新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」での成果をもとに、SUBARU、日本無線、ACSLが2021年から進めてきた、無人航空機の衝突回避に関する運航手順を含めた国際規格の改定版が、2023年10月2日に、国際標準化機構(ISO)より「ISO21384-3 Unmanned aircraft systems―Part3: Operational procedures」(無人航空機システム―第3部 運航手順)として正式に採択・発行された。
今回の規格改定は、日本発の提案として取り組んできたもので、国際調整などを経て、国際規格に盛り込まれ発行に至った。
今後ドローンに関わるステークホルダーが、個別に進めてきた無人航空機の衝突回避技術の開発や運用実証、事業化検討などを同規格に基づいて行うことで、グローバルでの情報共有や技術開発、社会実装の加速が期待される。
国際的統一がなされていなかった衝突回避の手順や手段
ドローンと呼ばれる小型・中型の無人航空機は、すでに農業分野などで利用が広がっており、災害時の物資運搬や遭難者捜索、物流インフラなどの用途でも大いに期待されている。
一方、無人航空機とドクターヘリなど有人航空機とのニアミス実例が国内で報告されるなど、他の航空機との衝突をどのように回避するかが無人航空機の安全利用における喫緊の課題である。また、無人航空機の社会実装に向けて「目視外飛行」および「第三者上空飛行」を実現する上でも、衝突回避は欠かせない技術だ。
無人航空機の衝突回避に関する技術開発は、これまでも各国で行われてきたが、衝突回避の手順や手段は国際的に統一されていないため、特定のメーカーの機体同士や限定されたサービスの中だけでしか回避できず、空の安全が十分に確保できない可能性があった。
無人航空機と他の航空機、あるいは無人航空機同士の衝突回避手順を国際規格化することで、技術開発の方向性を統一することが可能になるとともに、社会実装に向けた各国の取り組みが加速し、幅広いサービスの実現につながることが期待される。
規格改定の内容
2019年11月に初版が発行された「ISO21384-3」は、無人航空機の運航手順を規格化したものであったが、初版では他の航空機や無人航空機同士の衝突回避手順は規定されていなかった。
今回の改定で、衝突回避のCONOPS(Concept of Operations:運用構想)を新たな章として追加し「対象物の探知」「ターゲットの認識」「回避機動」「回避結果の確認」「元ルートへの復帰」「元ルートでの飛行」の6ステップからなる基本的な手順を規定した。今後、無人航空機は、この6ステップに従い統一された回避行動をとることが国際規格となる。
▼ ISO21384-3 Unmanned aircraft systems―Part3: Operational procedures
https://www.iso.org/standard/80124.html
各社の役割 | |
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SUBARU | 衝突回避システムの飛行実証およびCONOPS(運用構想)に関する規格案作成 |
日本無線 | 衝突回避システムの評価試験と飛行実証 |
ACSL | 衝突回避システムの機体実装と飛行実証 |
グローバルな情報共有や技術開発、社会実装に向けた取り組みを加速
世界各国のドローンに関わるステークホルダーが、個別に進めてきた無人航空機の衝突回避技術の開発や運用実証、事業化検討などを同規格に基づいて行うことで、グローバルな情報共有や技術開発、社会実装に向けた取り組みの加速が期待される。さらに、衝突回避手順の技術運用の標準化を受け、回避に必要な手段として、他の航空機を探知し回避するシステムや試験方法の標準化が進められ、さらなる空の安全確保が見込まれる。