2023年7月27日、竹中工務店は、米国のBoston Dynamics社製四足歩行ロボット「Spot」が、建設現場内を巡回して撮影した映像を実測図(※1)の作成用データとして用いる実証実験により、業務を効率化できることを確認したと発表した。

 Spotはこれまで、建設現場巡回、施工状況の遠隔確認と記録、軽量資材の運搬への活用の効果が実証実験で確認されている。今回新たに、鉄建建設とともにJR新小岩駅南口駅ビルの新築工事で実施した実証実験により、Spotの活用シーンを建設現場における実測図作成の補助業務に拡大できることが分かった。

※1 実測図:CalTaのデジタルツインアプリケーション「TRANCITY」を利用して点群データを作成。

カメラ搭載Spotによる映像撮影
Spot撮影映像を基に作成した実測図(点群データ)

 建設業では、働き方改革や労働人口減少対策として、労働時間の削減と生産性の向上が喫緊の課題となっている。同社はこれまで、施工管理業務の省力化を目的として、Spotの建設現場への導入に取り組んできた。

 実証実験を実施したJR新小岩駅南口駅ビルの新築工事のような鉄道関連施設をはじめ、新築工事完了後も繰り返し改修・改築が行われてきた施設では、新たな工事に着手するに当たり、過去の改修・改築工事を全て反映した現況の実測図を作成する必要がある。これまで、実測図作成に必要な映像撮影においては、足元が不安定なため映像がブレる、撮影漏れが生じるなどの理由から撮り直すこともあり、作成作業が大きな負担となっていた。

 今回、階段や不整地においても障害物を回避しながら事前に指示されたルートを自律巡回できるSpotの機能を生かし、頭部に市販のカメラを搭載することにより、ブレや漏れのない映像撮影を行った。これにより、映像撮影に要する時間を最大30%程度削減した。

 さらに、作成した実測図(点群データ)と、設計図(BIM(※2)データ)との重ね合わせを行い、新たに建設する施設や設置する設備配管等と、既存構造体等との干渉を事前にチェックし、不具合が生じないことを確認する作業に活用し、施工管理においても業務を効率化している。

 今回の成果により、Spotの活用シーンはこれまでの建設現場巡回、施工状況の遠隔確認と記録、軽量資材の運搬に加え、実測図の作成補助に拡大した。

※2 BIM:Building Information Modelingの略称。PC上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などのデータを追加したもの。

実測図(点群データ)と設計図(BIMデータ)の照合