2023年10月20日、イームズロボティクスは、経済産業省 中小企業イノベーション創出推進事業「行政ニーズ等に対応したドローンの開発・実証(行政・民間の現場ニーズ/高精度測量・物流(物資輸送)に対応できる高性能ドローンの開発【中型~大型】」において、「行政ニーズに応じた物流支援マルチコプターとVTOL型無人航空機製品化」が採択されたことを発表した。

 同事業は2027年までのフェーズで、事業期間における交付額上限は5カ年で約30億円となる。これにより同社は、第1種型式認証機体による第三者上空を飛行できる物流マルチコプターと、長距離飛行が可能なVTOL機を製品化するとともに、運用コストを大幅に削減できる1対多運航の実現、自律飛行の高度化、遠隔監視の強化に取り組むとしている。

試作機(イメージ図)
試作機(イメージ図)

中小企業イノベーション創出推進事業※1

 SBIR(Small Business Innovation Research)制度において、革新的な研究開発を行うスタートアップ等が社会実装につなげるための大規模技術実証(フェーズ3)を実施し、日本におけるスタートアップ等の有する先端技術の社会実装の促進を図ることを目的とする。
 補助金の対象となる事業は、経済産業省が提示する研究開発課題(以下、テーマ)を解決するために必要な革新的な新技術を有する代表スタートアップ、または当該新技術を有する代表スタートアップの技術を活用したコンソーシアムによる大規模技術実証である。

【公募テーマ】
テーマA:月面ランダーの開発・運用実証
テーマB:衛星リモートセンシングビジネス高度化実証
テーマC:空飛ぶクルマの機体開発及び型式証明取得等に向けた飛行試験等
テーマD:行政ニーズ等に対応したドローンの開発・実証
テーマE:小規模分散型水循環インフラの量産化・社会実装事業
テーマF:プローブカーデータを活用したグローバルでの高精度3次元地図データの更新技術の大規模実証

 技術・研究開発は、2023年度~2027年度までの最大5カ年間を事業実施期間とする。

 イームズロボティクスが採択されたテーマDは、ドローンの性能・機能の向上を加速し、さまざまな分野におけるドローンの利用拡大と、それを通じた社会課題の解決等を加速することを目的としている。

※1 経済産業省 令和4年度第2次補正予算「中小企業イノベーション創出推進事業」の公募より

行政ニーズ等に対応したドローンの開発・実証

 物流業界では、2024年問題によりトラックドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで生じる諸問題などから、配送の効率化が求められている。また、地震・水害等により孤立した地域に救援物資等を早急に運ぶなど、人命救助を行うことが必要となっている。さらに、少子高齢化がすすむ過疎地域においては「買い物難民」への食料品や日用品の配送が増加していくと考えられる。こうした多様なニーズに対応していくには、現在のドローン技術よりさらに高度な物流技術が必要である。

実施内容

 イームズロボティクスは、離陸時重量25kg以上でペイロード10kg程度のマルチコプターの開発(現在型式認証1種取得試作2号機)、垂直離着陸機(VTOL)に自社の制御技術を搭載した飛行距離50km以上の新型機を開発し、ともに安全性の高い型式認証1種の取得を進める。

 また、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」において、1対多運航、リモート技術、AI技術を取り入れ運用コストを大幅に削減できる物流ビジネスモデルを構築し、周辺システム・ソフトウェアを搭載した商品開発を進める。

 同社は、安全性の高い型式認証機体と物流システムを開発することで物流業界のラストワンマイルの効率化、災害時の自治体・消防の物資輸送、流通業界の宅配の拡大や効率化を進め、物流の社会課題の解決を目指すとしている。

コンソーシアム

東レ・カーボンマジック
マルチコプター、VTOLのCFD・風洞試験による空力特性最適化、軽量機体構造の設計・製造。

東京アールアンドデー
バッテリー、ハイブリッド発電システム開発とVTOL機体設計。

東京大学 (予定)
実証実験完了後のAI、リモート安全システム構築に関する支援及び空力によるVTOL設計支援。

共同研究先
AIによる危険感知、リモート制御、多運航での自律衝突回避技術実証。

佐川急便
拠点物流、ラストワンマイルにおける物流業務支援。

パーソルプロセス&テクノロジー
事務局・PMO。