のコメント
現在は、硫化水素が充満しているような現場に作業者が進入する場合には、ガスマスクを装備して、硫化水素を測定できる機器を持って入らなければなりません。ドローンは人が入れない有害なガスがあるような場所でも入っていけます。そのためIBISにガス検知機能があると、いわゆる“カナリヤ”のように使うことができ、今回の水路のように長い空間で、IBISが先行して奥の状況を知らせてくれれば、より安全な作業ができます。