2023年12月25日、建設技術研究所は、ドローンで運搬できるGPSセンサーと、センサー位置の変位によって土石流の発生を検知するクラウド型システムを開発したことを発表した。

 これまでは二次災害の恐れから、立入規制区域内では作業員によるセンサーの点検や設置ができなかった。同システムにより安全かつ迅速に土石流等の発生を判定できる。

 土石流の検知では、渓流にワイヤーや振動計、監視カメラなどを設置して監視を行っている。しかし土石流等によって計器が破損しても立入規制区域内では点検や交換作業ができず、土石流の発生を迅速に判定できないことが課題となっている。近年のゲリラ豪雨や線状降水帯の多発により、想定していない箇所でも土石流やがけ崩れが発生しており、安全かつ迅速に検知できるシステムが求められていた。

 今回開発した技術は、土石流等の発生が予見される危険箇所にGPSセンサーを設置し、土石流等の発生に伴ってセンサーが流下(変位)することに着目したシステムである。GPSセンサーが移動した距離や方向によって、土石流の規模や到達範囲を推定する。また、GPSセンサーはモジュールとバッテリーをひとつのケースに収容し、ドローンで運搬・設置することができる。

 センサーの位置情報はクラウド上の監視システムに集約され、その位置の変化により土石流の発生を判定する。GPSセンサーが移動した場合は、メールで施設管理者に通報する。

土石流発生検知システムのイメージ

 ドローンを活用することで、土石流等の発生後の立入規制区域内のほか、これまで監視機器がなかった渓流の上流域や火口部周辺にもGPSセンサーを運搬・設置できる。現地での設置工事は不要で、管理者はインターネットが参照できる端末があればシステムを利用可能。バッテリーを充電・交換することでセンサーは再利用できる。

 同社は今後、活用範囲を広げるため、GPSセンサーの稼働時間の延長や通信規格の拡張に取り組むとしている。