2023年12月27日、テラドローンは、2023年7月に子会社化したベルギーの運航管理システムプロバイダーUnifly NV(以下 ユニフライ)が、米国連邦航空局(以下FAA)と、ドローンの運航管理システム(UTM)のためのサイバーセキュリティフレームワークを構築し、それを評価・検証するための実証実験を実施したことを発表した。サイバーセキュリティフレームワークとは、包括的にサイバーセキュリティ態勢を構築するための代表的な枠組みのこと。

 ドローンや空飛ぶクルマの普及には、飛行機に対する管制官や管制塔、管制システムのようなインフラが必要となる。その役割を果たすのがUTMで、ドローンや空飛ぶクルマの動きを管理し、有人機との衝突などの事故を防止し、運航を安全に最適化するための総合的な交通インフラを提供する。

 しかし、UTMはまだ新しいプラットフォームであり、その脆弱性を悪用するサイバー攻撃の標的となる可能性がある。運航に関する安全や利用者のプライバシー、事業の運営などが脅かされる恐れがあり、UTMに対するサイバーセキュリティは重要な課題とされている。これまで、UTMに特化したサイバーセキュリティフレームワークは検討されておらず、どのようなセキュリティ機能を備えるべきかを想定することが困難な状況であった。

 航空輸送の安全・維持確保を管轄するFAAは、アメリカ国内におけるドローン運用のための環境整備も担っている。ユニフライは今回、複数の航空管制サービスプロバイダー(ANSP)へのUTM導入実績などが評価され、助成金を受けることとなった。セキュリティをはじめとする先進技術分野のコンサルティングを手がけるRhea Groupと、ドローン関連技術の試験・検証を行うNUAIR NY Test Siteとのパートナーシップのもと、UTMのためのサイバーセキュリティフレームワークを構築し、具体的なサイバーセキュリティ対策の開発に向けた実証実験を実施した。

プロジェクト概要

 ユニフライは、2022年9月から1年間、FAAの助成金によるプロジェクトとして、UTMに特化したサイバーセキュリティの構築に向けた実証実験を実施した。

 まず、UTMに特化したサイバーセキュリティの必要性に関して、業界に影響力のある以下の関係企業や団体に聞き取り調査を行った。

米連邦航空局 航空交通機関(FAA ATO)
米国空宇宙局(NASA)
米CNA:アメリカ・バージニア州に拠点を置く非営利の調査分析機関
Nav Canada:カナダの航空管制サービス・プロバイダー
DroneUp:アメリカのドローン宅配サービス・プロバイダー
アメリカの空飛ぶクルマ製造企業

 その結果、「UTMに特化したサイバーセキュリティのフレームワークが必要」「UTMのような新しいプラットフォームを導入する際は、サイバーセキュリティの方向性を確立することが不可欠」といった声があり、すべての関係者がUTMに特化した新しいサイバーセキュリティフレームワークが必要だとの認識を示した。

 これもとに、今回のプロジェクトでは下記3つの状況下でUTMを使って計60回以上のドローン飛行を実施し、それぞれの運用環境のもとで実装されたセキュリティ制御を検証した。

1. 攻撃を受けていない理想的な環境
2. サイバー攻撃を受けている環境
3. サイバー攻撃対策を実施した環境

 開発したUTMに特化したサイバーセキュリティを適用することで、サイバー攻撃を受ける件数自体が減少。また、脆弱性の数も減少するなど、UTMを取り巻くサイバーセキュリティの環境改善につながった。UTMに対して高度なサイバーセキュリティ対策を実施することで、ドローンや空飛ぶクルマが利用する空域の安全性を確保することにつながることが分かった。